■ブラックラグーンBLACK LAGOON15Swan Song at Dawn_s&c片淵須直d室井ふみえg柳伸亮g協力日向正樹木村雅広アクションgそえたかずひろ

双子編3話構成の後編。
シニカルな乾いた演出と物語が、この回もとても良かった。(ちょっとあざとい気はしたけども。)
最後まで悪魔の殺人マシーンとしての記号だけで通すのではなく、その不幸な生い立ち、それ故の殺し合いこそ世界の本質との認識、しかし、それとは正反対の子供らしいあどけなさと、美しい声と姿形が表現され語られると、(シンプルではあるが)その強弱の激しさにより立体的にキャラクターが立ちあがってきて、なんだか応援せざるをえなくなっちゃいますよねえ。


しかし、この物語は、そんな我々を冷徹に突き放してくれる「現実」を見せてくれて素晴らしい。
「兄さま」のパラライカ女史に見守られての、あっけない失血死。「姉さま」の、脱出したと思った、青空の下で、乾いた銃声に血まみれで倒れる姿。
(ロックすら)大げさに騒ぎ立てず、過度に悲劇や同情が強調されるわけでもないし、因果応報が強調されるわけでもなく、淡々とした死だけがあるという押さえた演出が好ましい。
「だれかがほんの少し優しければ、あの子達は学校に通い、友達を作って幸せに暮らしただろう。・・・でも。そうならなかったんだよ。ロック。・・・・だから、この話はここでお仕舞いなんだよ。・・・ロック。」


ところで、どうしても気になるのが、双子がマフィア達を敵に回して一歩も引かないどころか、優位にたっていられる理屈。双子が強くなければ、ガキどもを寄ってたかってリンチしているみたいな状況になっちゃうという危うさがある。。
これは、前回も書いたけれども、「双子の背負った不幸の重さ」が「大人達を殺戮する力」と等価であるという、物語的な魔法なんだろうね。
さしずめ、以下の姉さまのセリフは、その魔法がかけられ、同時に新たな生きていく為の世界認識を獲得した瞬間なんじゃないかな。
「他の子が、私達の前に連れてこられて、泣いているその子をバットで繰り返し叩いたその時にね。・・・大人達わらってた。私も兄さまも笑った。笑いながら思ったの。・・・これは仕組みなんだって。・・・そう。誰かを殺すことで世界が回り続けているのなら、・・・・私達がここにいる理由もまた、それだけなの。殺し、殺され、また殺して、そうやって世界はリングを紡ぐのよ・・・・」


◆◆以下メモ◆◆
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・前回ラストの続きの状況。暴力シスター、エダに銃と突きつける「姉さま」
「兄さまがロシア女を殺したら、高飛びしなけいといけないのよ。・・・でも手引き役のベロッキオ達は先に殺してしまったわ。」
「ばかが。・・そこまでわかっててオヤを殺したのか。・・・第一もうバラライカをやる義理がねえ。・・なぁぜ、続ける。どうしてだ。」
「うふふふ・・・・・どうして?どうしてですって?・・そんなこと。・・・おっかしい。・・・そうしたいからよ。他には何にもないの。そうしたいからそうするの。」


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バラライカの作戦は、始めから双子を自分が待つ公園へ追い込んで直接対面し、引導を渡す事だった模様。狂乱の一夜が明けて、朝靄の中、公園の噴水の前に座るバ・・ラライカがたたえた、冷徹な眼差しが、静かに恐い
「隠れること無いわ。でてらっしゃいな。」


・現れる「兄さま」
「せっかくだから何かお話でもする?僕等が・・・殺したあの男の話とか。普通なら死んでいるところだけど、あの男は随分もってたねぇ。最後まで叫んでいたよ。大尉、たいいーって。血のあぶくを吐きながら、ずーっとね。」
「ふーん。そう。」(「ふーん」の腹の底から出るような声が素晴らしい。)
「つめたいなぁ、おばさん。でもね。おばさんもじきに・・・あの男のようになるよ。時間があまりないのが残念だけど。」
「・・本当に、残念だわ。坊やには悪いけど。・・・・あなた、ここでおしまいなのよ。でも、その前に・・おいたのことを謝って貰わないと。ねえ、坊や。とりあえず、そこに跪きなさいな。」
「んふふ、そんなこといってぇ」
「ひざまずけっ」(ここのドスも素晴らしい)
・遠距離狙撃で、膝を打ち抜かれる「兄さま」。続いて、斧を持った手が飛び散る。


・引き続きバラライカ
「おしまいなんだよ、坊や。もう少し理性が働けば、気付いたはずだ・・・自分が餌場に飛び込んだことを。・・結局、お前は、どうしようもなく壊れたクソガキのまま・・・ここで死ぬんだよ。」
「あはは、・・・おかしいや。何、言っているの?僕は死なない・・・死なないんだ。だって!こんなにも人を殺してきたんだ。いっぱい、いっぱい「いっぱい、いっぱい」・・・・殺してきてる。僕等はそれだけ、生きることが「できるのよ」・・・命を、命を増やせるの。「私達はネバーダイ、そう」・・永遠なのよ。」
「それがお前の宗教か。素晴らしい考え方だ。・・・だが。正解は歌にもあるとおり、No One Lives Forever・・・そういうことだ。・・・さて、私はお前をひどく攻め抜いて殺してもいい。部下のことを考えれば、つりの上に特典が付く。・・・・だが、あいにく私はお前のように下品ではない。・・・だから私は、お前が死ぬのを、ただ眺めることにする。・・・その銃創では、もって10分だ。お前がこの世を去る数分を、サハロフ、メニショフ両名の鎮魂にあてる。・・・お前には理解できんだろうな・・・・」


・歯を食いしばって泣きながら死に行く子供を黙って見つめるバラライカ
「・・・・泣くな。このばかもん。」
すごい情景だ。一歩間違えれば児童虐待だけど、実はバラライカの同情がにじみ出てくる名場面。


・事が終わり、無線で遠距離射撃チームと会話。
「軍曹、こちらは片づいた。」
「いけませんよ。大尉。キモがひえっぱなしだった。」
「済まん・・・私の我が儘に付き合わせてしまったな。」
「・・・大尉」
「年かな・・・少し・・・少し疲れた」


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・「姉さま」に逃がし屋として雇われたラグーン号。キャビンで「姉さま」と対話しているロック。荒涼とした無惨な世界の認識。
「海は・・・見たことないのかい?」
シチリアにいたときも、その前の孤児院でも、みてたのはいつも灰色の壁ばっかり。生まれたのは、カルパチアの岩穴の中。・・・いつも曇ってばかり。」
・このあたりから、EDテーマが被さってきて非常に重くていいカンジ。


<とある独裁者が国民に妊娠中絶を禁じた。貧しい祖国に労働力を作り出すためだったが、・・・貧しければ育てられるわけがない。・・・大量の捨て子達は国営孤児院に収容され、秘密警察の要員供給源になった。・・・独裁者は殺され、後には愛を欠いた孤児達が・・・残された。>


シチリアに引き取られてからは、ずーっと血と闇の中。・・・死ぬほどけられて、真っ赤なおしっこがとまらない夜もあったわ。・・・兄さまとは良くはなしていたわ。そうして、神様は、私達にこんなにも辛くあたるんだろう。・・・でもね、私も兄さまも・・気付いたの。他の子が、私達の前に連れてこられて、泣いているその子をバットで繰り返し叩いたその時にね。・・・大人達わらってた。私も兄さまも笑った。笑いながら思ったの。・・・これは仕組みなんだって。・・・そう。誰かを殺すことで世界が回り続けているのなら、・・・・私達がここにいる理由もまた、それだけなの。殺し、殺され、また殺して、そうやって世界はリングを紡ぐのよ。」
「そのために・・・お兄さんが死んで・・悲しくはないのかい?」
「ん?・・・「なにいってるの?僕はちゃんとココにいる。・・いつだって姉さまと一緒にいるんだ。・・だって僕等は永遠に死なない。ずっと続くリングの上で、僕等はずっと殺し、これからも、殺す為に世界があり、みんながいて僕等がいる。だから、僕等もう、悲しくないんだよ。血の匂いも、悲鳴も、臓物の暖かさも、今は大好きでいられる。」
「ちがう・・・違うよ。世界は、本当は、君を幸せにするためにあるんだよ。・・・いいかい。血と闇なんて世界のほんのかけらでしかないんだ。・・全てなんかじゃないんだ。」


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・優しくしてくれた、お礼といって局部を見せる子供。ロックはショックを受けて、部屋を出てデッキにあがる。
・代わりにレヴィが子供を痛めつける。子供役の声優さんの、ドスの効いた、微かにムリヤリ作った優越感が漂う演技が旨い。
「んふふ・・・あなたはねえ・・・同じにおいがするわ。血と、ドブの腐敗した匂い。私とあなたは同じものよ。」


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・ラグーン号のデッキで、のたうちまわるロック。
「畜生、くっそう・・・なんて、・・なんてことなんだ。・・みんなが寄ってたかってあの子をトラに仕立てたんだ。人食いトラにしちまったんだ。・・・ちきしょう・・・」
「ロック、ああいうものをまっすぐ見るな。・・ここは、そういう場所で、それが一番だ。」


「だれかがほんの少し優しければ、あの子達は学校に通い、友達を作って幸せに暮らしただろう。・・・でも。そうならなかったんだよ。ロック。・・・・だから、この話はここでお仕舞いなんだよ。・・・ロック。」


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・目的地に着き、ラグーン号を降りる「姉さま」。ロックは、彼女の不幸を見て見ぬふりでやり過ごす呵責で、苦しげに笑顔で返事をする。
「お兄さん・・・またいつか。またいつかあいましょうねぇ・・・今度は二人で。ランチバスケットを持って。」
「ああ・・・そいつは素敵だな。・・・本当に素敵だ。」


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・空路を手配するハズだった逃がし屋が、「姉さま」を射殺。
「キレイだわ・・・空・・・・」


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・ロックは、銃撃の瞬間のみ驚愕の叫びをあげるものの、すぐに落ち着き、冷静に述べる。彼女の幸せは、この世のどこにもない事をロックは既に知っていたのでしょうか。
「いまわの際が・・お空がキレイだとよ・・・・しまらねえ。」(レヴィ)
「ロック。カンバスを持ってこい。死体にかけなきゃな。」(ダッチ)
「・・・要らないよ、ダッチ。・・いいんだ、このままで。・・青い空を眺めて、海を眺めて、眠るんだよ。」(ロック)