■N・H・Kにようこそ!24N・H・Kにようこそ!s西園悟c山本裕介d山本裕介野田厚大g下谷智之

最終回。
そして、劇的なドラマのない日常は続く・・・・・・か。劇的なハッピィエンドでもなく、破壊的な悲劇でもなく、我々の未来は、地道で面白くもない「生活」で埋め尽くされていくのさ。


◇しかし、岬ちゃんとラブラブの明瞭なハッピィエンドでこそないが、人間とのコミュニケーションがどうあれ、職業の不安がどうあれ、心おきなく弱いところを見せ合える同志的な存在がいるってのは、ああ、やはり物語としてのハッピィエンドなんだよね。
岬ちゃんとサトウくんのこの関係性がこの物語に商業性を与え、ヒトビトをつなぎ止めているウリだとはわかるのだけど、ここがこの物語の一番弱いところだと思ってしまった。


たとえば、砂を噛むような味気ない毎日、焦燥感にかられるが何も出来ない日々、社会の孤島から必死で誰も受信できないSOSを送っている。切望すれども、誰も都合良く自分には関心を払わず、しかし構って欲しいと自立できない心で叫ぶ・・・・・そんな物語を見たいと思っているワタシは、(もう、全てにおいてですが)特殊な嗜好ですね。ダメだ。


◇ところで、岬ちゃんの頑な自殺念慮をとどめる為に、水車を巨大な敵に見立てたドンキホーテの如く、巨大な「陰謀の首魁」に向けて突進していくサトウくんのシークエンスは非常に盛り上がった。妄想が現実化する演出が燃えた。


しかし、サトウくんが、その場で作り上げた妄想を岬ちゃんに語り、「陰謀の首魁」があたかも存在するかのように立ち向かって行き、その結果、崖から転落して死ぬことが、何故岬ちゃんの自殺志願をとどめることになるのかイマイチ腑に落ちなかった。ドラマ的に一番肝心なところだったのだけど。


◇最後にまったくの蛇足。ドラッグ風の認知が歪む妄想描写から始めて、わたしの心をフックしたこのシリーズは、この物語のテーマであるらしい「被害妄想」の暴走で幕をとじるって手もあったなあと思った。
Aパート、サトウくんが「NHKの陰謀論」をのたうち回りながら縷々述べるくだりは、本人が完全に信じ切って演出的に現実化しているように見せる「妄想内自己完結、しかも社会と相対化させる視線無し」(まあざっくり言えばあっちの世界にいっちゃうってことです。)を激しく期待したんだけど、単なる演技だとわかってガッカリしました。まあ、そーゆー話じゃないのだけれども。


◆◆以下メモ◆◆
・作画的には、夜の岬のシークエンスが力が入っていました。
とくに、サトウくんが「自爆」未遂した後、岬ちゃんに崖の上に引き上げられ、膝を立ててへたり込んでいるところ。彼の膝を小さく揺すり、弱々しく頭を叩き、やがて両手で胸を掴んで大きく揺する岬ちゃんの作画が非常に印象に残った。