■ブラックラグーンBLACK LAGOON22The Dark Tower_s片淵須直c&d阿保孝雄g井上英紀

日本編3話目。あと1話?
◇Aパートを支配する圧倒的で一方的な暴力!
「貧乏くじだな。・・同情するぜ、お前らは、・・・誰も生きてここから出られねぇ。・・誰一人としてだ。・・ここは地獄のモーテルさ。出来る限り逃げてみな。・・・でねぇと、ブギーマンにくわれるぞ」(レヴィ)


ポリシィなき反乱を首謀したチンピラが、両手を切られてプールで溺死を強いられる様を象徴として、チンピラ達の理は一切描かずに、まさに殺す為に殺す演出の、この潔さ。格好良く殺し、殺される為の演出。


だから、レヴィと銀さんに、通常のアニメーションの主人公らしいヒューマニズムは一切ない。このシリーズの特徴である(主人公としてどうなのよ?とゆー)倫理的逸脱が極まった回でしょうか。しかし、しかしだ。この格好良さはなんなんだ。
ああ、私の旨とするテーマ主義の作劇とは別に、「派手に、格好良く、絶対的な悪人を容赦なく殺戮する」だけのシチュエーションの快感に目覚めてしまったかも。セリフも格好いいし。


このAパートをみて、コレまで(私の)守備範囲外だった香港ノワールとか、数々の犯罪映画の記憶の集積の上にこのシリーズがあることを、あらためて何となく感じ取ってみたのだけど。カッコイイ銃撃戦とかをむちゃくちゃ見たくなってきました・・・・


あと、蛇足ですが、このAパートを引き立てているのが、レヴィの深い虚無かな。これまで何度も演出されてきたのが効いている(Bパートでも重ねて描かれているし)。もう、言うことはありませんよう。


◇さて、Bパートは一転、レヴィの虚無と同質の暗がりに佇む雪緒さんが、ロックに、切っ先鋭い匕首を突きつける話になります。


「だから、あんたがまた正常位の話を蒸し返すなら、あんたは仲間じゃ無くなるよ。その時、ワタシ・・・あんたを殺すからね。」(第5話のレヴィ)
第5話、第6話で「レヴィの心的世界」の圧倒的に深い虚無の前に立ち竦んだロックは、この回でも、同じ立ち位置からの、重量がある指摘に、為す術もありませんでした。


「岡島さん、答えてください。あなたはどうしてここに立とうとしたのですか?(・・・)・・・あなたが、何を望んで東南アジアの裏社会に潜り込んだのか。・・・日本に、いえ、日常に無い、何かを求めてなのかも知れません。・・・でも、結局あなたは、何も選んでなんか居ないんです。・・・平凡な日のもとへ戻るわけでもなく、悪に満ちた闇の中に沈む訳でもなく・・ただそこで、立ち止まっているだけなんですから。」


なまっちょろい机上のヒューマニズムは、経験から発する闇のリアリティには勝てないよね。この回、ロックの、この「ブラックラグーン世界」での不安定な存在基盤をズバリ指摘してくれていて、個人的には非常にヒットした。
実は、この物語は、ロックの「闇の世界への心理的転落」、もしくは「闇に触れてしまった一般人の末路」で終わらなくては、台無しになっちゃうなと個人的には思っていたりする。(いつもの如く、こりゃもう、個人的な趣味ですけど。)


◆◆以下メモ◆◆
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・ロックと雪緒との対話。
「キミは・・・キミは、ココがどんな場所か、わかっていて踏み込んだのか!キミだって見ただろ、悪意に満ちて分別のかけらもない、そんな人間が裏切りあい、殺し合っている・・・そんな世界なんだぞ!」


「あなたは・・・夕闇にいるから。・・・あなたは、・・そうやって、ずっと、夕闇に留まっているから、言えるんです!。あたしはここへ来るしかなかった。選んだと思わなければ覚悟なんてできません。・・誰かの命が、名誉が、明日が、あたしにかかっているのなら、そのために戦う以外にあたしに何が出来るんですか。・・・今夜のことだって、あたしが背負うと決めていなければ、耐えられなかった・・・・・・」


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・ロックの敗北感に満ちた独白。
「レヴィ・・・この子が、味わってしまった、今夜という経験の前に、オレはまったく無力だ・・・。目の前でお前達の側に転がり落ちていく少女に、かける言葉も、もてずにいる・・・・・・・・オレの足は、どこにも立ってなどいない・・・・」


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・雪緒の指摘に立ちすくむロック。
「岡島さん、答えてください。あなたはどうしてここに立とうとしたのですか?・・・喫茶店で話してくれたこと、正直言って、あのときはよくわかりませんでした。・・でも、今ならはいっきり言えると思います。・・・あなたが、何を望んで東南アジアの裏社会に潜り込んだのか。・・・日本に、いえ、日常にない何かを求めてなのかも知れません。・・でも、結局あなたは、何も選んでなんか居ないんです。・・平凡な日のもとへ戻るわけでもなく、悪に満ちた闇の中に沈む訳でもなく・・ただそこで、立ち止まっているだけなんですから。」
「あ・う・・・・違う・・・・おれは・・・・」
「言ってましたね。あたしを助けたいって。・・・じゃあ、助けてください。ワシミネ組を、銀さんを、組員たちみんなを!」
「あ・・・・・」
「できる分けないですよね。あなたは私を助けたい訳じゃありませんもの。あなたは捨てたはずの日常を失いたくない、ただそれだけ。・・私を見殺しにしてしまえば、・・あなたは日本に残した追憶の最後のカケラまで、失ってしまうから。・・・あなたは何も追おうとしない。・・・自分が捨てたモノにさえ、まだあこがれのひとかけらを抱いている・・・そんなことで一体誰を守れるんですか。・・・そんなことで誰を助けるなんて言うんですか。答えて!さあ!答えて!」


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・Bパートのラスト近くで、バラライカの少女時代をカットインしているのは、バラライカもまた、レヴィと雪緒と同じ地点にいるのだということなんでしょうな。
「ワシミネ組の戦力は、徹底的かつ迅速に、これを削げ。・・・・日本の連中に・・戦の作法を教え込め。」