■神霊狩/GHOST HOUND 08Revolution of Limbic System-脳の扁桃体を中心とする記憶・情動を司る大脳辺縁系、その革命-s小中千昭c山田勝久d安藤貴史g松浦仁美

◇2話遅れ。
◆この回は、ラスト、薄暮も遅い時間、心細い夜道で光に包まれビジョンを見る「トリップ体験」をし、なおかつ空に浮かぶ光の円盤を、畏れに我を失いながら見つめ、タクシーの後部座席に体をうずめるカウンセラーの平田先生のシークエンスがとってもヨカッタ。
心細さと、受容出来ない体験への拒絶反応がよーく出ていました。


◇この回のかなりの部分を占める、古森くん体外離脱体験や神霊の目撃を全て脳内の化学現象に還元して説明する平田先生の独白に対するカウンター演出として、かなり有効に機能していたんじゃないでしょうか。演出的な効果として結構爆発力があった。


◇しかし、古森くんがどこまで平田先生に自分の体験を話しているかが良く分からないよ。これまでは、自分の不思議体験を言いよどんだり、「魂抜け」や「神霊」については話していないのかと思っていたら、突然この回のような話がくる。
うーん、話している内容を明確にしないのは仕掛けなのかしら。


◆ところで、平田先生の人間味の感じられ無いキャラクター造形や表面的な態度の四角四面さは、現実の(ある種の)心理カウンセラーっぽさをすごくよく表現しているんじゃないかなあ。
私がかって接した心理カウンセラー(バイトで横で見ていたり、ついでにカウンセリング対象(笑)になってみたり)って、人間的に欠落のあるヒトがものすごく多かったのですよ。
安定している風を装っているけれども、なにがしかのコンプレックスに突き動かされているみたいなヒトビト。あんたが大丈夫かみたいな不安定感!(大学医学部系のヒトビトに特にこの傾向が強かった。文系心理学系のヒトもヘンなひとが多かったけどもそれ以上にヤバイ感じがしたよ。・・・・あれ?人間的に何かがオカシイ私が言うのもヘンか。ごめん。)


◆◆以下メモ◆◆
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・古森くんを「調査対象」と突き放す平田先生の独白。脳内現象の科学的な説明。古森くんに拘るのは純粋に知的好奇心みたいに聞こえる。
「古森太郎のカウンセリングを初めて2ヶ月が経過。PTSDの症状は軽減しつつあるように見受けられる。幼児期に拉致監禁されるという特異な経験をした少年の脳の中には、いったいどんな変化が起きているのか。・・その答えは未だ見つからない。」
「CT、MRIでの所見に特異な点は見あたらなかった。いずれ、MEGのデータも取ってみようと思う。OBE、対外離脱体験を頻繁に経験していると調査対象は報告している。・・これが幼児期の体験と関係があるのかについては、未だ結論が出せない。OBEは恐怖を再生する場合もあるようだが、調査対象は基本的にその体験を楽しんでいるように見受けられる。」
「調査対象は、誘拐事件の記憶の多くを失っている。これは、扁桃体が受けた強い恐怖の情動によってLTP、長期記憶の回路を閉ざすというセオリー通りの作用をしているからである。」
扁桃体は恐怖と共に、憎しみという情動を生成する器官でもある。短期記憶、フラッシュメモリーを作り出す海馬と、扁桃体が隣接している理由は単純である。・・動物は自分のみに危険なモノを強く記憶していなければ、生存出来ないからだ。猿の扁桃体を除去すると、蛇を怖がらなくなる実験からも明らかだ。」
「人間は不安や恐怖、憎しみをある程度までは理性で押さえることが出来るようになっている。・・・しかし、理屈や理性では制御不可な情動、・・・特に恐怖や憎しみは未だ人間の文化や社会をゆがめ続けているのである。」
扁桃体そのものを無くしてしまえば、カプグラシンドロームといった障害を引き起こしてしまうが、扁桃体、海馬を中心とするリンビックシステムの機能そのものを変えることが出来るならば・・・ヒトは今よりもよりよい文化や、社会を築けるようになるのではないだろうか。・・・という私の想像は未だ留まらない。」
「・・・今回の調査対象は、私の仮説を立証しえる被験者なのである。」


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・マサユキは、高所恐怖症を克服したと古森太郎くんに語るが、自分のしたことは消えないんだよなとつぶやく。


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・椅子に赤いランドセルをかけてあったり、生前そのままに残してあるっぽい古森くんの姉の部屋に、古森くんのお母さんの狂気を感じるなあ。


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・矢崎もといさんは当選したみたい。


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・父親のことを聞いて回る大神くん。この回は都の父親に聞く。亡くなった頃のことは知らないと述べる都の父親に詰め寄る。
「なんか隠してねえか」(大神くん)
「町で妙な噂があったのは、まあ知っとるよ。・・・けどこういう田舎の狭い社会じゃ、そういう噂、たてられるモノなのよ。・・・古森の姉弟が誘拐された事件に大神がなにか関係しているなんてありえんやろう。」(都の父)


「オヤジとお袋は・・・・高校の時から付き合っていたのか」(大神くん)
「いや・・・ううん、・・・まあ、そうだ。君のお母さんは久間田におられるそうだが・・・」(都の父)
・知らねえよそんなこと、どうでもいいっと急に興奮しだす大神くん。母親への心的複合は重篤のようです。


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・魂抜けの姿で、都ちゃんと対話する古森くん。
「どうして、都ちゃん、僕のことがみえると?」(古森くん)
「うち・・なんかのこつば、頭にうかぶるときにゃ、そいが光ん色でみえると。」(都)
「それっち、オーラのごたるとね?」(古森くん)
「別に生きものちゃ限らんと、ただ何かば感じるとそいがいろんな色で見分けられると。」(都)
「ふーん、かわっちょんね。」(古森くん)
「それに、・・・・時々、うちんなかに、違う誰かが入ってくるたい。」(都)


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・幽界(かくりよ)であった生物を図鑑で見つける太郎。マサユキと対話する。
「へえーっ、じゃあ、あれか。神霊ってのは絶滅した生きもののゴーストってことかねえ。」
「まあ、そういうのもいるかも知れねえけど。じゃあ、ほら、アイツ(初の「魂抜け」で目撃した腹に顔がある梟みたいな化け物)は?あんなの地球上にいたか?


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・平田先生による、古森くんのカウンセリング風景。
「ばってん、さっきもゆうたけど、魂抜けっちゅうか、体脱すればするほど、おねえちゃんとかあん時の夢ば、見なくなってきとっと。」(古森くん)
「それは古森くんの恐怖が克服されてきたんじゃないんですか」(平田先生)
「ばってんが・・・でも、お姉ちゃんがあん時なんば言うとっととか、もう絶対に思いだせんこつなるげな。・・・僕、いやばい。」(古森くん)


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・ラストシークエンス。冒頭に呼応する平田先生の再度の独白。古森くんの語る内容を合理的に説明しようとした矢先・・・・・・
「全ては脳の中の現象で説明がつく。調査対象が体脱したときに見たという、ゴーストの姿は、全て図鑑で事前にみて記憶していたものばかりだった。」
「それにしても、調査対象はまだ心理的抑圧が完全に消えたわけではない。母親のことなど、以前ストレスは抱えている。私はそれを極力少なくする助けをし、そのうえで調査対象をあらためて被験者として・・・・」