■神霊狩/GHOST HOUND 16Hopeful Monster-希望的な怪物-s小中千昭c&d安藤貴史g田畑昭澤田穣治

◆大神信くん、「自分を捨てた」お母さんに構って欲しくて、ナイフまで持ち出して暴れております。


◇父親の死の真相、それが古森太郎くんの姉の死と密接に結びついているのではないかという大神くんの「固着した思いこみ」を「(真相を知っているであろう)母親に突きつける」以前に、絶対そーゆー甘えんぼさんの属性があると思えて非常に微笑ましい・・・と思ってしまった。
すぐ拗ねて逃げ出しちゃうし、道ばたで泣き崩れちゃったりするしさ。不良ぶっているのとのギャップが実に萌える。。。。


◆ところで、この回は、この他にも見どころ多かった。
まずは、暗がりで、鳳センセイの足をさすりながら、極秘の「大日本バイオのやっているSF的な事業」をぺらぺらしゃべってしまう「中島くんのお父さん」のしょーもなさに大爆笑ですよ。
それを「魂抜け」して見ている中島くんって構図がとっても心憎い。息子の胸中の情けなさたるや!あー、身悶えするぜ。


◇あと、信のお母さんの精神的に退廃して病的なカンジの描写が、とってもヨカッタ。基本の無感情な話しぶりがまず素晴らしい。
そして、夜中に太郎の寝所に突如尋ねてくるのもどーかしているが、その後の「信に父が自殺した本当の理由を教えてあげて欲しい」と述べる太郎に対する、感情の裂け目が露頭したみたいな表情の恐いこと!実にチャーミングでした。


これで障子を彼女がそっと閉めるシーンで、(太郎からみて)充血した目玉が暗闇に浮かび上がる・・・みたいな演出があればサイコーだったんだけどなあ。


◆総じて、なかなか物語的な動きのある回で面白かったけど、やっぱりエンターテイメントにはならないんだよなあ・・・というのが悩み。


◆◆以下メモ◆◆
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・いつも大神くんの母親と一緒にいる男は、旧家の跡取りの、物理を勉強しすぎて厭世観にとらわれちゃった高等遊民だと太郎くんに自己紹介。
・しかも、彼が第13話に登場した「抽象界」の「スナーク」だと、相互にあっさり直感してしまいました。
「けど、僕は、この世界そのものが虚像なんじゃないかっていう考えに取り憑かれているんだ。・・・抽象界にいる「スナーク」こそ、僕の本質であって、この肉体を持つ僕の方が、ホログラムなんだ・・・ってね。」


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・中島くんのおとーさんが、鳳センセイの靴をうっとりと実に嬉しげにさするそばから、設定的に重要なことが語られます。
「君が開発している人工生命の外部脳は、このチャンバーで育っている原初的バイオイドのものなんですよ。」(中島父)
「怪物・・・僕がデザインしているバイオイドは、極力、生物としての属性をはぎ取るために尽力しているんだよ。・・・なぜだか想像できないかなあ?」(中島父)


「脳機能が専門の君にとって、脳の移植には興味あるだろ?このバイオイドは脳は無理だが、ヒトの臓器を移植可能な段階までに生育させるためだけの器官なんだ。」(中島父)


「iPS細胞か・・・僕の発想は根本的に違う。人間の組織そのものを人工生体臓器の元に使う限り、その元となった人体そのものの問題とは切り分けられない。」(中島父)
「(ここにいるのは生物ですらないのですね?と問われて)免疫抵抗をなくすために、実際にはレシピエントのDNAが元にはなる。しかし、このバイオイドは純粋に生化学によって生み出された人工有機体だ。臓器を生育させる必要最小限の脳機能があればいい。個体にそれぞれ脳を持つ必要はないんだ。」(中島父)


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・中島くんは、「魂抜け」して大日本バイオに侵入し、父親の痴態を目撃したあげく、「バイオイド」に関係があるっぽい「神霊」に襲われる。


・その際、彼の面前に浮かび上がる文字。
・これは、緑髪の研究者が記述中の文言でした。彼の脳内に中島くんがアクセスしているってことなのかしら。
「バイオイドを司るオートマトンは、独自な進化をしている様に観察されるのである。
一つのとじた環境に於いて、こうした創発が起こることは予想されるべきものであった。これが更に全体の知性を高めるものとなるならば、彼らは生物学でいうところの、「希望的な怪物」なのかもしれない。」


「・・であるからして、バイオイドが用いる言語は極めて単純な物に過ぎず、それらが彼らにさらなる進化を抑止しているものと考えられる。言語的な刺激を与える事こそが、「希望的な怪物」として有望な彼らにとってしてやるべき事だと私は考えている。」