■ブラックラグーンBLACK LAGOON24The Gunslingers__s&c&d片淵須直d補佐川村賢一g日向正樹朝来昭子室井ふみえ奥田佳子浦谷千恵井上美紀筱 雅律総g筱雅律アクションエフェクトgそえたかずひろ香月邦夫

日本編、5話構成の最後。そして、シリーズ最終回。
◇非常に苦く、容赦ない結末。しかし、話的にも、アクション的にも素晴らしく面白かった。
そもそも、テーマ的には、ダークで超わたし好みだし、特にBパートのレヴィvs銀次さんの、二丁拳銃vs日本刀とゆー、常軌を逸した闘争を昂奮せずに見ていられましょうか。


ただし、雪緒さんと銀次さんのキャラクター造形が、(多分そのジャンルを山ほど見れば感想は変わるんだろうなとは思うのだけど)わたしには免疫のない、任侠もののフォーマットに徹底的に沿って作られている為(この5話構成の最後に近づくにつれ超高濃度に・・・・)、若干興趣が殺がれた気もした。


◇さて、結局、「歩く死人」たちの、死へのモーメントの強烈さの前に、立ちつくすロック。
己の主義主張、己のプライド、己の生の実感。それらを死を賭して獲得し守り、己の生存証明とすることをまったく自然の摂理として受け止めているヒトビト。
そんな漆黒の闇の世界では、死は散歩に出かけるのと等価だ。
レヴィと銀次さんは、己の技量のプライドをかけ、ギリギリの生の実感を味わい尽くして殺しあうし、レヴィは彼を倒しても、感傷よりも間一髪で生に踏みとどまった生の充実感が勝っている。


雪緒もまた、銀次さんという自分の存在目的である「ワシミネ組壊滅の復讐」を成し遂げるのに不可欠な人間が、目の前で死のモーメントに逆らえずに不帰の人となり、目的が果たせないことが顕わになると、(彼への愛情ゆえの喪失感もあるのでしょうが)、自分のプライドの原理に従って、歩道をまたぐように、死の世界へと歩みを進めるのでした。


◇「夕闇に佇む」ロックは、そんな彼等をだまって見つめることしかできない。だけど、この5話構成のシリーズでは、ロックはたぶん成長したのだろう。
いままでは、そんな「歩く死人」の生きる実感、死へ魅了される様子を理解できずにいた。それが、ロアナプラという悪党の住まう異世界でのロックの「浮いたカンジ」につながっていたんだろうな。
世間の常識的な倫理、常識的な道徳の代表としか見えなかったロックが、悪徳の街で生存の糧を得ている。人物構図的にも座りがわるいし、この物語で活躍するのは難しい。


しかし、前回、バラライカという「死そのもの」に、生存を脅かされた果てに浮かび上がってきた、吹き上がるような、明かな「死へのモーメント」を孕んだ己の衝動を理解したとき、ロックの精神の質的変換がおきたんじゃないでしょうか。


いまやロックは、彼等「歩く死人」の生き方を理解するようになった。しかし、それを実体験で理解したうえで、彼は、「死のモーメント」に支配される生き方を選ばない。あくまで生者の世界でもない、死者の世界でもない、黄昏の世界で、彼等の死に様をしっかりと見つめていこう・・・・そんなスタンスがこの物語のラストのロックなのではないかしら。
「このロアナプラっていう街は、銃の力と酒の力。野蛮な力で全てを吹き飛ばしてしまえるステキな場所だ。・・・そんなに悪いもんじゃない。・・・そう思い始めて居るんだ。」(ベニー)
「ああ、悪くない。オレはここで夕闇の中から、起こること全てを見届けようと思う。」(ロック)



◇ところで、これが第二シリーズの最終回なのでしょうか。第一シリーズともども、低層に流れる主旋律が「死」であり、乾いた苦い結末が頻出することもあって、テーマ的にはわたしの大好物で堪能しました。
重厚で押さえた雰囲気の演出や、派手でかっちょいいガンアクションなど演出的、作画的にも、傑出していたと思います。
個人的には、このシリーズで、今まで関心がなかったガンアクションの魅力と、悪漢ものの魅力に開眼したのが収穫かも。


(原作の力もあるのかも知れないけれども)全話の脚本を書き、かなりの量のコンテと演出もこなした片淵監督は、初めて認識した方ですが、素晴らしい力量。とりあえず、アリーテ姫をみてみよう。
是非このスタッフで、また続編がみたいなー


◆◆以下メモ◆◆
===========================
・コウサ会事務所の鯉の泳ぐ池に面したガラス張りの縁側でロックとバラライカの対話。
「ひとつ・・・ひつとだけ言わせてください。もし、このまま全てが収まるのなら、その前に、・・・ワシミネ組を徹底的に叩いて欲しい。・・それも、組の存続が不可能になるほど。枯れ木も残らないほど徹底的に。・・それのみが、彼女を、解放する。」
「な・る・ほ・ど。・・・・・・なるほど、なるほど。確かに。・・この状況下で姫君を正常な世界に帰還させる唯一の方法だ。・・・ふふん・・・悪党だな、ロック。正しい判断だ。・・いい悪党になるぞ、お前は。」


===========================
・気まぐれなバラライカは、ロックの希望を汲んで、ワシミネ組壊滅の最後のとどめになる、コウサ会がホテルモスクワと結ぶことによるの繁栄への道をぶち壊す。すなわち、提携会見の徹底的な破棄、みなごろし。
バラライカの組長の用心棒の拳銃についての難癖の付け方がすごくヨカッタ。
「や・め・だ。こんなひどい銃を恥ずかしげもなくもっている連中と・・・・共闘などできん。」


・組長を始め皆殺しにした後。
「おやあ・・・なかなか悪くないなこの銃は。」


「ロック、これはお前の銃だ。記念に持って行くか?」
「銃は好きじゃないし、持ちなれないモノは持たない主義だ。ただ・・・この引き金を引いたことを、忘れたりしませんよ。・・・これはお返しします。」
ふんっと鼻で笑い、銃を錦鯉の泳ぐいけに無造作に放り投げるバラライカ


===========================
・虐殺のコウサ会事務所を後にするバラライカ。日本の警官隊が立ちふさがる。
「迎えが来る!道をあけろ!文民警官ども!」


「わめくくな!・・・用があるのはわれわれだろう?雑魚如きに気を取られるな。」
「・・・・それではごきげんよう、ミスター民警。」
「御用がおありの際は、ロシア連邦大使館一等書記官ブイエヌ・ワジリーノフまで、・・・いつでもお気軽に。」


===========================
「くっそ、しんじられねえ!ハイスクールの女学生にまで拉致られやがった!」


===========================
・レヴィvs銀次。
「お嬢を・・・連れてくるんじゃなかったな。・・・おれたちゃあ、とどのつまりみんなこうだ。・・どこまで行ってもまともじゃねえ。・・・俺たちみたいのしか、いちゃあ行けねぇ場所だ。そう言う場所だ。・・・そうはおもわねぇか。姉さん・・・」


===========================
・決着がついて。
「おそい!おそかったぜぇ・・・・あたしらの行き着く果てなんて、泥の棺桶だけだってのによ。・・・・お前、生きようとしたな。」
「・・しくじった・・・・・」


===========================
・雪緒さんとロックの最後の対話。
「どうして・・・こんなことになっちゃったんでしょうね。」
「キミのいびつさは、こうあればと願う自分の嘘で、自分を騙し斬れないほど、・・・頭が良すぎたことだ。」
「11人・・・さいころを投げたあの夜以来、わたしの命で殺めてしまった人の数です。」
「俺たちの街には、そんな人間ばかりが吹きだまって生きている。」
「醒めてしまった今となっては、遠すぎるんです・・・その土地は。・・・・苦労をおかけいたしました。これにて、一切の騒動を落着を。」


===========================
・エピローグ
「このロアナプラっていう街は、銃の力と酒の力。野蛮な力で全てを吹き飛ばしてしまえるステキな場所だ。・・・そんなに悪いもんじゃない。・・・そう思い始めて居るんだ。」(ベニー)
「ああ、悪くない。オレはここで夕闇の中から、起こること全てを見届けようと思う。」(ロック)
「じゃ、繰り出そうじゃないか。僕等の街に。」(ベニー)


===========================
・レヴィ
「あたしら悪党は、そう簡単には、死なねぇんだよ。」