■エルゴプラクシー21時果つる処/shampoo planet_s永川成基c寺岡厳d恒松圭g恩田尚之小森秀人坂本千代子小田剛生深澤謙二竹森由加

◇荒れ果てたロムド市圏。車は転倒し、建物の破壊も見える。火の手も上がっているようだ。オートレイブ処理課の移民たちは、コギトウィルスに犯されたオートレイブ達が反乱を起こしたのだリルに語り、秩序無き今も「良き市民」を夢見て、オートレイブ狩りを行っている。街には市民の姿はなく、ロムドの秩序は完全に麻痺している。
破壊を先導しているように見えるのは、プラクシー・ワン・・・・・・・・・・・・


◇その状況へ至る過程がまたも省かれたヴィンセントとリルのロムド市への帰還。
我々が知ることが出来るのは、アバンの、センツォン号にここで待つように言い含められたピノの、まずビンセントがロムド市に出立し、戻らぬビンセントに業を煮やしたリルが、その後を追ったという語りと、Aパート冒頭の、コギトウィルスに犯されたオートレイブを破壊しつつ、ロムド市を彷徨うリルによる状況の説明。
「ロムドを前にして、ビンセント・ローは忽然と消えた。・・この二日間、この街で時折見かけた彼・・・・その姿はエルゴプラクシー。・・・誰との接触をも拒むような悲しみに、支配されているような・・・」



◇やはり、本筋に帰ると、隔靴掻痒なカンジになるなー。わからん。
◇この回を見て、最初、やっぱりロムドの世界は、ヒトビトの脳内に広げられている仮想の楽園だったという解釈をしたくなっちゃったけど、ロムドに限っては、どうも違うみたい。
告白するが、ワタシの目が節穴なせいで、1度目に受け取った印象と、2度目に把握する内容にカナリ乖離があるのが、エルゴの物語。


ワタシは、なんでも感想一般を書く場合、一度通してみてから、感想のあらがきを書き、2度目で簡単にブラッシュアップするという方針なんですが、エルゴは、その際ほぼ全面的に改稿することが多い。
この回も、ほらやっぱりロムドは仮想の楽園だったよ、という文章を書いていたのですが、どうも違うみたいで、過大なシステムに支えられた脆弱な社会ではあるが、実体として存在していた模様。
己の把握力のなさに愕然とするのでした。


◇一番印象が変わったのが、リルの元上司の情報局の局長の様子。
彼の目には、いままでのロムド市の役所で自在に繰り広げられてきた電子書類が動的に動く様が今までと変わらず見えるらしいが、しかし、その彼と実体的に会話をするリルの目には、ただせわしなくキーボードを叩き、画面を見つめ、電子書類を繰るパントマイムをしているように見える。


これこそ、ロムドのシステムから仮想を見せられ、真実と信じ込まされている局長を描写したものであり、システムの接続から自由になったリルには、見えないのだ・・・・・と最初思ったのだけど、紙に書いているつもりで机にペンで書いてしまうとか、最後の「お大事に」が第2話のリルへの「お大事に」を承けて、自分自身へ逆流しているような印象などの場面の流れを見ると、局長を見たリルの懐述「全てをアントラージュに、執国に、総体に頼り切り、真実から背を向けた良き市民達の末路という訳か。」の方が、描かれた現実よりも重いカンジがした。局長は、たぶん気が触れているんでしょう。


◇また、執国のところにたどり着くまでに、ロムド市を彷徨うリルが出会うのが、オートレイブ処理課のヒトビト、情報局局長、デダルスだけってのが気になってしまった。
支配階層だけで構成されていた世界が肉体のある世界で、ロムドの実体は、仮想の市民達を電子的に構成し、いわば夢を見せられている支配者層をあやす世界だったんじゃなかなとも思い、移民達は、そんな現実に差し込まれた外界からの肉体を持つ異分子で、例外的な存在としてシステム崩壊後のロムド市で、リアルな夢から覚めずに、「良き市民」を夢見て戦っている・・・・
・・・と思ったのだけども、ピノ的には、オートレイブ処理課以外の市民らしいヒトビトと出会っているし、アバンにはロムドから逃げ出すヒトビトも描かれている。それに、致死率90%のADWプロジェクトでたくさんのヒトが死んだと言っているし、オートレイブの反乱で死傷者も一杯居る模様・・・・・・・


・・・・・・その割には、死体が一切描かれていないのが、カナリ気になる。未だ微妙に、ロムド=仮想世界の線に未練がある自分がいるのでした。執国がとりまく4人のアントラージュも≪創造主が思う故に我らがあり≫なんていっているしさー


◇ところで、この回で、<「エルゴプラクシ」=「プラクシーワン」>が確定。<=「ビンセント」>も揺るがないところでしょう。前回の英語サブタイトル「Goodbye, vinent」の通りになっちゃったのかな。だけど、なぜそうなのかがやっぱりわからない。


◇しかし、あと2話なのに、残された謎、物語の一義での解釈を拒む不確定な要素が多すぎるかも。あー、すっきりしないーっ。
大丈夫なんでしょうかと思わず、不逞にも心配してしまいますよ。これだけ高密度のエピソード連発でも、着地失敗すると、台無しになっちゃうもの。


・それぞれが創造した世界の生命力の源であるという、プラクシーとはそもそも一体何なのか?
・「エルゴプラクシ=プラクシーワン」である必然はなんなのか?なぜ、分かれたのか。ナゼ一体になったのか。
・ビンセントとは何者であり、その人格はどこから由来するのか?
・リルの存在は、エルゴプラクシーとどのような関係があるのか?


・「あの光を見た晩からいろいろおかしな事がおこっている」ラプチャアとは、何で、どこに向けて発射され、どんな効果を世界にもたらしたのか?
・一体誰が「勝者」なのか?そもそも、勝利条件はなんなのか?負けたらどうなるのか?勝ったらどうなるのか?
・市民を変身させるADWプロジェクトとは?どのような姿に変身させようとしたのか?そもそも、ナゼ、何に変身する必要があったのか?


・特別な存在であるらしい、リル・メイヤーとは何なのか?
・子供リルが成長した姿(ED表記では、リアル・メイヤーと書かれてましたが・・・)と、物語冒頭から存在するリル・メイヤーの関係は?彼女とエルゴとの関係は?
・子供リルの成長が異様に早い訳は?


・創造主プラクシーワン(orエルゴプラクシー)にロムドを託された執国とはなんなのか?
・プラクシーワン(orエルゴプラクシー)が、モスコを、そして、ロムドから去った訳はなんなのか?


・コギトウィルスとは、何なのか。アンドロイドが自我を持つとなぜヒトを襲うのか。ピノが凶暴にならなかったわけは?
・ラウル局長とピノとの心的つながりは?


・というか、そもそも世界は一度滅びて、再建中なの?ナゼ滅びたの?誰の意図で再建しているの?SF的大状況がしりたい。
・そもそも、ロムド市圏を含む全世界の構造は、一体全体どうなってんの?


・・・・・・など、など、など。


◆◆以下メモ◆◆
・アバンで描写されるヒトビトは、ロムド市から脱出して新天地を求めるひとびとなのかな。


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ピノの、ロムドのドーム内への最初の一歩は、狭い通路に群れなす、「死を覚悟したオートレイブが捧げるという祈り」の姿の群れ。
「わ、我は、存在理由から解放されない。・・・・わ、我は我である理由をもと・・む・・・・・・」


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・一方、一足先にロムド市に侵入したリルは、地下通路で、コギトに感染したオートレイブに襲われている。助けたのは、オートレイブ処理課の移民の男。ビンセントは元々彼の部下で、そうかビンセントの赤い服装は、処理課の制服だったのか。忘れてた。
「ビンセント・ロー・・・ああ、要領は悪い奴だったが、仕事は出来たな。」
アントラージュを破壊など考えられんと思ってましたが、今となってはビンセント君の行動は正しかったと言える。」
「・・・・分かりませんか、アントラージュに頼り切っていたから、・・・こんなことになってしまったんですよ。」
「市民がたくさん死んでいるというのに何の手も打てない。コギトウィルスに感染したオートレイブが、アントラージュの役割を放棄してからというもの、中央管理局はその機能をまったく果たしていない。そうでしょう?」


・状況の飛躍に戸惑う我々は、ラウル局長の噂を聞く。
「警備局長が失踪したっていう噂は本当なのかな。
「こら、お嬢様に失礼だろう。」


・ラプチャアについて
「でもあの光はなんだったんでしょうか。」「二ヶ月前に見た、あの光の柱ですよ。」
「考えてみれば、あの光を見た晩からいろいろおかしな事がおこっているようで・・・・。」



・「ところで、市民の方が苦しい時ほど、私たち移民は、ロムドの良き市民となるために、職務を続けるのみです。」という、オートレイブ処理課の長と面々が、武装オートレイブの処理に去った後、リルの懐述。
「彼等は・・・・悲しいほど何も知らされていないまま、崩壊の中で生きていた。・・・彼等に何が出来る。それはワタシも同じ。」
「ロムドを前にして、ビンセント・ローは忽然と消えた。・・この二日間、この街で時折見かけた彼・・・・その姿はエルゴプラクシー。・・・誰との接触をも拒むような悲しみに、支配されているような・・・」
「・・分かれたモノは一つにならなければならない。・・・ビンセントとプラクシーが一つになったとき、そこに残った存在は、ワタシの知っているビンセントと同一だと言えるのだろうか。・・・その時、ワタシは?」


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・炎上する車の脇を歩み、たどり着いたリルの元上司、情報局局長との対話。
「・・・リル・メイヤー。担当医の書類はどうなったね。」
ここは、2話で、虚言症として警備局からの指示で担当をはずされたリルが、情報局の局長にくってかかる場面を受けているんですね。うー、なんて長い承けだ・・・。最初、この人が誰だか思い出せなくて、ちょっと探したら、第2話Aパート前半で係りの場面を見つけました・・・・


・「これだけのヒトが死んだ・・・感染症か?それとも・・・」
「移民地区の隔離だけでも大変だったのに、今度は例のADWプロジェクト関連の確認データだけでも、これだけあるんだ。愚痴の一つも言いたくなるよ。・・・まあ、ただ認可すればいいんだけどね」
といってウィンクする銀河万丈声の情報局局長。キーボードを叩き、虚空の画面を眺め、手元の情報機器からデータをリルに見せる「仕草」をみせる。
最初、これこそが、ロムド市のリアルが仮構であることの演出の一つかと思ったけど、彼の身振り手振りはロムドのシステムが生きている頃を、忘れることが出来ず、神経症的に追いつめられている様を演出しているみたいです。
彼を見たリルの懐述「全てをアントラージュに、執国に、総体に頼り切り、真実から背を向けた良き市民達の末路という訳か。」


・ところで、情報局長との対話は、真実の断片を提示している模様。
「おじいさまは、執国は何をしている?」
「そーだ、そうだ。君から伝えてもらえばいい。コレを一つ頼むよ。厚生局から提出されたADWによる副作用関連のデータだ。・・執国に届けてくれ。ワタシの口からはとてもとても。」
「どういう意味だ?」
「完全に失敗だよ。90%が死亡だからね。天才デダルスの名も地に落ちたな・・・。
そもそも我々自身が変わる必要がどこにあったというんだ。良き市民は、あくまでドームの秩序を守ればいい。いつもどうりじゃないか。いつもどうりやって来たことを、いつもどおりやっていれば・・いい。
明日は忘れるな。・・・・担当医の書類だよ。・・・お大事に。」


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・Bパート冒頭。地下の研究施設で、死体となったモナドラクシーと対面するプラクシーワン。
・ここで第1話のリルの浴室で繰り広げられたエルゴ対モナドの闘いが回想されるんですが、ワタシは完全に勘違いしてました。
ロムドには、モナドの他にプラクシーがいたのかと思っていて、この場面で戦ったのは、モナドとは別のプラクシーだったのだと。
しかし、実際は、エルゴ対モナドであり、第2話で死体として発見されたのが、モナドラクシーだったみたいですね・・・・・・カナリ根本的な勘違いでがっくし。


・傷ついたモナドに涙するプラクシーワン。
「殺したのはオレだ。・・・・だが、ナゼここまでする。・・・・ドノブ・メイヤー」
この外見プラクシーワンのヒトの自身の発話で、<「エルゴプラクシー」=「プラクシーワン」>というのが確定。
・そして、モナドの首元に「PROXY NO13」の刻印を発見するプラクシーワン。モスコ市の地下で手に入れたペンダントにも、「XⅢ」の刻印があるのを発見。自分が元々持っていたものに「Ⅰ」とあるのを認識すると、クイズの回を思い出し、自分こそがプラクシーワンであることを悟ったみたい。


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・「悲しいの?」という問いかけで、一瞬宿った理性の瞳が凶暴に曇り、声をかけた女を追いつめる。
「これ・・・綺麗な形ね。」
「なぜ、おまえは恐れない。この姿を見ても。ナゼだ?」
「どうして?こんなにも優しい顔をしているのに。・・何を恐れる必要があるの?・・おそろいね。二つともあなたのモノなの?」
「一つは、モナドのものらしい。」
「愛していたのね・・・モナドを。」
「・・・」
「可哀想。・・・だってワタシもモナドを愛しているから。」
「おまえは誰だ。」
「ワタシは、リル・メイヤーよ。」
「何を言っている。」
「あれ・・・でも、ワタシは・・・・・リル・メイヤーなのよ。」
頬を染めて逃げ出す自称リル・メイヤー。第18話に出てきた子供リルが成長した姿なのかしら。しかし、時間の経過としては、ラプチャアが発射されたのが2ヶ月といっているので、ものすごい成長速度。
「そっか、あれがビンセント。・・・きっとそうよ」と笑いながら去っていく。


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・情報局の局長にあったあと、デダルスに会うリル。デダルスは、「新しいリル」と間違えている。
「リル、いい加減にあんな悪い子のまねをすることはないんだよ。君は君なんだ。」
「リル、まだつづけるのかい?旧型データでも上書きしたような態度で。」
「僕を驚かせようとして端末からデータを盗んだのかい?まったく。」


・そんなデダルスに気がつかず、ロムド市の現況について詰め寄るリル。
「教えてくれ、短期間に急激な人口の減少。ADWプロジェクトとはなんだ。局長から聞いた。市民達に何を。」
「いたいよ・・・おまえは誰だ。・・・僕のリルじゃない。・・・分かった。・・おまえは・・裏切り者だな。」


・リルを執国の処に案内するデダルス。
「「ウームシス」?が沈黙した。なぜだかわかるだろ。」
モナドの・・・・ビンセントの不在・・・」
「それでラウルが、自分たちが変われば、プラクシーなど必要ないと言い出したわけ。それがADW(Aus Der Wickel)。簡単に言うと、人体改造かな。・・できるわけないのにね。」
「それじゃ・・・おまえは失敗することを知りながら・・・」
「そうだ。」


「・・・・君の言う光の柱。ラプチャアだよ。ラウルがね。許せなかったのさ。自分たちが敗者であることを。」
「敗者?」
「勝者か・・・君がここにいると言うことは、アイツも生きているということか。・・・いいことを教えて上げよう。君をここで襲わせたのは、ラウルじゃなかったよ。意外なことにね。」
「どういうことだ。」
「僕はここまでだ。・・・聞いてみるといい。・・本人に。」
「おじいさま?・・おじいさまが私を・・・」


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・執国の前に立つプラクシーワン。4人のアントラージュが唱和する。
「今の今まで現れなかった。」「今の今となっては手遅れ。」
「今更何をするつもりだ。」「既に時は果てた。」「創造主よ。」


・≪執国は愛した。≫
「創造主がロムドを作り上げ」「我らを生み出した」
「オートレイブを与え」「子をなす力をも与え」
≪執国は憎んだ。≫
「我らはナゼ存在するのか。」「我らの孤独は何者が癒すのか。」
「なぜ我らをすてた。」「ナゼ愛してはくれなかった。」
≪執国は求めた。≫
「創造主ではなく」「奪った存在」「モナドラクシーを」
「再び創造主は戻った。我らも知らぬ間に」「モスコからの移民として」
「創造主はモナドを奪い」「再び去った」
≪創造主が思う故に我らがあり、我らがいくら思えども創造主は既にいなかった。≫
「そして、今。みたび戻った。」


「我らは望む」「創造主が思わぬ世界はなく」「我らは思われることを」
≪我らが思いここにいる。我らがレゾンデートル。我らが思いここにいる。我らがレゾンデートル。・・・・・・≫


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・プラクシーワンは、玉座の執国に迫り、執国を釣り上げる。
「やめろ、ビンセント。それがおまえの目的か。・・エルゴプラクシー
獣のような嬉しげな声を出しながら、老いさらばえた執国を放り投げる。銃を構え、放り投げられたドノブに駆け寄るリル。
リルの前に立ちふさがり、リルの顔ににじり寄るプラクシーワン。


・ラウルの放った弾丸がプラクシーワンの右腕に命中。右手を捧げ、苦しむプラクシーワン・・・・・・・・で次回。ラウルすっかり狂人の笑い声をあげてます。


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ピノは、荒れ果て、廃墟になった自宅マンションからピアノの音を聞く。「ただいまー」といって建物に入っていく。