■僕等がいた02・・・s山田由香c大地丙太郎そーとめこういちろうdよこた和g荒尾英章

ころころかわる主人公ナナミちゃんの表情と内省と、素っ頓狂がすばらしい。
感じて、考えなしに表現して、衝突して、反省して、その反省をも表現して、また反省して内省する。
内省こそが、青春だ。
この回は、ナナミちゃんとヤノくんの人間関係の軋轢と内省の蛇行とでもいうか、正しく青春もの。
大地監督らしく、圧倒的に間の表現がすばらしくて、主人公ナナミちゃんと、思いを寄せているヤノくん、その中学時代の友人達、主人公のクラスメイト達とのやりとりが、そりゃもう、ぐぐっと引き込まれるように見入ってしまいましたよ。


ヤノくんの、表出する態度の変化も面白かった。
ナナミに対する態度の、なげやり、つっけんどん、受容への変遷。中学時代の同級生とつるんでいるおちゃらけたの様子。母親を淫売と呼ぶ様子。
物語がナナミちゃん視点ということもあり、彼は、ナナミちゃんとちがって自分の内面をしゃべらないので、非常に唐突、そしてミステリアス。


さて、この回は、ヤノくんが、ナナミちゃんに彼女独特の個性を見いだし、心を許してもイイかなと思うまででしょうか。
おそらく普通の友達には言わないような「俺の母親は・・・・・・・淫売。・・俺の彼女は、・・・クソ女。」なんてことをナナミちゃんには言っていて、これは、ヤノくんの降伏宣言だとおもうんだ。


あと、プリクラのシークエンスが、絶品だった。


◆◆以下メモ◆◆
・前回、競歩遠足中に具合が悪くなり、ヤノの彼女だった姉を持ち、既にその姉はいない、ヤマモトさんにナナミちゃんが声をかける。
「あっ、ヤマモトさあん・・もう、体育に出て大丈夫?」
「うん」
「あっ、あたしね。この間、34点だったよ、数学。えへ。赤点脱出だよ。」
「じゃあ、次は56点以上とらないと。平均30点以上取らないと落第なんでしょ。」
「えっ、そうなの?がっ・・がんばるっ」
この「えへっ、赤点脱出だよ」「がっ・・・がんばるっ」が、すごくいいー・・・・しかし、数学0点の次は34点ですか・・・大変だ。


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・狂騒的にヤノの年上の彼女がクラスで話題になり、中学の卒業アルバムを持ってくる無神経なヒトがいたりする、まさしく思いやりのかけらもない、高校生っぽさ。
・ナナミちゃんも、後ろめたく思いつつも興味はあり、好奇心に勝てなず、アルバムを見ているところをヤノが声をかけてくる。
「ごめん。ヤノ・・・興味本位で、カンジ悪いね・・・・」
「見せて。・・俺、まだみたことなんだ、それ。」
「見たい?」
「別に」
「ふーん」
「やっぱ、見たい」(ぴゅーんと・・・)


・二人きりの教室。アルバムのヤノの彼女の写真を見て、「俺が初めて本気で好きになった女」と語るヤノ。
話を聞いて、胸が苦しくなって、
<ワタシはたぶん認めたくなかったんだ。ヤノの好きな人の存在を。>為に、つい言ってしまったナナミ・・・・
「ヤノ、あたし。・・ヤノのこと好きかも。・・は・あははは、気にしないで、ちょっと言って・・」
「じゃ、つきあう?」
「へ、えっと、ちょっと待って。・・ヤノあたしのこと好きなの?」
「・・・うん。」
「ちょ、ちょっとまった。今、間あった。」
「ないよ。」
「あった。絶対あった」
「いいじゃん。」
「いくない。・・・ホントに好き?」
「うん、どっかっつうと。」
「ていうか、そういう好きじゃなくて・・・ホントにホントに好きかってきいてんの」
「ごめん。わかんない。」
「なんだそれ・・・・じゃあ、いい。そういうのはいらない。・・つきあうんなら・・・・・・・好きになってからつきあって。」
「分かった・・・」


・屋上で内省する。
<わかったって・・・・生まれて初めての告白だったのに。なんかすごくあっさりと。バカ正直に、わかんない、なんて・・・・。>


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・数学の授業。指名されて回答できず、代わりに黒板に回答を描くヤマモトさんを呆然と見つめるヤノ。空虚な喪失感を抱えている描写。この直前に、亡くなった彼女のことをかたっているだけになおさらって演出なのかな。


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・そして、ヨーグルトを上げて話すきっかけとしたかったナナミちゃんへのつっけんどんな態度へとつながるのかな。彼女が空虚感を深く掘削した。
「こないだおまえさ。ホントにホントに好きかって、何度も聞いたろ。」
「えっ。いや、そんな何度もって・・・」
「何度も何度も聞いたろ。じゃ、俺も聞くけど、ホントにホントに俺のこと好きなわけ?」
「えっ・・・・」
「いいよどむだろ。おまえも、・・その程度なんじゃねえの。」


・ファミレスに、ヤノの中学時代の同級生がたまっている。ばったりあったタケウチくんに誘われて、そこに加わるナナミ。うーん、女の子ばかりで酒池肉林?一体どういう同級生なんだ・・・・
・同級生の女の子が、クラスメイトのヤマモトさんの悪口を言う。「ねえ、ヤマモトユリと同じクラスなんだって?すっごく暗くてむかつくやつでしょう。」
・それに反発してそりゃないんじゃないのと雄々しく反論するナナミさん。険悪な雰囲気。
「ふっ・・・ふはは。なんでみんなシリアスになってんの?あっ、俺のせい?ナナさんの悪口を言うヤツはゆるさねえぞ。・・あっ、ヤマモト妹。あー、アイツはね。うん、アイツはアイツでいい奴なんだ。見た目ほどいじわるじゃないんだぜ。・・それと。高橋ナナ。ホームルームじゃねえんだから、仕切るな。うぜえ。」


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・ヤノを鞄で、ぶったたき、「死ね、バカ」といって飛び出すナナミ。ヤノはその仕打ちに何らかの気づきがあった演出。


・あからさまにドラマの都合で財布を忘れたナナミ。財布届けに折ってきたヤノ。
「財布・・・・俺、女に死ねって言われたの初めて」
「だったらもっと言ってあげる。バカ、アホ、マヌケ、おまえのかあちゃんでべそ。返して。」
「ははは」
「・・・あんたはどうせ、・・・ナナさんしか見えてないんだ。」
「バカ、アホ、マヌケ。ふふっ、俺の母親はデベソじゃないよ。俺の母親は・・・・・・・淫売。・・俺の彼女は、・・・クソ女。」
「しょっ・・・・」
「男と居たんだよ、事故の時。前の男と。・・・・・・・アイツら、終わってなかったんだ・・・・。」


・これって、ヤノくん、ナナミに相当、心を開いているよね。カバンでぶったたかれて、ちやほやするばかりの周囲と違う、ナナミの反応にイチコロってことなのかしら。
ヤノは、ちやほやする回りに調子を合わせて、いつもえへらえへら生きてきた。彼等には、心の奥の奥にあるモノをいっても仕方がない。だけど、ナナミだったら、自分の心を受け止めてくれるのでは・・・そんなヤノの弱さが出た場面かな。
しかも、ヤノくんの言っている言葉の重量級なこと。母親淫売とか、インパクトありすぎ。こんなこと、結構仲の良い友達でも言わない。
この心を許した様を補強するのに、次のプリクラのシーンが最大限に効果を発揮してます。


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・プリクラの前で、シリアスな対話をしながら、ナナミのくるくる表情が変わる様、句読点としてのプリクラ用の笑った顔、ハミングの背景音楽。
ナナミの素っ頓狂な発想と、思ったことを考えなしに口に出す特質も相まって、このシーン、素晴らしい。大好きだなー


・ナナミを家まで送り届けようと言うヤノ。
「あっ、おくってくんなくていいよ。」
「おっ?」
「送ってくれなくなくていいから、ぷっ・・・・・・・・・・一緒にプリクラとらない?」
<こんな時にアホだ。絶対>


<ヤノは・・わらう。気がついたらいつも笑っている。>
「ヤノは強いよね。普通はさっきみたいなことなかなか言えないよ。」
「他人のせいより、自分のせいにする方がラクだからね。」
「えっ、逆でしょ。他人のせいにする方がラクでしょ。」
「他人のせいだと、理不尽すぎてゆるせねえと思うけど。自分のせいだと、・・仕方がない、と思う。腹も立たなくなる。ラクなんだよ。つまり・・・ずるいんだ。オレ。」


<ワタシ、にやけている。おまけに・・・ワタシの方が頭でかい・・・>
「なんか、たこ星人みたい・・」
「うん、かわいいじゃん」
「かわいい?たこが?」


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・クラスで、文化祭で劇をやることになって、
「それより、劇やるんだって?」
「そーなのー、もう大変。それなのに、アイツときたら。」
「あいつ?」
「クソバカよ。あのさあ。」
「え、へー、アイツがどうかしたの?」
「つうか、やめよう。アイツの話は。口がくさってしまうわ。」
「へー、よっぽどむかつくことあったんだ。」
「ちうか、あいつの、あの時々血が通ってないような冷血さはどうかと思うね。ヒトをヒトとも思わないような。もうちょっと気を遣えないかと。」
「高橋さんとは逆だよね」
「わたしなんかさー、なんかめちゃくちゃがんばっているのに、むくわれないっていうか、そういう時にああいう人間みるとむかつくよね。」
「最低?」
「もー、最低!・・・・なのに、ヒトが集まる。ヤノが居るから、みんな劇に乗り気になってくれる。
ほらいるでしょ。休み時間にボールを持つと、クラスの子達をわーっと集めて肯定にひきつれていっちゃうひと。
その人が居なくなると、みんなつまんなくなって、遊ぶのやめちゃうような存在感のある人。
あいつが、それ。あたし・・・・・ヤノのそういうところに・・・・ホントは・・・・憧れてんだ・・」


・委員会に出席するのを忘れ、劇をやる、教室を取り損なったナナミ
「大丈夫。なんかあったらオレが責任とるから。おまえは、なんも心配すんな」


<ワタシとヤノは違う。>
<ヤノは他の人とは違う考え方を持っている・・・いつから・・・そんな風にカンジ始めたのかな。いい加減なくせに真剣。手抜きのくせに・・・核心をついてる。>


・ヤノが教室を確保してくれて。
<・・・なんで、そんなに矛盾しているの。ヤノ。しりぬぐいはしないんじゃなかったの>
「どうせあたしは、調子よくて意志薄弱で、八方美人。責任感ばっか強い割には、頼りなくて気弱で小心者で・・・お人好しの同義語。見る目ないし、早まってコクるし、そのくせひとにすぐたよるし。つまり・・・>
「ばか?」
「そんなわるいもんでもねえとおもうけど。」
「なにが?」
「おひとよし。それと・・・・告ったのも・・そんなに間違いでもねえと思う。」
「それは・・・どういう意味?」
「えっ、さあ。」
「ん、・・・どうしてあんたはいつも重要なことを、さあとかわかんないとか・・はぐらかすの?」
「はぐらかしてねえよ。いい加減なつもりなら何とでも言える。何とでも言えるんだ。・・・けど。」
「・・・けど?」
「けど、分からないオレってのもありじゃねえ?」


<ほら、やっぱり。またそんなことを。・・矛盾してるよ。・・・でもありなのかもしれない。>