■DARKER THAN BLACK -流星の双子-12星の方舟s菅正太郎c&d岡村天斎g石井百合子伊藤秀樹小田嶋瞳根岸宏行

◇最終回。


◇うーむ、わからん。整理しよう。
◆「イザナギ(シオン)とイザナミ(イン)が出会うと世界が壊滅するような災厄が起きる。」という「三鷹文書」の予言に対応するために、それを「阻止しなければならない」という、<シオン&パブリチェンコ博士&マダムオレイユ>連合と、日本の秘密諜報組織「三号機関」の暗躍がベースストーリー。
ヘイは基本的にオレイユ配下で、時にその意思に反して活動してきた。


◇「三号機関」は災厄回避に決定打を持てず、イザナミ(イン)を手中にしたものの、対策の立案すらできずに、「イザナミ」として発動を始めたインを物理的に「封印」する事しかできなかった。世界滅亡を阻止しようと志を持っていたものの対応する術を持たずに途方に暮れて状況に流されるばかり。


◇一方、<シオン&パブリチェンコ博士&マダムオレイユ>連合は、早くから予言された事態を想定し、「シオンの契約者能力(物質のコピー能力)」、及び博士の研究していた「ME(メモリーイレイザー)」「MEネットワーク」を核に対応策を立案し、来るべき破局の日に向けて準備を行っていた。


◇1話で描かれた、ヘイによるパブリチェンコ博士(のコピー)の殺害すら、実は、<シオン&パブリチェンコ博士&マダムオレイユ>連合のシナリオ通り。<シオン&パブリチェンコ博士&マダムオレイユ>連合の計画に興味を示す、CIAやMI6に対する目くらましの意味を持っていた。


◆さて、肝心の<シオン&パブリチェンコ博士&マダムオレイユ>連合の計画とは何か?


◇それには、まずイザナミことインがもたらす災厄について考えてみなければならない。作中語られていることは極めて少ないが、劇中の描写を見ると、「契約者と人間の魂を吸収し、この物語世界での現実上<死>をもたらす」ということが一番に挙げられるような気がした。


◇おそらく、イザナミによる「破局」とは、全「契約者」と人類の魂を吸収し、世界には「魂を無くした「契約者」と人類の肉塊」が充ち満ちる・・・・ということだったのではないでしょうか。(=「契約者」という新たな人間のあり方の消滅。だけでなく、人類の消滅。)


◆それを阻止するために、シオンは自らの契約者能力である「物体のコピー能力」、及び「MEネットワーク」により全世界の記憶を把握可能という劇中設定を利用した。勝利条件としては、イザナミは自らの能力をある程度発動すれば満足する。


◇よって、シオンは、「もう一つの地球」を(自らの無数のコピー肉体を使って増幅した)コピー能力によって作り、そこに「ドール観測網によって把握された世界の様態」「MEネットワークによって把握された全人類の記憶」をもとに生成した魂と世界の入れ物を用意した。そして、そこに、イザナミが吸収した「契約者と人類の魂」を移動する。


イザナミによって、吸収された契約者と人類の魂(スオウもジュライもそれに含まれる)は、本来、亡者として(イザナミだけに!)地獄をのたうち回るところなのに、シオンによって作られた「もう一つの地球」で安寧で平穏な人生を保証されるわけです。そして、イザナミは、自ら吸収した契約者と人類の魂を「もうひとつの地球へ転生させる」ことで、きっと、その能力の発動に対して満ち足りた気分になったんでしょう。


◇ここに災厄に巻き込まれ、物語世界で殺害され、魂をイザナミに吸収された契約者とヒトビトの救済がある。劇中Bパートで活写されたスオウの「もう一つの地球」でのベタベタだけど魅力的な、理想の学園生活は、劇中徹底的に不幸な存在となってしまったスオウへの供養なんでしょーね。


◆かくて、イザナミの覚醒によって発動するはずだった、「全人類、全契約者の魂の吸収」すなわち「世界の滅亡」は回避された。シオンによる、イザナミ懐柔計画、既に吸収した契約者と人類の魂をコピーした地球に転生させると言う計画は成就され、世界滅亡の危機は回避されたという感じでしょうか。(ヘイが、イザナミと宜しくやったという、方向もあるかしら。)


◆だけど!この構図(物語世界の現実の地球とコピーされた地球)は、逆に考えれば、そもそも!契約者という「精神的な変異種」が存在し、偽りの星空が満天に輝く、我々の日常に極めて近いけれども、肝心のところが閉塞されたこの物語世界への種明かしでもあったんじゃないかな。


◇実はこの物語世界こそ、誰かの脳内、ヘイさん?、あるいはもっとメタよりに考えれば岡村監督?・・・の妄想世界に立脚して、その妄想の主体をも含んだ物語世界なんじゃないかと、私は思うわけですよ。「コピーの地球」こそが実は「現実」であったり・・・・


◇そもそも、契約者ひとりひとりの生命の証であると語られる星々を戴く「偽りの星空」とは、「物理的な世界設定」を放棄しているってことでしょう!・・・・ってことは、この物語世界は、誰かの妄想世界以外の何者でもないとハッキリ明言しているに等しいと思うのですよ。


◇「契約者」という、精神疾患的な設定を考えてみると、私の考えが補強されるような気がする。この世界は、誰かの病的な脅迫観念(まあ、例えば岡村監督)によって、想像されている物語。


◇この世界では、「精神的な疾患を持つ特異者」にこそ、世界の様態に干渉する力があり、彼は常人とは違う超能力を持ち、超能力を発揮することで世界に存在する意味についてのカタルシスを得ている。そして、そのカタルシスは、病者に親近感を持つ物語の創造主にフィードバックされてくるんですねえ、きっと!・・・病的な精神の持ち主こそが世界の主人公。


◇だから!この物語世界が不必要に複雑で、私など平凡な人間には腑に落ちず、置き去りにされた気持ちがすごくするのには理由がある。それは、「創造主である作者自らが、妄想した病的世界」を、「普通の人でも理解可能な物語世界」の上位に置いたから。そして、そのギャップを埋めるつもりはまったくない!


◇これはこれで作家性だとは思う。きっと、「創造主である作者自らが、妄想した病的世界」を点描でもいいので描ききる!というところに、岡村監督の力点があったんでしょう。だけどさー、平凡な人間である私などは、すごーくフラストレーションがたまる最終回だったんだよう。


◆そもそも、物語の軸になっていた<イザナミことインの運命>、彼女を好いていて、しかし殺さねばならないと思っていた<ヘイの決断>の結末が描かれていない!・・・加えれば、主人公といいう触れ込みだったスオウは、結局、状況と周りの意思に翻弄される哀れな被検体の子供に過ぎず、終いには物語世界の現実で記憶を抹殺され殺されたあげく、あの世(もうひとつの地球)に棚上げされてしまった!


◇まあ、ヘイについて言えば、元来の世界を滅ぼす「黒イン」と決別し、シオンの能力により、新たにコピーされ元の「黒イン」とは「何かが少し違う」「白イン」と、未来に向けた進捗を果たしたのだと読み取れるよーな気もするけどもさ。


◆さて、言ってしまえば、肝心のヘイとインの運命についての決着を一切つけていないという意味で放り投げエンド。・・・だけど、まあ、スオウという可哀想な子供の成仏を看取って上げたという意味では、好ましいのかな。・・・あ、ちなみに私は悲劇的な結末が大好きです。スオウの超絶に不幸な結末には燃えてしまいました・・・・・


◇だから、この物語は、(ヘイとインの因縁は放っておいて)ひとりの少女の敗北の物語として見るのがいいんだろうな。
黄泉の国の女王(イザナミ)に魅入られ、「作中の現実」を否定する、死の世界に引きずり込まれた主人公スオウは、強い念を持って想い人ヘイを薄れゆく記憶に刻みつけるが、用意され、作られた幸せな平穏な日常に埋没して夢うつつに生きていく・・・・・みたいな!


◆◆以下メモ◆◆
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・オレイユとミサキの対話。
「・・・そう、イザナミに会いに行ったの。」(マダムオレイユ)
「それを知ってて、どうして止めなかったんです!イザナギイザナミを会わせたら・・・」(ミサキ)
「・・・予言は成就し、この世に災厄がもたらされる。・・・でもね、会わなきゃ、成せないこともある。(・・・)あなたにはなにもいってなかったけ。全部話すけど・・・その前に、ここから逃げましょう。ここも見つかっちゃったから。」(オレイユ)


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・葉月との闘争で劣勢に立ったヘイが語る。
「ヨウコという女に聞いた。・・・お前達の本当の目的が・・予言を成就させないことにあると。・・・だが、俺にとってはどうでもいい。・・・俺が、イザナミを殺す。」(ヘイ)


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・やっぱり、ヨウコ殺害の犯人はシズメでした。
「シズメが・・・」(葉月)
「ヨウコの死体をMEスクイーザにかけ、彼女が死ぬ間際の情報を解析した。・・・間違いない。奴はCIAと通じ、我々を裏切った。・・・現に、ゲートの外は完全に包囲され、我々はおろか、パンドラを含む国内外の主要機関はほぼ全て奴らの管理下に置かれた。」(三号機関の課長)


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「ジュライならあの子に会いに行ったよ。」(オレイユの双子のドール)
「あの子?・・・スオウか!」(マオ)
「そう。だってここはゲートだもの。」(オレイユの双子のドール)
「どんな願い事も叶う場所か・・・!」(マオ)


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・インの物理的な肉体に対面するヘイに語りかける三号機関の課長
「抜け殻だ。(・・・)中身は既に覚醒し、ゲートの中心核に向かった。・・・そこにいるのはただの抜け殻だ。遅かったんだよ。我々も、・・そしてお前も。」(三号機関の課長)


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イザナミ破局を回避する核の私設へミサキ達を案内するオレイユ。
「・・・ここは?」(ミサキ)
「パブリチェンコ博士と作った、スーパーコンピュータが置いてあるの。」(オレイユ)

「・・・スオウ!・・・・いや、シオンか?」(マオ)
「そう・・・シオンくんの形をした、ドールですらない肉体。」(オレイユ)


「いったい・・・あなた達は何を?」(ミサキ)
「ドールネットワークにより観測された全世界の記録。MEネットワークにより集められた全人類の記憶。・・・その全てがここにある。」(オレイユ)


「・・・何のために?」(ミサキ)
「なりふり構っていられなかったの。・・・シオンくんの計画に夢をかけた瞬間からね。」(オレイユ)
「・・・計画?」(ミサキ)
「そのために我々はMI6とCIAを騙して、博士とシオンをロシアから連れ出した。・・・・あれは月ではない。あれは人類の生きた証。シオンくんの能力を使ってコピーした、もう一つの・・・」


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「・・・契約者だよ。イザナミに自殺を強いられた。」(シオン)


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・ヘイと三号機関の課長との対話。
「自ら覚醒を遂げた?」(ヘイ)
「そうだ。あの日、我々はイザナミを回収し、すぐさま彼女を抹殺するつもりだった。・・・しかし、その直前、彼女のイザナミとしての反応がとだえた。・・・覚醒した彼女の力を知る我々は、急ぎここに封印した。貴様等がこれを破壊するまでに。彼女が自ら再び眠りについて暮れることを我々は期待した。・・・しかし、奇跡は二度は起こらなかった。・・・貴様をせめるつもりはない。始めから、人類にはどうすることも出来なかったのだ。この星にゲートが誕生した時から。」(三号機関の課長)
「イン・・・・もう、終わりにしよう・・・・」(ヘイ)


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・ヘルズゲートの中心部でジュライの目の前に現れた第二話で死んだはずのオーガスト
「驚かないのか?」(オーガスト
「驚いている。」(ジュライ)
「作戦は中止だ。・・・戻れ。手出しはしないと約束してしまったんだよ。上層部がアメリカとね。」(オーガスト
「あなたとは行かない。・・・僕はスオウと一緒にいるのが好きなんだ。」(ジュライ)
「・・・・・ふん・・・・進化するドールか。いいだろう。好きにするがいい。」(オーガスト



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「何が始まったんだ?」(マオ)
「二人が出会った。・・・・イザナミイザナギ。」(オレイユ)


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「中心角に、未確認の次元が多数発生!・・・ヘルスゲートが、開きます。」(オペレーター)
「中心核に全部隊を派遣!これ以上、ゲート関連において、我が国の失墜を許すな!」(ジョン・スミス)


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・シオンの、姉スオウへの遺言
「・・・・取り引き・・・終了だ。・・・プレゼントだ。僕の作った世界を・・見て・・きてよ。(・・・)パパとママに宜しく。・・・・お姉ちゃん。」(シオン)


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・スオウと黒インの対話。
「シオンに何をしたの?」(スオウ)
「望みを・・・叶えた。」(イン)


「あなたがこうなること、ヘイは知っていたんだね。・・・だからケリをつけると言って、アイツは出ていったんだ。・・・ケリをつけるって事、最初は良く分からなかったけれども、あれはきっと、こうすることだったんだ。・・・僕たちは約束したんだ。お互いのことにケリをつけるって。」(スオウ)


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・スオウの記憶について。
「割れる・・・・流星核が。」(オレイユの双子のドール)


「実験?」(ミサキ)
「ええ、私達の計画には、ひとつだけ問題があった。(・・・)人間をコピーし、MEを使って記憶を植え付けたとしても、それを永く定着させることが出来なかった。・・・流星核を使うまでは。」(オレイユ)
「つまり、ここに来るまでのスオウの旅そのものが、記憶の定着を見極めるための実験だったという訳か?」(マオ)
「ええ。」(オレイユ)
「じゃあ、流星核を失った彼女は?」(ミサキ)
「記憶を失う。」(オレイユ)


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・スオウを看取るヘイ。
「次ぎに行く場所で、お前にこれは必要無い。」(ヘイ)
「次は・・・どこに行くの?・・・僕たちずっと一緒だよね。また、・・・旅を続けるんだよね。」(スオウ)
「ああ・・・そうだ。」(ヘイ)
「嘘だ。・・・」(スオウ)
「嘘じゃない。俺はいつでも、お前のそばにいる。」(ヘイ)


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・スオウを看取ったヘイに、シオンの能力によってコピーされたと思われる「白イン」が語りかける。
「・・・ヘイ」(白イン)
「・・・イン?」(ヘイ)
「まだ、遅くない・・・私を殺して。」(黒イン)


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・オレイユと双子が語る、スオウの結末について。
「はあ・・・どんどん遠ざかっていく。シオンくんの望み通り、あの子はあそこにいるのね?」(スオウ)
「そうだよ。」「ジュライも一緒。」(双子のドール)


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・ミサキによる、エピローグな状況説明のナレーション。
「・・・それから我々は逃げるようにゲートを後にした。東京の街はアメリカを始めとするかっての先進国に制圧され、暗躍を続けた「組織」の時代は完全に幕を閉じた。」
「予言の書に記された、新たに生み出されたものとは?・・・それはこの世界をどんな風に変えてしまうのだろう。」
「決して遠くない未来、起こりうる何かのために、私達は同じ道を選択した。・・・皮肉にも人は、そんな私達を「組織」と呼んだ。」
「その後、彼の消息は聞かない。・・・それでも、私は彼が生きていると信じている。」