■エルゴプラクシー補遺06〜□■エルゴプラクシー22桎梏/bilbul_

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◇<エルゴプラクシー補遺>の趣旨は、こちら(要約:自分のながーいコメントレスを整理しておきたくなりましたとさ。)
◇コメント頂いた方、勝手に再利用して申し訳ありません。ご寛容をお願いします。
※なお、再録中の記述者<miyama_aruki>は、私です。


◇この回は、1人の方にコメント頂きました。コメントの並びは読みやすい様に編集しました。(文章には一切手を入れていません。)
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◇以下の再録のやりとりは、つい最近、昨年の12月から1月にかけてやりとりさせて頂いたものです。
◇ワタシはすっかり、内容を忘れかけていたのですが、yumiさんのおかげで、再度エルゴをいろいろ思い返せて楽しかったです。
◇思えば、エルゴの感想を書くのは、昨年いろいろ(ワタシが)駄文書き散らしていた中でも、最も書いていて楽しかった。あれこれ考えるのが楽しいし、しかも、カナリの程度で、それに応えてくれる作品だったんですよね。最近は、この充実感を味わえる、緻密で重厚で謎に満ちた作品がなくて、寂しいです・・・・


◇ところで、yumiさんも、ワタシ同様、長文体質らしく、以下の再録、長文の応酬でものすごい事になっています。その分、ラウルへの愛が伝わってきて、圧倒されて、ワタシも思わず、文章が長く・・・・
(ご注意:視聴から時間がたっているので、ワタシの感想については、カナリあやしいかもです。)

エルゴプラクシー22桎梏/bilbul_s川邊優子cdg寺田嘉一郎久留米健吾小田剛生g補佐小森秀人


★私の感想本文はこちら(2006年8月5日記述)


■■■■yumi さんとのやりとり

■yumi さんのコメント<その1>

『はじめまして。今更ながら、ですがそちらの知的な解釈の提示に感謝している者です。
この回、私も泣きました。生まれて初めて思い出し泣きも経験してしまいました。
ラウル局長はそちらの仰るとおり、まっとうな人間でしたね。彼はきっと、ロムドを愛していたのではないかと思うのです。それが管理社会の刷り込みだったにしても、あの合理性を彼は愛していたんじゃないかと。
しかし、失われた家族の存在は、そのまま世界の裏切りへと直結した。喪失の最大の原因であるプラクシーこそが、彼が信じ、成り上がってきた世界の神だった。可哀相ですね。
そして、彼自身、自分が妻や子供に抱いていたものについてギリギリまで自覚していなかったんじゃないかと思います。そちらの言葉で言えば、『理性と合理の中に埋もれさせていた』んでしょう。
彼は生来、野心家でプライドの高い男ですし、私個人の解釈では、『成り上がり者』ですから。それに加えて、絵描きが絵画を愛でる様に、ロムド市民として合理性を愛していた。
そして、その中で嬉しいだとか悲しいだとか、そういうクリアーで原始的な感情の全てを麻痺させていったんでしょう。それどころか、それらを通り越して怨念に行き着いてしまった。
それでも最終的に彼が手に入れたのは、子供じみた喜びと悲しみだったと思います。ピノ・・・絵を描いてくれてありがとう(笑)
本当は割と弱い男だったと思います。にも拘らず、孤独に抗い続けてきた。どうにかなりそうな己に戸惑いつつも、不毛で愚かしい生き様だと知ってはいても、貫き続けた。彼の性質自体、真面目で意志が強かったんだとは思いますが。
ゆるゆると絶望と喪失に切り刻まれ、色々と思い知った末に、もう美しくなんかなくていい、とあがきにあがいたあの惨めながらも尊い気さえさせる人間らしさ、最高でした。
随分と青臭い事書いてしまいました(苦笑)
そういえば、21話でクリード家で鳴っていた音楽は、球形のミュージックプレイヤーが犯人ですよ。よく見ると分かります。
あと、ピノって、ピアノから取った名前でしょうかね?
そして、局長は本当はロムドを壊したかったのか甦らせたかったのか・・・。桎梏やユメノ君には本心をどこまでさらけだしてたのかどうか・・・。もしかすると、プラクシーが創ったものから逸脱する、という意味でどちらでもよかったのか・・・?
そこら辺、意見お聞かせ願えると助かります。』(2006/12/26 20:09)


■ miyama_aruki のレスポンス<その1>

『こんにちは。
ああっ、もう、過分なお言葉ありがとうございます。
あー、でも、すっかりエルゴ忘れつつあって、自分の記憶の不確かさに茫然としていたりしています。
しかも、文脈的な証拠を探して記述する根気も今はないので(・・・なんかもうずーっと社畜状態(死語??)で疲れ果てていて・・・会社やめたいですう)、印象の残滓でごめんなさい。
(こういう時に、私の超うざったい長文感想は便利かも・・・・読んでいるウチに何となく思い出してきました。・・・・・・あー、長いっ、うっとおしいっ(笑))
以下、yumiさんの記述にかなり引きずられていますが、ご寛容を。


◆さて、私も、ラウルは、ロムドの偽りの秩序を確かに愛していたと思います。
彼もその中で育まれてきたのだし、(ロムドを創造した)メタ世界の創造主であるプラクシーワンの根拠地をラプチャアで攻撃したのだって、ADW計画でプラクシーの不要なように、ロムドを作り替えようとしたのだって、彼の愛したロムドを、メタ世界に対抗した自律する存在にしたいという一心だったと思います。


◆だけどですねー、きっと、彼の本当の心の中心は別にある。
「ロムドを、メタ世界に対抗した自律する存在にしたい」という思いの裏にあったのは、ラウルに取っては思いがけなく、それと等しい重量を持っていた「喪失した家族」への想い。


つまり、自信満々でプライドが高く、それに見合った社会的地位(ついには神の地位まで!)を非常な熱意で求め、また、自分自身にもそれに見合った行動を厳しく課し、「ロムドを、メタ世界に対抗した自律する存在にしたい」という思いを抱く、彼の人格と行動の裏には、第2話で失った「疑似家族」の占めていた空間を埋めようとする心理的な力動が絶えずあったんじゃないかなと思うのです。


◇(少し飛躍し、しかも先ほどとは逆の事を述べますが)そうした家族への喪失感を抱えていたラウルには、実は、破滅への衝動も同時にあったんじゃないでしょうか。


だからこそ、第17話で執国とアントラージュたちにくってかかって失脚したり、彼の失脚とともに発動するメタ世界の支配者(プラクシーワン)へのミサイルの発射の仕掛けがあった。
(本当に用意周到にやれば、失脚もせずに、執国の支配権だって奪えるポジションにいたはずだし、彼の失脚でキックした、自動でのミサイル発射にいたっては、破れかぶれで、自分自身で引き金を引くのが恐かったのだというよりほかなない。)


そうした観点に立てば、「失敗すると分かっていた」とデダルスが語るADW計画の実施により、彼はロムドを道連れに、満たされない空白を埋めようとしたのだとも考えられるのではないかなと。


◆上に述べた二つの観点は、まったく逆ですが、ラウルの心の中では整合性が取れていたというのが、私の解釈です。
愛したロムド市圏をメタ世界に拮抗できる存在にしたいというオモテの心。しかし、同時に自身の破滅を含めた世界の終わりを希求するウラの心の衝動。


yumiさんの指摘の通り、最後まで、家族へのこだわりに気がつかなかったラウルは、オモテの心を錦の御旗に掲げ、ウラの心の衝動にも気がつくことなく、「失敗が必然であった」ADW計画という破滅へと突入していったのではないかな・・・・と思ってみたのだけどどうでしょうか。


あー、また長文でスミマセン。』(2006/12/27 23:32)


■ yumi さんのコメント<その2>

『お返事、ありがとうございます。かなり参考になりました。
局長は、矛盾を抱えていた。確かにそんな感じですね。しかもそれを持て余していたんだと思います。
でも、本当に彼が望んだものって、再生でも破滅でもなかったんじゃないかとも思います。
ただ、家族に会いたいってだけだったのかもしれません。彼にとってはまさに、『思いがけなくそれと等しい重量を持っていた』という事でしょうね。
なのに、それに由来する破滅の衝動にすら気づかず・・・。ああ、カワイソ過ぎます!
さて、もうお気づきだと思いますが、私は局長が大好きです(笑)
という訳で、自分なりに彼に関するシーンなどをまとめてみたいと思うのですが、指摘などしていただければ幸いです。記憶違いがあったらすみません。あと、長くなると思います。


1、ショッピングモール惨殺事件前、『それより、車を用意してくれないか』と心なしか機嫌よさ気にクリステヴァに言う執務室のシーン。
この少し前に奥さんが乙女声で『じゃあ、先に行って待ってる』などと電話しているシーンを思うと、もしかしたら落ち合う予定があったのかもしれない。


→とりあえず奥さんは局長に惚れてる感じですね。1話の様子からは考えられないしおらしさでしたから。
ピノちゃんに辛く当たっていたのはもしかしたら、嫉妬的なものがあったんでしょうかね。
どこかの紹介サイトに『妻が子供を埋めない人であったために作らせたオートレイヴがピノ』的なことが書いてありましたが、ということは奥さん、もともと淡白な男であるはずの旦那が予想以上にたかが機械人形であるはずのピノに心を開いていて、それに嫉妬?例えばの話ではありますが。
まあ、知る由もないことですね。


2、妻と赤ん坊、墜落。娘、感染。一時呆然とするが、あまり動揺していないように見える。クリステヴァに促され、何事もなかったかのように指示を出す。乳母車を一瞥するが、無表情。


→抑制していた、というよりはまだ認識していない、という印象でした。何事もなかったかのように指示を出す局長がイイ感じでした(笑)


3、彼は、灯りもつけず、ピアノの同じ鍵盤を指先で押さえつけ続けている。やがてそれは乱雑に加速したかと思うと、不協和音に変わる。
殺気立った鋭利な眼差しで、彼は闇を見つめる。


→このあと、彼は上の命令を無視してビンスを抹殺しようとするわけですね。このころはまだ、秩序を乱された、とか、自分に属するものに手垢をつけられた、とか、誇りの問題?その類の怨念だったのではないでしょうか。


4、お家でお絵かきしている、感染オートレイヴになったピノ。戸口で物音がし、『パパだ!』と駆けて行くが、そこに居たのは銃を持ったおじさん2人。コギト狩りの移民。


ピノちゃんは、感染してもちゃんとお家に帰ってたんですね。しかし、そこに現れたのは・・・。
パパが放ったのでしょうか。2人組みが後で『昇進チャ〜ンス』などと騒いでいるところを見ると、そんな気もします。
警備局局長としての行為、でしょうかね。


5、『あの男が全てを知っている。今の私には分かる』(でしたっけ?)といった局長に、『今までにない感情的な言葉だ』と忠告とも取れる言葉を差し出したクリステヴァ。『コギトにでもかかったかのようだ』と笑う局長に、『私には笑えない冗談です』と彼女は返した。


→このころの局長はいかにもなんか企んでる感じでしたね。活き活きしていた、とすら言えるかもしれません。

また、『桎梏はもう長くない』的なことを口走り、『私、桎梏と繋がってるんですけど』的なことを言ったクリステヴァに『聞かせたいのだよ』と凄味ある声音で言い放ったシーンもありました。
しかし、今思うと危うかったのかもしれません。これも、そちらの言うところの『擬似家族の占めていた空間を埋めるための心理的な力動』だったのではないかな、と思ってみたりしました。
それにしても、クリステヴァってどう見ても感染してますよね?心というものに疎い局長は気づかなかったのか?まあ、彼女も隠していたでしょうけど・・・。


7、『オートレイヴは撃たないはずなのに・・・』
コミューンにて、クインが言った言葉。定期便はピノを撃ったのだった。
この後、定期便の画像と思われるものを見て、『ビンセント・ロウ・・・』とつぶやく局長のカットが入る。


→またもやピノを殺そうとしていた?撃ったのは彼が操作したせい?だとしたら、そういう一連のことにピノはどこまで気付いていたんでしょう・・・。


8、エレベーター内で、その壁に移った自分の顔、その殺気だった表情を見つめ、『なんと醜き顔だ・・・』と呟きざまにその壁を殴りつける。モールで逃げ惑っていたビンセント(ピノも映っていた)の映像がフラッシュバックされ、『あれは私を汚すものだ・・・』と忌々しげに一言。


→着実に壊れてきており、そんな自分を『醜い』と評しています。抜け出そうとしていたんでしょうかね、彼は。

9、『ただ、私は私であることを認め、最早他者の存在など必要としない高みに向かう。・・・今となっては化け物など』と、リルが生存しているという証拠である小型投影機をいじりながらどこか愉快そうに微笑する局長。この後彼はクリステヴァ、及び桎梏に向けてデダルスの存在理由などについて話す。


→この台詞は、いまとなっては既に居ない家族のことなんて関係ない、ということですかね。8の状態から抜け出したんだと自分では思ってそうですね。
そのための手段がロムドを救うこと、だったんでしょうか。
にしてもリルが生きていることはもう知っていたわけですから、大した嘘吐きですね、この人。というかそういうシーン、多かったような・・・。本心を織り交ぜているところがまたややこしい・・・。


10、10話における、桎梏に釘を刺された後のエレベーター内にて、『心の傷など・・・』とクリステヴァの親切心(笑)も跳ね除け、『私には分かる、最愛の者を失った者の慟哭・・・。何故目を背けるのです、桎梏!』などと取り乱す。


→これは・・・どういう意図で言ったんでしょうか。この人って、桎梏のことはある部分では信用していたんでしょうか。しかし、それも結局は捨てたんでしょうか。
『桎梏は答えない。ただ問いかけるだけ・・・』といったこの時に対し、後のほうでは『あなたは初めから答えなどもっていなかったのだ!』といっていたことからそう考えてみたんですけど、どうでしょうか。
『私には分かる〜』の下りは、まるで家族の喪失のことを示しているような印象を覚えました。9のとは正反対、と言う感じで、やっぱり矛盾という事なんでしょうかね。


11、『絶望の輝き・・・。抗いきれぬ感情が、崩壊させろと私に囁く。わが世界に、絶望が望んだ滅ぼす光を!・・・このよく出来た不出来な世界から、奪っていった。アレが、私から全てを。・・・ピノ
息が詰まるようなピアノの旋律に乗せて語られる、ラウルの本心。


→一応、抗おうとしていたこと。だけど無理で、結局は絶望を望んでしまった・・・。そういうことですかね。
よく出来た不出来な世界と言うところが、彼がロムドに抱いた失望のようなものを表しているんじゃないでしょうか。


12、『プラクシーの再生の研究もやめて?』ADWプロジェクトの命を受けたデダルスは冷めた口調で尋ねた。


→一度は普通のやり方でロムドを再生しようとしていたってことではありませんかね?しかし、モナドも惨殺事件の寧ろ直接的な原因ですからね。そこら辺に『神を必要としない』及びしたくない理由があるのではないでしょうか。


13、『抗い続ける限り、ロムドは存在し得る』桎梏に捕らえられ、お咎めを受けているときに彼が反論した際の台詞。


→抗い続ける限り存在し得る。これは、自分に向けて言った言葉でもあったのではないかと、個人的に思っています。


14、『まだ消えぬか。お前は滅んだ筈だ。・・・立ち向かう事の象徴と言うわけか。いいだろう。貴様は私が滅ぼしてやる。私は貴様を恐れん』ロムドの夜景を広げるガラスに映る、ビンセントの幻覚を見据えながらのラウル局長の言葉。


→こちらで、彼が見ていた幻覚はワンが見せていたものだと言う解釈を頂き、そこでやっとそのことに気付きました。ありがとうがざいます。
そして、奴にとっては局長にはラプチュアさえ撃たせればそれでよかったわけで、このときの幻覚は彼自身のものだったかもしれません。痛々しいです・・・。


それにしても局長は、桎梏やデダルスが存在理由に依存している中で、自分の中に潜む衝動に振りまわされ、追い詰められつつも向き合い、その宿命に抗うという意志を持っていました。私はそれに感動しましたよ。


これで終了です。お忙しい中長々と、本当に長々とすみませんでした。実を言えば私も疲れました・・・(笑)』(2007/01/05 15:26)


■ miyama_aruki のレスポンス<その2>

『返事遅れてスミマセン。
思い入れの深さが伝わってきました。
これだけあれこれ考えてもらえたら、ラウルさんも浮かばれるのではないかしら。
しかし、死なれちゃったらショックでかいですよね。


私は、物語の枠やテーマ、画面の設計等、余計なトコに目がいく傾向があって、キャラクター自体には結構淡泊な方なのですが、変な話、先年末、仮面ライダーカブト(私、こんなのも見ていたりします・・・・)の癒し系(?)のギャグ専門キャラの男ライダーの死に、深いダメージを受けてしまいました。
いやー、こんな感情が沸き上がってくるとは夢にも思わず・・・


さて、正月も経過して更に記憶も知能もボケてますが、以下、何点か、やはり「印象の残滓」で書きます。スミマセン。(しかも、自分の昔書いたテキストと矛盾が在るかも知れず、正しい感想かも自信がない・・・)
(しかも、超絶長くなってしまって・・・・・)


■■■1■■■
> 1、ショッピングモール惨殺事件前、『それより、車を用意してくれないか』と心なしか機嫌よさ気にクリステヴァに言う執務室のシーン。
> この少し前に奥さんが乙女声で『じゃあ、先に行って待ってる』などと電話しているシーンを思うと、もしかしたら落ち合う予定があったのかもしれない。
>
> →とりあえず奥さんは局長に惚れてる感じですね。1話の様子からは考えられないしおらしさでしたから。
> ピノちゃんに辛く当たっていたのはもしかしたら、嫉妬的なものがあったんでしょうかね。
> どこかの紹介サイトに『妻が子供を埋めない人であったために作らせたオートレイヴがピノ』的なことが書いてありましたが、ということは奥さん、もともと淡白な男であるはずの旦那が予想以上にたかが機械人形であるはずのピノに心を開いていて、それに嫉妬?例えばの話ではありますが。
> まあ、知る由もないことですね。
>


■そうですよね。ラウル局長の、終盤のピノへのこだわりの感情の発生源が、物語序盤では、描写されていなかったと思うので、そう考えるといい補完になるんじゃないかなと思います。


後から思えば、序盤に、ラウル局長の「ピノ萌え」みたいな描写があると、終盤のラウルの心理的展開がわかりやすかったんじゃないかなと思ってもいるのですが、ラウルさんのキャラクター性と反するので、難しいか。


■■■2■■■
> 2、妻と赤ん坊、墜落。娘、感染。一時呆然とするが、あまり動揺していないように見える。クリステヴァに促され、何事もなかったかのように指示を出す。乳母車を一瞥するが、無表情。
>
> →抑制していた、というよりはまだ認識していない、という印象でした。何事もなかったかのように指示を出す局長がイイ感じでした(笑)
>


■これは、何回か見たら、かなり印象に残る重要な場面だと思いました(初見ではスルーしちゃいましたが・・)。惚けたような一瞬の間が確かにありましたよ。


これは、私的には、ラウル局長は、相当動揺しているなと取りました。
妻の死に、感情の底では、激しく揺さぶられているけれども、初めて感じる「喪失感」にどう反応していいか分からず戸惑い、とりあえずは、「考えずともする事が決まってくる自分の職務」に逃げ込んだという風に解釈したんですが、どうかしら。


#今思いついたんですが、この時点では、ラウル局長は、「ピノへの愛着」を意識化してなかったんじゃないかなあ。
全てを失って、自分にもう何も残っていないと思った時に、では、楽しかった時は?自分が生きていたと感じられたのはどのような時か?と振り返ってみて、突然、守るべき対象、戻るべき処を見つけて、心底ほっとしたというのが、22話だったんじゃないでしょうか。
(ただし、ピノが、ラウルの心に浮上してきたのは、おそらく第15話のクイズの回かも。)


■■■3■■■
> 3、彼は、灯りもつけず、ピアノの同じ鍵盤を指先で押さえつけ続けている。やがてそれは乱雑に加速したかと思うと、不協和音に変わる。
> 殺気立った鋭利な眼差しで、彼は闇を見つめる。
>
> →このあと、彼は上の命令を無視してビンスを抹殺しようとするわけですね。このころはまだ、秩序を乱された、とか、自分に属するものに手垢をつけられた、とか、誇りの問題?その類の怨念だったのではないでしょうか。
>


■これは<2.>のシークエンスで立ち上がった感情の「受け」にあたるものだと思いました。
妻の死による、自分の中での感情のうねりを、どう解釈していいか、どう表現したらいいか分からないラウル局長の苛立ちと悶えじゃないかしら。


■■■4■■■
> 4、お家でお絵かきしている、感染オートレイヴになったピノ。戸口で物音がし、『パパだ!』と駆けて行くが、そこに居たのは銃を持ったおじさん2人。コギト狩りの移民。
>
> →ピノちゃんは、感染してもちゃんとお家に帰ってたんですね。しかし、そこに現れたのは・・・。
> パパが放ったのでしょうか。2人組みが後で『昇進チャ〜ンス』などと騒いでいるところを見ると、そんな気もします。
> 警備局局長としての行為、でしょうかね。
>


■さっきの思いつきに従えば、この時点だと、「ピノへの愛着」は、ラウル局長は意識化していないので、ラウル局長の指示かもしれないですね。


■■■5■■■
> 5、『あの男が全てを知っている。今の私には分かる』(でしたっけ?)といった局長に、『今までにない感情的な言葉だ』と忠告とも取れる言葉を差し出したクリステヴァ。『コギトにでもかかったかのようだ』と笑う局長に、『私には笑えない冗談です』と彼女は返した。
>
> →このころの局長はいかにもなんか企んでる感じでしたね。活き活きしていた、とすら言えるかもしれません。
> また、『桎梏はもう長くない』的なことを口走り、『私、桎梏と繋がってるんですけど』的なことを言ったクリステヴァに『聞かせたいのだよ』と凄味ある声音で言い放ったシーンもありました。
> しかし、今思うと危うかったのかもしれません。これも、そちらの言うところの『擬似家族の占めていた空間を埋めるための心理的な力動』だったのではないかな、と思ってみたりしました。
> それにしても、クリステヴァってどう見ても感染してますよね?心というものに疎い局長は気づかなかったのか?まあ、彼女も隠していたでしょうけど・・・。
>


■スミマセン。些末なツッコミします。(私も、昔の間違いを放置してあるのでそのセイでしたら、ごめんなさい。)
私は、当初は、「漆黒」だと完璧に思いこんでいて、途中で「あれ?桎梏かな・・・」と思った矢先、17話のコメント欄へのALEXさんからの指摘で、「執国」が正しいと知りました。
#DVDにも「執国」の文字があったので間違いないとおもいます。


■■■7■■■
> 7、『オートレイヴは撃たないはずなのに・・・』
> コミューンにて、クインが言った言葉。定期便はピノを撃ったのだった。
> この後、定期便の画像と思われるものを見て、『ビンセント・ロウ・・・』とつぶやく局長のカットが入る。
>
> →またもやピノを殺そうとしていた?撃ったのは彼が操作したせい?だとしたら、そういう一連のことにピノはどこまで気付いていたんでしょう・・・。
>


■ここは、司令官であるラウル局長が、自らポッドを操作するとも思えないので、「定期便」の自動銃撃じゃないでしょうか。
(また、思いつきですが)『オートレイヴは撃たないはずなのに・・・』というセリフは、ピノは、既に「感染オートレイブ」=「心を持つ存在」になっていることを強調しようという脚本の意図かなと思いまいた。


■■■8■■■
> 8、エレベーター内で、その壁に移った自分の顔、その殺気だった表情を見つめ、『なんと醜き顔だ・・・』と呟きざまにその壁を殴りつける。モールで逃げ惑っていたビンセント(ピノも映っていた)の映像がフラッシュバックされ、『あれは私を汚すものだ・・・』と忌々しげに一言。
>
> →着実に壊れてきており、そんな自分を『醜い』と評しています。抜け出そうとしていたんでしょうかね、彼は。
>


■「良き市民」の範疇にいて、感情を表に出さなかったラウルが、感情を荒々しく表現するようになったという点において、段々と「人間らしく」なっている過程かな?と思ってみました。

彼は、その感情の表出の仕方を間違えて、ロムドを破滅に導く?


■■■9&10■■
> 9、『ただ、私は私であることを認め、最早他者の存在など必要としない高みに向かう。・・・今となっては化け物など』と、リルが生存しているという証拠である小型投影機をいじりながらどこか愉快そうに微笑する局長。この後彼はクリステヴァ、及び桎梏に向けてデダルスの存在理由などについて話す。
>
> →この台詞は、いまとなっては既に居ない家族のことなんて関係ない、ということですかね。8の状態から抜け出したんだと自分では思ってそうですね。
> そのための手段がロムドを救うこと、だったんでしょうか。
> にしてもリルが生きていることはもう知っていたわけですから、大した嘘吐きですね、この人。というかそういうシーン、多かったような・・・。本心を織り交ぜているところがまたややこしい・・・。
>
> 10、10話における、桎梏に釘を刺された後のエレベーター内にて、『心の傷など・・・』とクリステヴァの親切心(笑)も跳ね除け、『私には分かる、最愛の者を失った者の慟哭・・・。何故目を背けるのです、桎梏!』などと取り乱す。
>
> →これは・・・どういう意図で言ったんでしょうか。この人って、桎梏のことはある部分では信用していたんでしょうか。しかし、それも結局は捨てたんでしょうか。
> 『桎梏は答えない。ただ問いかけるだけ・・・』といったこの時に対し、後のほうでは『あなたは初めから答えなどもっていなかったのだ!』といっていたことからそう考えてみたんですけど、どうでしょうか。
> 『私には分かる〜』の下りは、まるで家族の喪失のことを示しているような印象を覚えました。9のとは正反対、と言う感じで、やっぱり矛盾という事なんでしょうかね。
>


■<執国>へのラウルの信頼については、22話「桎梏」で、エルゴと若きドノブとの「光を背負った上空にいる神と、それを地上で崇めるヒト」的な構図のカットに象徴的な様に、たぶん、<エルゴ=神>、<ドノブ=司祭>的な宗教的な感情があったんじゃないかとおもいます。
だから、<執国>の事を思う時、意識の最初に、どうしても絶対不可侵の尊敬の念がでてしまうんじゃないでしょうか。


また、(シチュエーションの記憶がオボロで申し訳ないのですが)<9.>のラウルのセリフと、<10.>のセリフは、確かに家族のことについて正反対のことを言っている様に聞こえますね。
前者が心理的に余裕があり、自分の意識を操作できる時にでたセリフ。後者が取り乱して感情的になり、本音が露頭しているという解釈でどうでしょうか。


■■■11■■■
> 11、『絶望の輝き・・・。抗いきれぬ感情が、崩壊させろと私に囁く。わが世界に、絶望が望んだ滅ぼす光を!・・・このよく出来た不出来な世界から、奪っていった。アレが、私から全てを。・・・ピノ
> 息が詰まるようなピアノの旋律に乗せて語られる、ラウルの本心。
>
> →一応、抗おうとしていたこと。だけど無理で、結局は絶望を望んでしまった・・・。そういうことですかね。
> よく出来た不出来な世界と言うところが、彼がロムドに抱いた失望のようなものを表しているんじゃないでしょうか。
>


■ここは、燃えました。いいシーンでした。
自分の感情の自然な発露に従って、<執国>に逆らい、地位を失い、破れかぶれで、世界の統治者らしい人物がいる地点へラプチャアを発射したラウル。

キーワードは、「人間らしい感情」だと思います。「人間らしい感情(妻やピノの喪失への想い)」と、「良き市民の合理的な理性」との間を行ったり来たり。
揺れ動く振り子はやがて、「人間らしい感情」側に大きく振りきり、激情とも呼べる自暴自棄へと突き抜けてしまった。

違う側面から見れば、「自分の思い通りにならない世界は要らない」という、心理的に未発達なところが、表現されているんじゃないかなと・・・・今、思いつきました。


■■■12■■■
> 12、『プラクシーの再生の研究もやめて?』ADWプロジェクトの命を受けたデダルスは冷めた口調で尋ねた。
>
> →一度は普通のやり方でロムドを再生しようとしていたってことではありませんかね?しかし、モナドも惨殺事件の寧ろ直接的な原因ですからね。そこら辺に『神を必要としない』及びしたくない理由があるのではないでしょうか。
>


■劇中語られているところによれば、プラクシーがいないと、都市は生命力を失い存続することが出来ないので、ロムド市及び執国は、逃げたエルゴ、死亡したモナド、両者の代わりのプラクシーを作ることをめざしていたはずです。

「神を必要としない」については、物語の展開に沿って考えると、こういうのはどうでしょう・・・・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「世界の真実」を隠し、ロムド崩壊への兆候に目を背け、<神>=<プラクシー>を後生大事にするだけで、「ロムドの永遠の存続」に向けて、(プラクシーの再生以外の)なんら積極的な手を打たない、司祭である<執国>の態度を見て、彼は<執国>の指示どおりに動くのをやめたいと思った。

彼は自分の全存在をかけて、絶対の宗教的指導者<執国>に逆らい意見する。外の世界の現実に目を向けよ。しかし、それは、ラウルにとって失脚に直結する結果をもたらした。

絶対の宗教指導者<執国>に逆らう意味を分かっていたラウルは、悠長に事を運べないことをあらかじめ悟り、世界を代える劇薬として、<世界の中心原理>=<プラクシー>=<神>殺しを決行した・・・・・・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・・・・・・というのはどうでしょうか。

もう、得体の知れない<神>=<プラクシー>に振り回されるのはごめんだよと。オレは、人間として主体的に選び取った世界に生きたいのだと。

そして、これらの行動の裏にある動機は、やはり、「妻・家族の喪失」で目覚めた「人間ラウル」・・・ってカンジなんじゃないかなあ。


■■■13■■■
> 13、『抗い続ける限り、ロムドは存在し得る』桎梏に捕らえられ、お咎めを受けているときに彼が反論した際の台詞。
>
> →抗い続ける限り存在し得る。これは、自分に向けて言った言葉でもあったのではないかと、個人的に思っています。
>

■そうですよね。<神>に全面降伏する、「自己決定の権利が一切ない不自由な世界」ではなく、「感情ある人間として、自分で自分を決定する世界」。
<神>には勝てないかも知れないけれども、オレは、自分の感情に従うよと。あがき続けるよと。


■■■14■■■
> 14、『まだ消えぬか。お前は滅んだ筈だ。・・・立ち向かう事の象徴と言うわけか。いいだろう。貴様は私が滅ぼしてやる。私は貴様を恐れん』ロムドの夜景を広げるガラスに映る、ビンセントの幻覚を見据えながらのラウル局長の言葉。
>
> →こちらで、彼が見ていた幻覚はワンが見せていたものだと言う解釈を頂き、そこでやっとそのことに気付きました。ありがとうがざいます。
> そして、奴にとっては局長にはラプチュアさえ撃たせればそれでよかったわけで、このときの幻覚は彼自身のものだったかもしれません。痛々しいです・・・。
>
> それにしても局長は、桎梏やデダルスが存在理由に依存している中で、自分の中に潜む衝動に振りまわされ、追い詰められつつも向き合い、その宿命に抗うという意志を持っていました。私はそれに感動しましたよ。
>


■さて、期せずして、今までのまとめですが、ラウル局長は、「妻の喪失」から始まり、次第に人間らしい感情に揺さぶられる人間に成長した。そして、それを人間らしく表現することを学び、(神に隷属するのではなく)「自律した人間存在」への指向を孕むようになった。

しかし、その「人間らしい自己決定を求める感情」を、結果としてプラクシー・ワンに利用されてしまったんじゃないでしょうか。
<神>を殺すという意志と目的と行動は、結果として、プラクシー・ワンにとって望むところだった・・・・

この逆説が、この物語の一つの柱だったのかなあ・・・・と、いま(またもやですが)思いました。


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> これで終了です。お忙しい中長々と、本当に長々とすみませんでした。実を言えば私も疲れました・・・(笑)

■あーっ、またすんごい長くなっちゃった・・・・・・・・・・ダメだ。


でも、ラウル局長について、いろいろ考えられたので、かなり楽しかったです。(私の考えた内容の的はずれは、ご愛敬ってことでカンベンしてください。)


エルゴプラクシーは、物語が重層的で楽しいです。ここ数年の乏しい(?)私のアニメ体験の中でも、(異論はあるでしょうが)最も優れた作品だと、個人的には、あらためて思いました。
かくして、キャラクターは、永遠の命を持つのでした。


yumiさん、またよろしくお願いします。』(2007/01/11 02:56)
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