■カイバ03クロニコのながぐつs横山彰利湯浅政明c&d横山彰利g伊東伸高

◆この回も素晴らしい。憎しみで満ちた心の襞にかくれ圧縮されていた、「古き良き記憶」の爆発的な奔流!
目くるめく映像とリリカルな音楽で素晴らしい酩酊感。その後に訪れる絶望。


◆話の構図自体は、古典的な「継子イジメ」けれども、しいたげられ利用される健気な女の子クロニコに焦点を当てるのではなく、頑なになっていた継母の心がほぐれる瞬間、親愛の情に満ちていた幸福な過去を思い出した一瞬を捉えたビジュアルをメインに据えるのが、実に意地悪で、しかし胸に迫る。


◇「取り返しの付かない事をしてしまった」という不意の認識が、おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかで幸福な回想のあとに訪れるとき、継母が流す悔悟の涙と絶望のうめき。全く持ってシビレました。素晴らしい。
そして、私達は、ひたすら「語らない傍観者」である主人公カイバと共に、「クロニコという女の子の物語」の絶対的な終点に置き去りにされるのです。


◆湯浅監督は、私、不勉強にもこのシリーズで初めて認識したのだけど、この何事もやり尽くされて平準化していく時代にあって、恐るべき映像的、演出的な独創性の突出。びっくりした。


WIKIをみても、ピンと来る作品がない・・・。ああっ、WOWOWでやっていたケモノヅメは、一回目を録り損なってそれっきりだった!、何という損失。


◆◆以下メモ◆◆
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・ニュースのアナウンサー
「昨夜、この惑星トトで起きた政府高官用記憶タンク爆破事件についてです。総括局は近年惑星ララで頻発して起きている記憶タンク爆破事件と同一の組織による犯行と断定しました。声明を発表したイッソー団は・・・・」


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・うう、クロニコちゃん、健気すぎる。
「私、・・体が売れることになったの。・・高く売れるのよ!・・体が売れるってすごいことなの!何でも手に入る贅沢な階級の人達が私の体を欲しがってくれてる。・・バイオや人工ではなかなか作れない体ってことよ。自慢していいでしょ?・・・それに高いお金で売れれば、家が助かるし・・・・。」


・記憶を抜かれて、記憶を捨てられて・・・


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・クロニコを騙して売り払った継母の、硬く閉ざされた言葉。
「あーあ、ホントっ、セイセイした!・・やっとこれでまともに暮らせるわ!なんであたしがメンドウみなきゃ、いけないの?元々は姉さんの子よ!・・もうこれ以上は無理!幾ら私でも自分の子を犠牲にしてまで面倒なんてみてられないわ!」
「私は十分すぎるほど面倒は見たわ。・・・何も悪くない・・・・」


・継母の「記憶の本棚」が、圧縮されていたファイルが解凍されていくように徐々に、本で満ちていく演出はツボでした。


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・継母の実子の双子?彼らはきっと、お金が無くて、「ピアノが弾けない」テキトーな体しかあたえられなかったんじゃないかしら。何というディストピア。継母の暗い動機はこの辺りにあるのかな。
「お母さん、どうして僕たちはピアノが弾けないの?」(実子その1)
「そうだよ、クロニコだけずるいよう」(実子その2)