■ブラックラグーンBLACK LAGOON16GeenBack Jane_s片淵須直c中村亮介片淵須直d川村賢一gKim.Ki Doo

偽札製作者争奪戦編その1。
殺して、運が悪ければ殺されて、そういう日常があたりまえ。そんな日常にも、社会が動いていく為の危うい均衡があり、その暗黙のルールに従っていれば、たぶん滅多なことじゃ殺されることがない。
だけど、自分自身の安全が脅かされた時や、ルールの秩序を外れた行動には制裁を加えるのは当然。そんな奴らは、殺されてあたりまえだ。
そして、そんな世界では、他人の死を悼む感情はとっくに麻痺し、相手を追いつめて死という奈落へ突き落とす刹那さえ、欠かさず気の利いた警句と、しくじった奴らを笑う乾いたユーモアが浮上する。
自分自身の死すら即物的な、からっからに乾いた世界。


そんな張りつめた背景世界で、人の生き死にに関わる、(日常に沈む凡夫にはとても笑い過ごすことが出来ない)ギリギリのユーモアを描くのがタランティーノさんなどの作品だったとおもうのだけど、ブラックラグーンという作品は、まさにこの末裔なんだろうな。


そんなことを思ったのも、この回は、暴力教会での「暑くて、むかついているところに、流れ弾が飛んできた」ことを理由とするレヴィとエダの、ユーモアを交えた一方的な銃撃戦(そんな理由で胸うたれて倒れている下っ端がいたりする・・・)や、妙に笑いを誘うキャラクターが立った殺し屋たちの(次回での)バトルロワイヤルを予想させる後半の展開を見たから。
ユーモアすらたたえて、凄みのきいた凶暴な顔で、自分の気に入らない奴らを殺そうとするのが我らのヒロインなのだと思うと、(いままでもそうだったけど、あらためて)愕然とし、このゲームとしての殺し合いの世界を果たして楽しんでみていいものか、しばし途方に暮れたりした。
まあ、結局、アウトロー物語に憧れる私のような凡人は、そのセリフの格好良さとか、構図とか、状況とかを楽しんでみちゃうんですけれどもね。


さて、この回は、マフィアに偽札制作として雇われた、「偽札製造オタク」のインド系の女の子(・・・まあ、男だったり、年齢を重ねた方だったりしたらつまらないことは確かなんだけど。)が、マフィアの期限どおりにオーダーをこなすことが出来ず、助手の手を打ち抜かれ、48時間以内に完成させないと生命も危ういという状況になって逃げ出して・・・・・と言う話。
ロアナプラではよそ者の彼女は、最初に暴力教会へ逃げ込もうとする。そんなの助けても一文も特にならないと思うエダと、居合わせたレヴィは冷たくあしらうが、追ってきたマフィアが発砲して頭に血が上って・・・と言う展開。


暴力教会では、エダどころか、新任の神父みならいもマシンガンを抱え、シスターの長たる眼帯の老シスターが年の功で止めにはいるのかと思いきや、巨大な拳銃ををぶっぱなし火に油を注ぐ。
やっぱりさすがです。作画も構図も高レベルを保っていて、話もおもしろい。


◆◆以下メモ◆◆
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・冒頭、偽札作り遅延をマフィアに責められる偽札作りのリーダのお嬢さん。
「我が儘をいって困らすなよ・・お嬢ちゃん。それは、確かに出来がいいに越したことはない。・・だがねぇ、どんなモノにもタイムリミットがある。・・サッカーにも、野球にも、株取引にも、ファックにもだ・・・・」
造幣局の人間を騙したいなんていっているわけじゃない。・・そういっているのは、・・この部屋の中じゃあんたとパソコン屋の相棒だけだ・・・。」
「それにあんたは、最初に提示した予算を・・・既に20万ドルオーバーし・・・・約束には、もう、二ヶ月も前になる。」
「・・・オレはそんなことは思っちゃ居ないんだが、幹部の何人かは・・・そう、まるで俺たちの脳みそが、は虫類並であるかのように、上手くカモロウとしている女。・・・・あんたがそうなのかもと・・・ね。」
「もちろん、おりゃ、そんなことおもっちゃないさ。もしそれが、・・本当なら悲しいことに、オレはあんたを粉みじんにしてしまうかも知れないからな。」
「ふん・・オレが女に手を挙げるような男に見えるか?・・・見えないだろう?・・ははは、オレにはたいしたことは出来ないよ。」
といって、助手の手を打ち抜く。(最初、絵的には頭をぶっ飛ばしたのかと思ったら、後にインド系のお嬢さんがそう語ってます)


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・監視体制から逃げ出したインド嬢。暴力教会に逃げ込もうとする。扉を叩いていると、エダが扉を開けて、もんどり打って倒れたインド嬢はパンツ丸出し。
「ここは教会でしょ?」
「だから?神は留守だよ。休暇とってベガスにいっている」
・ここで助けろ助けないという問答をのらりくらりしているところで、マフィアが教会の扉に穴を開け、破片がレヴィのグラスを壊して、一気にヒートアップ。銃撃戦。


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・銃撃戦からマフィア一行が退却したあと、教会の中で、老シスターに何をしくじって追われているのかと問われて。
「誰もシクってなんかないわ。ただ連中にこらえ性がなかっただけよ。失礼ね。・・いいかしら?私がこの仕事を引き受けたのは、完璧な偽札を作れるっていう話だったからよ。」
・この強気のキャラクターがいいかも。


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・インド嬢が陳述する。
「期限が大幅にオーバーしていたのよ。でも、私には目標がある以上、譲れはしなかった。・・・そしたら奴ら、一緒にドイツから来たオペレータの手を打ちやがったの。彼はネット上でメンバーが作ったデータを管理する役目だったのよ。ココまでの苦労が水の泡だってのに!・・わかってないのよ!・・・そんなわけで嫌気がさした私は野生ゴリラの群れからさよならしたってわけ。・・これで全部。」
「そりゃお前がわるい。」(レヴィ)
「うーん、まあ、そうだよな。決まりは決まりだ。」(エダ)
「なによ!ええ、理解なんてされないでしょうよ。朝から晩まで銃いじくっているか、NYPDブルー見て、暇つぶしているような人間にはね!」
「オプラウィンフリーショーを見ていると言ても信じねえだろうよ。・・・正解は、銃声の後で・・・だ。」


・「NYPDブルー」は、1993年から10年以上続くアメリカの刑事ドラマだそうです。また「オプラ ・ウィンフリー・ショー」とは、オプラ ・ウィンフリーと言う人が司会のやはり米国で人気のTVトークショーらしい。うーん、この両者の違いがイマイチわからないなあ。視聴者層に明瞭な階層格差があるのでしょーか。


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・久々の金づると見た老シスターはエダに指示を下すのでした。
「上々だ。シスターエダ。金のなる木さ。見失わないように気を配りな!」
「YESシスター」