■神霊狩/GHOST HOUND 13For the Snark was a Boojum,you see.-そう、そのスナークはプージャムだった。-s小中千昭c&d川崎逸郎d助手徐恵眞g小谷杏子

◇1話遅れ。
◆「魂抜け」した古森太郎は、「書き割りの背景」を片づけた舞台のような空間で、無数に存在する「世界への窓」を幻視する。
・・・・おお、このシリーズ初の「メタ世界」的展開!こーゆーの大好き。


◇たくさんの仄めかしに埋没して、今まで物語の方向性が全く見えなかったけれども、唐突に物語の仕掛けの核心をついてきたんではなかろーか。
これは、この物語で設定されている「一番上層の世界」からの、世界の現象の眺めじゃないかしら。


◆じゃあ、この「書き割り世界」は何かといえば、この物語で言う「幽界(かくりよ)」が、ヒトとヒトとのイメージの結節点、ネットワーク化された脳と脳の間に存在する古今のイメージの集積の上に成り立っているものであるということを演出しているのではなかろーか。


◇太郎はその「脳と脳とのネットワーク」の狭間に自分の意識を漂わせていて、窓のように見える無数の世界は、あまたのヒトの脳のみているイメージであり、認識している現実であり、過去であり夢であり、つまりは、そこではきっと脳の持ち主の主観的な一人称の世界が展開されているのではないかな。


加えて、幽界にはきっと、この世を去った人間のイメージの残滓的なものが次第に形を崩しながらも残っていく・・・・などと、妄想してみました。


◆劇中の抽象空間で太郎の耳元への囁き
「見ようとしなければ、何も存在しないんだよ。」
は、ヒトの認識についての、異形の物語を語ろうといている脚本の宣言のようにも聞こえて、非常に今後の展開に期待しちゃいました。


◆ところで、抽象空間で太郎が出会う自称「スナーク」は、ルイス・キャロルの「スナーク狩り」の引用ですね。
「スナークは・・ブージャムさ!」
というセリフはそのまんま。


◇私もキーワード的に知っているだけだから、この物語の内容との関連は確信できないのだけど、
「訳が分からないヤツって意味さ。」
というセリフそのまんま、訳の分からない「抽象空間」を衒学的に表現しているのだと理解して置きました。


◆◆以下メモ◆◆
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◇正しいかどーか分からないがとりあえず、Aパートの「幽界〜抽象世界」を合理化しないとキモチワルイので、以下ワタシの勝手な解釈。
(1)冒頭、太郎は、母や父や都の父などいろんなひとの脳内イメージを覗いて、そのそばに寄り添っているような感触に襲われている。
(2)最後には、何度も見ている自分自身の脅迫観念、姉がさらわれる日のイメージにたどり着く。
(3)そして、自分自身の脅迫観念のトラウマの具象化したものである黒い巨人に飛び込むことで、古森くんは自分自身と出会い、世界の裂け目に飛び込むことになる。


(4)ここで、古森くんの自由な跳躍を妨げる役回りとして、平田先生が登場してくるのが面白い。平田先生は、きっと「理性」「常識」「社会規範」の象徴。


(5)「理性」のくびきを逃れて、理性の基盤である「生」を突き破り、まず始めに出会うのは、「生」の先に存在している「死」、死者の残していったイメージ。「亀岩肺病院」での死者との対話。
「君には未来しか・・ないのだよ。」
「わしらはもう生きてはいない。ここで悠久の時を穏やかに過ごしてゆく。」


(6)「死」は、やがて「無」に繋がっていく。「無」の地点から世界を振り返ったのが、きっと「抽象空間」。
そこは、「認識する主体」が基本的に存在しない世界だけど、太郎という主体が介入することで、「無」から振り返った「生」、すなわち「数多の世界の窓」が見える。


「見ようとしなければ、何も存在しないんだよ。」
太郎という主体、太郎という視点が存在しなければ、「抽象空間」には何も存在しない。


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・太郎が、「抽象空間」で出会った自称「スナーク」と太郎の対話。速水奨さんの実にとぼけたカンジの語り口が良い。
「ここにいるとね。ヒトの姿に留まる必要を感じないものだからね。」
「ここがどこかなんて意味のないことだと思うよ。ご覧の通り、ここは抽象的な空間だ。僕は「抽象界」と勝手に読んでいるけれどね。」
「えっ、僕が死んでるって?いやあ、僕の肉体はちゃんと生きているよ。」


・名前を教えてくれないかという太郎に
「うーん、そうだなあ。・・・僕はスナークだ。」(スナーク)
「スナーク?スナークっちゃなんね?」(太郎)
「スナークは・・ブージャムさ!」(スナーク)
「わけがわからない。」(太郎)
「そっ!訳が分からないヤツって意味さ。」(スナーク)


「ここは高度に抽象化された世界だ。君が長くいていい場所じゃない。」(スナーク)
「ばってんが、どげんやってかえったらよかと?」(太郎)
「戻りたいところを思えば、いいんじゃないかな。」(スナーク)


・この「スナーク」の実体は誰なんでしょう、そのうち登場するのだろーか。

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・前回、都が取り憑かれて述べた言葉(「我は、マガゴトもヒトコト。ヨゴトもヒトコト。・・コトサカのカミ。」)を太郎から聞き、驚愕する都の父。


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・ラスト、亀岩神社の石段の途中で待ち受ける、大神信くんの祖母である教祖の、側近のおばさんの不気味さは!