■ブラックラグーンBLACK LAGOON12Guerrillas in the Jungle_s片淵須直c荒木哲朗d濁川敦g日向正樹g協力香月邦夫阿保孝雄木村雅弘アクションgそえたかずひろ

最終回。
「オレの仕事は・・・そうだな、イヤ。・・・・やっと吹っ切れた。俺の仕事は・・・・公共の敵であることさ。」完全に竹中さんがこの物語を持って行ったな。たいへん面白かった。
竹中さん自身が物語的に活躍しているわけではないが、その独白、同じ日本人であるロックとの対照、回想、戦友を殺す決断、生きていく道を力強く再定義する様子など、完全に竹中さんの物語になってます。
キャラクターモノとして見ているヒトには、不満が残るであろう、物語の閉め方な気もしますが、このシリーズで(ほぼ)一貫して試みている、「「リアルな現実世界」と接点を持つ荒唐無稽さ」の、(日本人が海外でアウトローになるというテーマにおいて)現実よりに寄り添った最終回。(原作どおりなら原作の手柄なんでしょうけど。読んでいないので・・・・ああ、怠慢なダメ人間。)
ところで、このテーマは、ブラックラグーンという物語が内在している、「ゲームとしての殺し合い」と激しく衝突している気もするけど、これがなきゃ荒唐無稽なだけになっちゃうから、如何に接ぎ木に見えようとも、正しい戦略だとも思ったりしました。。。


さて、飽食の豊かな日本から出てアウトローになったロックと対置される、主義主張が信じられていた古き時代に、世界を正そうという熱狂に従って海外でアウトローになった竹中。
竹中に設定されている、殺してきた血の量や、背負っている歴史や熱狂の量が、圧倒的に竹中の言葉と行動に深みを与えていて、ロックは、ホントに、状況に流されているだけの情けない日本人に見えてます。(劇中、自分でも、レビィに渡されたクスリをキメテ、自己嫌悪の陥っているけど。)


この構造は、殺し合いをゲームとして楽しんでいるようにしか見えない、無敵の主人公であるレビィにも言えることで、「ですだよ」ねえちゃんと楽しげにヒトを殺している背景で、パレスチナゲリラ司令官の家族のエピソードが挿入されるやいなや、その非現実性が浮かび上がってきて、ハッとさせられのでした。
「リアルな現実世界での死」と、「ゲームとしての死」のバランスはなんとも難しいさじ加減で、どうやってバランスとったらいいのか、よくわからないや。


ところで、レビィについては、これまでも、重い生い立ちが仄めかされていたし、この回でも、CIAのエージェントに過去に触れられて、凶悪なココロになる様子が描写されていたりするので、彼女の現代的なハードな状況のエピソードが語られなかったのは大変残念。
是非このノリとスタッフで続きが見たいです。


◆◆以下メモ◆◆
・<あんた日本が恋しいのか?>とロックに問われてタケナカ。
「そういうあんちゃんは何だってこんな危ない橋をわたっているよ。え?喰うためじゃなかろうよ。プチブルだらけの今の日本で、こんなことする奴ってのはそうはいねえやな。」
「なんつうか、その、いってみりゃ俺も、あんちゃんもあの国にとっては、もはやアウトサイダーだ。でな?エンパシィーって奴をよ。感じたうえで、あんちゃんが冒険家になった理由を聞きてぇんだ。な。」


・<俺は・・・あんたと俺は違う。ひとくくりにしないでくださいよ。>
「ほう、どう違う?」
<俺は追い出された訳じゃない、だが、あんたは違う。追いつめられて逃げたんじゃないか。年の若い俺だって、あんたが何をしてきたのかは、知っているよ。>
「あんちゃん、おれはな。人民総決起、世界同時革命。そういうもんに全部をかけて日本を出て来たのさ。意志と目的がありゃ、負けとはいえねぇよ。あんちゃんにはそういったところがあるのか?違いがあるとすればそこだろ。」


<俺にだって・・・有りますよ。>
「どうかな。覚悟と目的は同義語だ。」
<あんただって、目的なんてもうないじゃないですか。今はもう少なくても・・・信じちゃいない。>


・1970年代学生紛争の画面を背景に竹中の独白。
「昔、こんな話を聞いた。街にやってきた男の話だ。その男は街角に立ち・・・人々に説法を始めたのさ。」
「世の中が良くなるように。そういって男は説法をし続けた・・・・毎日。毎日だ。」
「最初は皆、男の言うことに耳を傾けた。共に戦おうというモノもいた。」
「だが、みなは興味を失っていった。連中にとっちゃ、世の中がどうなろうとも、知ったこっちゃ・・なかったんだ。」
「だが、男はやめなかった。年を食い、誰一人、聞くモノがいなくても、男は説法を続けた。」
「ある時、そこを通りかかった子供が男に聞いた。どうして誰もいないのに説法を続けるのかと。」
「その男はこう答えた。」
「最初は、皆を変えられると思っていた。・・そして今は適わぬ夢だとも知っている。・・だが、自分が説法をやめないのは・・・・・・俺が闘いをやめないのはなぁ、あんちゃん。あのころの俺は生きるってことをそいつにかけたんだ。・・・それを嘘にしたくないからだよ。」


アメリカへのテロ計画の遂行に我を失っているイブラハ司令官。
イブラハ「そうだ。キャンプ内の全車両へ。たとえ、停戦ラインを越えても躊躇をするな。突入して文書を取り戻せ。」
タケナカ「よせ、隊がが全滅するぞ。」「イブラハ!俺たちには仕事がある。イブラハ!」「なにをどうしようともわかるだろ。おまえの息子はもうかえっちゃこないんだ。」


イブラハ「俺たちの仕事は・・・それは職業ではない。生き方だろう、タケナカ!ならば、譲れぬ時もある。」「エルサレムの人でなしどもと、そいつをかばい続ける連中に、ようやく手が届くところまで来たんだぞ。」「87年のベイルート。あの赤十字キャンプを連中に見せてやる。そのために俺は来たんだぞ。」「敵を追って進め。進み続けろ。政府軍キャンプへ突入しろ!」
タケナカ「撤回だ。よせ、大義の前に目的を見失うな。」


イブラハ「大義だと、タケナカ。おまえはそういったもの達の為に・・・戦ってきたんじゃないのか。そのためにおまえはベカ共和国にやってきたんじゃないのか。こたえろ、タケナカ!」


アメリカとの全面対決と、隊の全滅を避ける為にイブラハを殺すタケナカ。
「・・・全隊へ、そのまま引き返せ、キャンプへは戻るな。二次集結点へ移動しろ。」
「俺もおまえも後ろしか見ていないくて、・・そうしている限りは何も変わらなかった。だがな、いまとなっちゃあどうでもいい話だが、おまえはイイ仲間だった。・・ひどい話だな。イブラハ。」


・前編で同じく空港で会話したリゾート帰りの子供連れの父親に話かけられるタケナカ。非常にいい物語の閉め方。
「いやあ、もう散々でね。取引はご破算だわ、腰は痛めるわで。仲の良かった友人とは喧嘩別れになりますし、わけえもんには、自分にできねえとをおっかぶせようとしちまったりねえ。」「まったくヤになることばかりで。どうにも歳をくったなあ。」
<でも、次がありますよ。>
「もちろん。死ぬまでは、次がある。常に、次はあり続ける。」
<そうだ、おじさん。お仕事は何を。>
「オレの仕事は・・・そうだな、イヤ・・・・やっと吹っ切れた。俺の仕事は・・・・公共の敵であることさ。」タケナカは、雄々しく背中を見せて去っていくのでした。




・「ですだよ」ねえちゃん。最初、漫画的なキャラクターで、なんかイヤだったけど、結構味があることに気がついた。


・秘密文書は、やっぱりレビィが持っていた。
「あせるなよ。ハリー・フーディニーが魔法のツボをひょいと振れば・・・ほれこの通り。」
ググったら、1920年代にかけて、アメリカで一世を風靡したマジシャンだそうです。


アメリカのエージェントに文書を渡すレビィ。
「えーと、そう、ミスレベッカバッファローヒルの署長と、NIPD27分署の連中があんたの今を知ったら、腰を抜かすかも知れないな。」
「勘違いしなさんな。俺たちの仕事は合衆国の敵を殲滅することであって、重罪人の逮捕はペイの中にはいっていない。いずれ仕事を頼む時の挨拶がわりだよ。」
「・・・くっそう。」と呟き凶悪な、余裕がない表情になるレビィ。