■ソ・ラ・ノ・ヲ・ト03隊ノ一日・梨旺走ルs吉野弘幸c&d福島利規g上田峰子

◆(作中はもちろん)現実の世界でも作曲者不詳の賛美歌、アメイジング・グレイスの曲が効果的に使われてます。ことにこの曲を主人公の幼少の回想とかぶせたところがものすごく良かった。


◇トランペットによるアメイジング・グレイスとともに、世界を閉ざした灰色の雨が上がり、太陽が少しずつ廃墟を照らし、雲間の青空、草むら、風、大地、奏でる人・・・と視点が移っていくその神話的一瞬を、それこそタイトルどおり、神の「恩寵」的な「何か」として演出したシークエンスが素晴らしすぎます。


文明は退潮した、しかしそれでも世界は美しいんだ・・・的な叙情的なトーンが個人的なツボに入りましたよう。


◆しかも、これが、ちっぽけな力のない人間の象徴として、この回、重ねて強調して描かれる主人公の、なおいっそう自分をそう思いこもうとする傾向を持つ可愛らしい独白と対比されて、よほど印象深くなってます。
この作品、やっぱり「文明滅亡後の退潮しつつある世界」の描写の厚みが素晴らしい。


◆さらに、この曲は、壊れて役に立たない過去の文明の発掘兵器である歩行戦車にも記録されています。


◇起動させられアンプとして利用される役立たずの発掘兵器、それが奏でる起源不明の曲、アメイジング・グレイス・・・・という超燃える付置。
こうくると、私の脳髄の中では、「ちっぽけな人間のごく個人的な、小さくても必死の営みがどんな苦しい時代にもあったのだ・・・」的な切ないイメージが自動的に立ちあがってくるのでした。特に、アメイジング・グレイスだもんなあ、・・・・・やられた。


◇ところで、この曲にはリオさんも何やらこだわりがあるようであり、今後の物語展開にきっと関わってくるハズ。
「・・・聞いたのね?あの曲。(・・・)もう二度と聞かないって言っていたのに。」(隊長)
「何だか無性に・・・な。」(リオ)


◆・・・・だけど!そうしてみると、個人的には、上官と下士官の、まるで学校の先輩後輩のような幼い感情の交流が激しく浮いて感じられてしまった。女の子5人だけで構成される「軍隊」とはいったい何ものなのか。そこでの女学校の寮生活のような日常は一体何なのか。


◇(ワタシみたいなひねくれ者を除く)フツーの視聴者への訴求点だと、一面は思うのだけど、・・・だけどさ、この回のような滅び行く世界の存在感を画面と音を駆使して見せてくれている様子を思うと、きちっと物語的な意味をつけてくれると思うな。


◇とは言っても、吸引力のある画面構成と丁寧で印象的な女の子達の仕草演出もレベルがとても高くて、そんな文句を言うワタシはバチ当たりとしか言いようがないですね。ごめん。



◆◆以下メモ◆◆
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「トレースに?」
「ええ、ようやく補給物資の連絡が来たの。・・私とクレハちゃんで受領に行ってくるわ。・・・弾薬も医薬品も日用雑貨も、いろいろ底をついていたでしょう?」(隊長)


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「はい、お茶請け」(隊長)
「・・・ツジウラ煎餅か!」(リオ)
「相変わらず嫌いなのね。・・・あそこの教会の子達に罪はないでしょう?」(隊長)
「ふん、役立たずの迷信をかざして、金をせびるやり口は、どこでも一緒だ!」(リオ)