■エルゴプラクシー23代理人/deus ex machina_s佐藤大c&d村瀬修功d補佐山本沙代恒松圭g恩田尚之山田正樹村瀬修功g補佐寺田嘉一郎小森秀人坂本千代子小田剛生

最終回。シナリオのバランスは置いておいて、やっぱり非常に見応えあった。面白かった。
◆結局、メタ物語(物語についての物語)的な終着点ではありませんでした。ワタシの予想ははずれてしまった。
しかし、(こういう表現が正しいかどうか自信がないがない、というか完全に言葉の誤用だとおもうのですが、あえて書くと)、メタ人間(「再生された人間」の上にたち、人間を創造し、人間について語る存在)である「神様(プラクシー)」と、メタ神様(神様(プラクシー)の上にたち、神様を創造し、神様について語る存在)である「プラクシー計画の立案者」との葛藤が物語のモチーフであったことがわかったので、「物語についての物語」ではないけれども、「世界について上位から語る」視点、そして「「世界を語っている存在」について更に上位から語る」視点があるとゆー意味では、メタ的構造だといってみたりするけど、ダメでしょうか。だめですね。


しかし、なんとゆー、複雑にして奇怪な物語だろう。おそらく、神話の神様同士の闘争などに代表される得体の知れない象徴性をねらったようにもおもうんだけど。
①「プラクシー計画の立案者」⇔②「神様(プラクシー)」(複数で関係不明のまま闘争)⇔③「再生された人間」


この構図をはじめ、思い返してみると一見冗談で固めたかのような、第15話「悪夢のクイズSHOW」で実はすべてが語られていた。
だけど、実際の物語内では、①のレベルが完全に隠され、②の神様同士の関係性も曖昧に隠蔽され(エルゴとモナド、プラクシーワン。そして、その他のプラクシーたち)、②と③の関係だけは、明示されていたものの、「神様」格として重厚に描かれるどころか、野獣のような非理性的な存在として描かれていたこともあり、ホントにそうなの?というすっきりしなさは、最後までのこりました。


これらの重要な関係性が分からないまま、最終話にもつれ込んだので、物語の本線を追う上では、すごいフラストレーションがたまりましたよ。


普通こういう重層構造だと、語っている世界のレベルが上がるに連れて、世界の実相が明らかになっていくという明快な作劇にしたい気が(少なくともワタシは)するとおもうのだけど、そうはせず、最後まで曖昧なまま我々の目の前に世界の断片を提示してみせるというのが、今回の作品のチャレンジであり、あるいは、村瀬監督、佐藤大さんの作家性なのでしょうか。


しかし、この手つきだと、全てのピースが一つに像を結び、明らかになる驚愕の実相・・・・・・というカタルシスを求めてしまうのですが、うーん、そういった意味では、少し力不足な最終回でした。


◆さて、映画版しか知らないヒトには、意外なタイトルをもちだすなーと思われると思いますが、物語の展開的には、漫画版「風の谷のナウシカ」の終盤の展開を連想してしまった。
最終的に明らかになるナウシカ世界のSF的成り立ちと構造、及び、「真の世界への可能性」を徹底的に破壊し虐殺するナウシカの世界認識と行動に極めて似た物語の終着点だと思った。


いま漫画版ナウシカを引っ張り出してきたのですが、人類再生計画を語るシュワの墓所の主(人類に作られた計画執行の代理人。だけどナウシカでは、創造主そのものとして描かれます。「プラクシー計画の立案者」相当ですかね。)に、被創造種であるナウシカ(異論はあると思うが、被創造種の世界を愛し、その世界を選択したという意味で、ビンセント相当かな。)が、反論するスクリプトから抜粋。
「私たちの身体が人工で作り変えられていても、私達の生命は、私達のものだ。生命は生命の力で生きている」
「私達は、血を吐きつつ繰り返し繰り返しその朝をこえてとぶ鳥だ!」
「いのちは、闇の中のまたたく光だ!」


被創造者の感情を切り捨てる、「神の視点で正しい」計画よりも、被創造者のひとりひとりの喜怒哀楽と日常の生活に寄り添ってこそ、「現実」がある。
ビンセント、つまりエルゴプラクシーが最終的に選び取った世界認識は、そういう認識だとおもったのだけどどうでしょう。


ただし、同じモチーフを扱っていながら、「亡びは、私達のくらしの、すでに一部になっている」様を徹底的に描写し、過剰な殺戮と、積み重なる死の果てに、「それでもなお」、その「苦しみや悲劇やおろかさ」にまみれた日常こそを尊重すべきだというナウシカの選択の重さに比べて、本作のビンセントの選択が軽く見えてしまうのは、(ワタシが)比べる対象を間違えたゆえでしょう。
(だって、テーマがちがうもの。ナウシカは「滅びゆく世界で生きていく」そのものがテーマだけど、エルゴは、ビンセントという男の「アイデンティティの混乱」がテーマかな。じゃあ、くらべるなって?まあ、そうだけど。なんとなく。)



◇ところで、ワタシが盛んに反応していたメタ物語的演出は、本線の物語のSF的着地点を見ると、演出的「ケレン」だったってことですね。
なにせ、神様の物語なんだから、どんな不思議な現象が起きてもおかしくない。奇跡すら起こせる。



◇最後に、この分かり難い物語の、ワタシ的に腑に落ちた解釈を書いてみます。
最終回のプラクシーワンとエルゴの対話で、やっとすっきりしてきた。この回で、(ワタシが)理解したこの物語の実相は↓こんなカンジだけど、どうでしょうか。

  • 「プラクシー」は、人類再生の為の計画を作った「創造主」の、文字通り代理人。「創造主」の代理として、地球上の各地で人類再生の試みを、おのおのの発想と手段で実施した。
  • 真の創造主の代理人ではあるが、物語では、プラクシーは、「神」として描かれる。(22話のドノブがエルゴを想起する場面とかが代表的)。自らが創造した者達への失意と、愛情の葛藤。いわば、神の苦悩がひとつのモチーフ。
  • また、一方で、特に、プラクシーワンは、彼等にとって神のポジションにいる「「プラクシープロジェクト」の立案者」、「真の創造者」への愛情と憎悪に引き裂かれるのでした。
  • さて、全世界に放たれたプラクシー達のなかで、唯一、プラクシーワンは、人類再生を成し遂げた。
  • しかし、「人類再生計画」にあらかじめ組み込まれた生理的な仕組みによって、プラクシーワンは不要なものとして排除されようとした。
  • 「こころ」ある存在として、プラクシーワンは、創造主への反逆を決意する。
  • ラクシーワンは、真の創造主への反逆の舞台として、エルゴプラクシーの創造したロムドを選んだ。
  • ロムドを創造した神としての失意により、自らの創造した世界から逃げ出し、記憶を消して彷徨うという利用しやすい状況にいたからだ。
  • そして、エルゴプラクシーが逃げ出すために作った第二の人格ビンセントの意識と記憶に介入した。
  • 人格に介入し、その行動を操ったが故に、象徴的な意味で、エルゴプラクシーは、プラクシーワンであり、プラクシーワンはエルゴプラクシーとして、混乱した状況で表現された。そして、最後には、何よりも二人の認識が一致したという意味でもプラクシーワンはエルゴであったと述べている。「勝手に滅んだ連中が託した伝言など、破り捨てて逃げてしまう」
  • ラクシーワンは、ラウルの感情を爆発させ、ロムドから破壊兵器である、「ラプチャー」を発射させた。ラウルが度々みた、不敵に笑うビンセントの幻覚は、きっとプラクシーワンが見せていたんでしょう。
  • ラプチャーは、プラクシーワンが創造した世界、ロムドで創造された「出来損ない」ではない、完璧な人類が住む世界を破壊した。地球上から、人類は再び亡びた。(うわー、やっとラプチャーの行方が分かって、すっきりしたよ。)
  • ラクシーワンは、創造主への復讐のシナリオとして、自らの破壊も折り込んだ。そのために、わざとエルゴ=ビンセントを挑発し、お前は影でしかないニセモノだ、などと侮蔑の言葉を投げた。
  • 実体は、ロムドの創造主として、エルゴは、プラクシーワンと独立して存在していた。
  • ラクシーワンの復讐のシナリオには、エルゴによる地上に降りてきた創造主への「死の代理人」としての抵抗活動も折り込まれていた。
  • デダルスは、死んだモナドを細胞から再生させた。それが、新リル「リアル」。リアルとリルの間の、生物的関係性は不明。
  • そもそも、リルがプラクシーと関係する、何か特別な存在だったのかというと、どうもそうではないような気がする。ビンセントを地上の現実につなぎ止める為の役回りがきっと重要。
  • モナドは、有無を言わせず、エルゴを愛しているので、そういう風に振る舞う。また、ふたりは「神様の世界認識レベルで愛した人」と「日常の人間の世界で愛した人」という対置という意味もあるのでしょう。ビンセントが選んだリアルは、「日常の人間の世界」のリアルだった。
  • 人類再生計画の一環として、計画をなしとげた暁に、不要になった「出来損ない」を始末するために、ドーム市にはあらかじめ崩壊機構が組み込まれていた。
  • ラクシーワンは、デダルスに囁き、デダルスは、絶望ゆえの破壊衝動に突き動かされてロムドを崩壊させた。
  • ラクシーワンによる地球上での人類再生の成功を受けて、宇宙で細々と種をつないできた人類=創造主は、数千年ぶりに地球へ降下することを決意。
  • 「プラクシー計画」のプログラムには、地球を曇天で覆うという要素があった。地球降下を計画した軌道上の人類は、気象変動を起こし、雲間から太陽が差し込んだ。
  • 再生した人類の全滅により、降下する人類は、その原因となったラプチャー発射地点を目指した。
  • ビンセントとの邂逅は、決して友好的でないコンタクトになることが想定される。
  • だから、ビンセントは決意する。「再生の時を迎えつつある大地へと、数千年ぶりに人類が戻った今、本当の闘いが始まる。」「我は、エルゴプラクシー・・・・死の代理人である。」

◇さらに蛇足で恐縮ですが、個人的には、このシリーズの真価は、本筋の物語ではなく、一話完結に近い作りで作られた、世界の多様性を示す脇筋の物語にこそあるんじゃないかなって思った。
以下、個人的ベストエピソード。

  • 第3話 無への跳躍〜追いつめられた冴えない男ビンセントが見せた本性は・・・(★BEST5★)
  • 第5話 召喚〜知恵おくれティモシーの無垢の悲劇に泣く。フーディー爺さんの俗物の皮膜の危うさ。
  • 第6話 帰還〜フーディ爺さんの、自分を捨てた故郷への悲しい愛着。おもちゃの兵隊の象徴。
  • 第11話 白い闇の中〜演劇的なケレンありまくりの、メタ物語的な認識についての物語。一番好き。(★BEST1★)
  • 第15話 生 悪夢のクイズSHOW〜徹底的に日本のクイズ番組を模倣しつつ、プラクシー世界の設定を語るという超変則回。それでいて、キチンとプラクシー世界に組み込む仕組みを考えていて素晴らしかった。2番目に好き。(★BEST2★)
  • 第16話 デッドカーム〜リルの人間としてのリアルな肉体的実体感をヤラシクなく演出していて、非常に可愛らしい一編。(★BEST3★)
  • 第17話 終わらない闘い〜ラウルの絶望と破壊衝動。人間ラウルを突き動かしたのは家族の喪失だった・・・・
  • 第19話 少女スマイルアメリカンなカトゥーンの世界を、メタ物語的なケレンで描いた一編。(★BEST4★)
  • 第20話 虚空の聖眼〜ビンセントに懸想するプラクシーによる、やはりメタ物語的構造を持つ、もう一つの世界の物語。


◆◆以下メモ◆◆
====================================
・前回からのひき。玉座にすわるプラクシーワンの前に立ちつくすリルとビンセント。ビンセントは恐慌を来たし、リルがプラクシーワンと対話する。
「待ちくたびれたよ。このとき、この場所をね。」
「お前は・・・」
「いったろ。・・・お前はオレだ。オレはお前だ・・・とね。」


「歓迎しよう。愛するものの慈悲にすがり、記憶を消し、逃げだしたモノのご帰還だ。」
「どういう意味だ?」
「リル・メイヤー。お前の役割はここまでだ。あとは・・・ワタシとカレの時間だ。」


====================================
・デダルスは、ドームを崩壊させようとしている様子。
「来るべき時の為に用意されたドーム崩壊のシナリオを囁いてやったのさ。彼もまた、破壊の衝動に目覚めたようだ。・・・我らのように。」


・リルは、デダルスを止めようとして走り出したのかな。
「無駄なことはやめておけーっ。運命に従え。生き残っても、君たちは勝者になれはしない。」
「それでも私は、今起こっている事実から逃げ出したりしない。・・・たとえ、その先にもっとツライ現実が待っていたとしても。・・・私は私のすべき事をする。必ず戻る。約束だ。ビンセント」


====================================

「さあ、よく見てみろ。・・それがお前の姿だ。・・その仮面こそ、運命から逃れたものの心の形。いまいちど確認しておこう。本当に記憶を消したのか?最初からそんな記憶・・・なかったんじゃないのか?・・・ただ、記憶を消されたという暗示に囚われた道化かもしれない。・・・結局何も分からないまま。・・・そうだろう?」
「ちがう。旅・・・それこそが必要なことだった。滅びの世界から再生しつつかる自然の大地の有様をこの目で、耳で、脚で、手で、舌でふれ、心で感じた。・・・でなければ、再びこの地へ戻ろうとは思わなかった。」


「確かに、方舟もゆりかごも、はぐくむが教育はしないものな。・・そして、たった一人で世界に向かい合った経験は、そのものの視界を大きくかえるだろう。・・・・どうやら、確かに私からの伝言は受け取ってくれたようだ。」


「こたえろ。俺たちは、プラクシーとは何だ?
「プラクシー・・・その名の通り理解すればいい。われわれは、創造主の代理人ってことさ。」


====================================
・崩壊しつつあるロムドの広場にころがる、ピノの鍵盤ハーモニカ。「Dear Daddy、If You read this・・・」


====================================
・物語のネタ割りの、プラクシーワンとエルゴの対話。見応え有りすぎ。この複雑な物語背景を一話で語り尽くすには、説明セリフで埋めるしかなかったんだろうな。そういう意味では成否の判断が分かれるところ。でも、個人的には、非常に面白かった。


「その時全てを理解した。・・創造主が仕組んだ、悪意の全てを。・・長き苦悩の末、漸く果たした代理人の使命・・人類再生を成し遂げた瞬間に始まった・・・身体の変調。・・・それが始まりの鼓動。・・プラクシー抹殺プログラムの開始。」
「では、お前は人類を・・・・」
・「その時全てを理解した。・・・」のくだりのセリフは、第1話冒頭のセリフと絡みます。


「しかし、・・・我々はそれにあらがう事は出来ない。極めて合理的なシステム・・・皮肉なことだ。プラクシーは神の使いでありながら、使命を終えれば、約束の地に導いた後に残った不必要な因子。それどころか、怪物であり、悪魔にすぎない。」
「・・・だが、その合理的な計画によって乗り捨てられた方舟にも、こころが芽生えていたとしたら。・・なぜ、創造主は我々に心などもたせた。心など無ければ、苦悩など。


「わかっているはずだ・・・」
「ああ、答えなど必要ない。」
「なぜなら、我々自身、その手で行った試みで理解した。自らの手で作り出した出来損ないどもから崇められ、裏切られ、絶望に突き落とされ・・・・」
「それでも・・・愛している」


「創造主も愛されたかったのだ。・・・我々が孤独の中でそれを味わったように。だからこそ・・・彼等には罰を与えなければならない。」
「今更何が出来る。彼等が望んだ計画通り、お前が人類を再生したなら。・・・あ」
「気付いたか、全てを忘れたビンセント・ロー・・・それこそが、あらかじめ囚われた影なる存在である証拠。・・・そんなお前を操り、失敗作どもの感情を発芽させ、再生した人類を再び抹殺した・・・」
「・・・では、人類は・・・・」


「影は知る。神無き世界で、神を望んだ報いを受けた者達の運命を。・・・人類は滅ぶべきだったのだ。あの世界を崩壊に導き、逃げ出したのだから。・・・ちょうどお前が、このロムドという、自ら生み出した世界から逃げ出したように。・・・ビンセント・ローとは、かっての絶望したプラクシーワンの残像。・・・いや、エルゴプラクシーがこの地に残した影武者・・・ニセモノに過ぎない。」


「・・ニセモノ」
「ただし、良くできたニセモノだがな。・・・考えてみろ。お前もまた絶望し、この地を去った。何もかもから・・逃げ出した。変わらないのさ。・・・お前と、オレと。」
「だまれ。」
「ならば、抗え。」


====================================
・引き続き、プラクシーワンとエルゴ。
「そうだ、本能にしたがえ!己を解き放て!」
「わかるぞぉ。ちっぽけな存在を否定された悲しみ!」


「オレになる前のオレが何者でも構わない。・・・ただ、オレはオレでしかない。・・それが、唯一の真実だ。」
「ふふ・・・確かに真実は一つだ。勝手に滅んだ連中が託した伝言など、破り捨てて逃げてしまう。・・それが俺たちじゃないのか。」
「・・その通りだ。・・確かにエルゴプラクシーはお前であり、オレだ。」


====================================
・引き続き、エルゴとプラクシーワン
「だが、ビンセント・ローはお前ではない。」
「出来損ないがこしらえられた、モドキに何を迷う。」


「お前に何がわかる。」
「・・わかるさ。言っただろ。オレは・・」
「・・お前だろう。だから、戻った。オレを殺す為に。」
「救うべきものは世界ではない。」
「だが、それで何が変わる?これ以上の殺戮など。」


====================================
・デダルスが再生したリル、すなわちモナドがエルゴを止めに来る。エルゴとプラクシーワンは相打ち、プラクシーワンは深手を負っている。


「やめて。・・・もうプラクシーの役割は終わったのよ。」
「また、おまえか・・・モナド。・・・」


・プラクシーワンは、エルゴを焚きつけ、自分と戦わせた。自分が負けることすら、プラクシーワンの創造主への復讐のシナリオだった。そして、彼は、復讐をビンセントへ託そうとする・・・しかし、それを妨げ、神としての役割を放棄させようとするモナド


モナド「ずっと探していたの。あなたのこと。」
ワン「邪魔をするな。モナド・・・・たしかに、代理人の役目は終わった。・・・そして、私が再生した人類も絶滅し、不死身の勝者も亡びる・・・」


エルゴ「う・・・これも筋書き」
ワン「これがオレの復讐だ。・・・後はお前次第だ。それが、お前の世界と・・・なる・・・」
エルゴ「お前は・・・お前はまた、オレに全てを背負わせるのか。」
モナド「こんな世界救わなくてもいい。・・・分かっているの。あなたにそんなこと出来ない。・・・だからもうイイの。」


ワン「やめろ・・・モナド。」
モナド「みんな終わったの。だから、誰の悲しみも見たくない。」


ワン「また逃げるのか」
モナド「もう誰の言葉も聞かないで。聖なる瞳を閉じるのよ。


ワン「やめてくれ・・・モナド。」


・・・・舞台から消える二人。


====================================
・なんとかロムドの崩壊を食い止める手段はないものかとモニターに向き合うリルの前に現れたデダルス。
「見捨てられたのに・・・無意味なことだ。相変わらずだね・・・吐き気がするよ。・・分からない?この舞台も僕等の出番もおわったのさ。・・もうロムドは終わりだ。・・そして出来損ないの市民達はただ去るのみ。」
「そんなことはない。未だ何かできることはあるはずだ。」


「いや・・・これが結末。大体、神々の闘いに、僕たち人間モドキが何が出来る。・・僕たち歯車にできることは口をつぐむこと。そう・・・・ドノブのように。」


「おじいさまが望んだ創造主との邂逅。それがワタシを生み出した理由だとしても、ワタシは、構わなかった。いままで・・・ずっとおじいさまを心の底から愛したかった。愛されていると感じたかった。ただ・・・愛されていると。」
「でも代表はそれすら拒んだ・・・・・同じさ。あの人は、ビンセント・ロー、いやエルゴプラクシーにしか心を開かなかった。・・・・君も同じさ。」


「ふふふ、残念だな。プラクシーは、青空の下で生きることは出来ない。アムリタがそれを許さない。
「どういうことだ。」
「かれらもまた。この世界から排除されるべき存在・・・・」


・デダルスは、上空を羽をはやして舞う、新リルを見つける。
「そんなところにいたのか、僕の愛しいヒト。リル・ツー・リアル。・・・・・素晴らしい、完成した。僕は神を作り上げた。さあリル。・・迎えておくれ・・・そっちじゃない・・・いくな・・・・どうしてリルはいつも・・・・・・僕を置いていってしまうんだ。・・・・・いかないで」
・・・・崩壊した建造物の下敷きに。やっぱり・・・・


====================================
モナドに導かれ、ロムド上空の滞空する、モナドとエルゴ。エルゴはリルの事を考えている。
「・・待ってくれ。」
「どうしたの。なぜそんな悲しい顔をするの。・・・なにもかも、みんな忘れて・・・」
「・・済まない。」


「どうして?」
「・・・もう、なにも忘れてはいけないんだ。・・・使命とか運命とか、そういうことじゃない。向かい合って、ぶつかりあって、支え合って、抱き合って・・・生きていく。」


「あんな現実なんかのどこがいいの?あんなに、暗くて、冷たくて、先の見えない・・・あんなところ。」
「だが、それが・・・俺たちの現実だ。・・・・そんな世界でも待っている人がいる。」
エルゴの仮面を自分の手で脱ぎ、ビンセントの顔に戻る。ビンセントの人格の現実、感情を選び取ったということでしょう。


「あの人ね。」
「・・・うん・・・・君に返すよ。モナド
ペンダントをモナドに返す。


「・・・ビンセント」
「さようなら、リアル・・・・」
雲上からゆっくりと雲の下に消えてゆくビンセント。モナドは、神としてエルゴと同じ世界認識を共有する、エルゴにとっての「リアル」だった。
しかし、エルゴは、下位世界の、日常の葛藤と触れあいに、自分の居場所を見つけ出す。戻るべき処。
「神」が人間になるってことですかね。


「さようなら。愛しいヒト・・・」


====================================
・ビンセントとわかれたモナドの独白
「ああ、世界はこんなにも美しい。・・・なのに。どの空を探したらいいの・・・・?」
「あ・・・聞こえる・・・「・・計画・・」・・「・・受け皿と・・」・・呼んでいたのはあなた達だったのね。ビンセント・・・あなたの選んだ未来は、やはり。」
上空高くに光輝く船団を見つけるモナド
創造主に反逆するという未来を選んだビンセントの未来は、やはり、「暗くて、冷たくて、先の見えない」と思ったのでしょうか。


「迎えましょう・・・創造主・・・」
創造主に近づこうとして、太陽の光を浴びて、静かに焼き尽くされて消えてゆくモナド・・・・・創造主へ近づくってことは、イカロスの如き不遜な挑戦ってことなのかな。


====================================
・プラクシワンの玉座へ戻るビンセント。
「戻ったか。・・・ビンセント・ロー・・・・・・お前は、まさに影。・・・影は不死身の我を倒し、鼓動の呪縛を解き放った。」
「・・・それは、お前を苦しめ、そして愛した、不完全なる者達からの解放でもあった。」


「そのとおりだ。・・・・未来を見通す女か・・・確かに彼女が、おまえ・・・ビンセント・ローの現実だ。・・・・・・太陽が戻る。俺たちの世界は終わる。・・・だが・・・・・・・生きろ・・ビンセント。お前が生きることが、創造主への罰となる・・・。」
太陽の光に焼かれて消えていく、プラクシーワン。


====================================
・ロムドドームの完全な崩壊のシークエンス。階段が落ち、手すりにかろうじてぶら下がるという危機に瀕したリルを助けたのは、ピノと、ラウルのアントラージュが操船するセンツォン号だった。
「・・・信じる」
このあたりの展開、ストイックで鬱屈し、張りつめた内省の物語に光がさしたようなカンジで、非常にほっとした。非常に正しいクライマックス。


ピノを守ること、それが彼から与えられたアントラージュとしての最後の役目でした。」
「これも見つけてくれたんだ・・・」
鍵盤ハーモニカにほおずりするピノ


「聞こえるよ、ビンスの声。・・えへへへ、見えるよビンス。距離1107単位。」
「手のかかる奴だ。・・・仕方ない。迎えに行ってやるか。」
「うんっ」


====================================
・高いアンテナのような処から、上空を見上げるビンセント。
上空から降下してくる創造主の宇宙船。
再生した人類こそプラクシーワンに抹殺されたけども、人類は宇宙に逃れて種を重ねていて、人類再生計画の成功で、地球環境の回復を把握し、地球降下を決行しているとゆーふーに思ったんだけど、どうでしょうか。気象までコントロールしている。


「・・・これが俺たちの向かい合う・・現実と言う名の世界。・・・だが、オレは、リルや生き残ったものたちと共に、世界と向き合う。」
「再生の時を迎えつつある大地へと、数千年ぶりに人類が戻った今、本当の闘いが始まる。」
「我は、エルゴプラクシー・・・・死の代理人である。」


思わず、ターンエーガンダムの地球降下作戦を思い出してしまいました。そっか、あっちも死に瀕した地球をリセットし、その間、地球で生き抜いた人類の上に、地球再生の計画者たちが降りてくるってゆー話だったか。