■桜蘭高校ホスト部13不思議の国のハルヒs榎戸洋司c&d五十嵐卓哉g倉島亜由美

中学生ハルヒが、父と共に桜蘭高校の入学手続きにやってくるところからはじまり、待合いで見つけた、不思議なウサギを追いかけて・・・・というタイトルどおりのゆめうつつの話。
夢の中で浮上する現実の反映は、普段どおりのメインキャラクター達の残像であり、まあ当然ですがキャラクター性に寄りかかった話になっています。


真っ青な空、繰り返される舞台風のフレーズ、不条理で無意味な展開、不思議な舞台美術・場面転換という、せっかくの夢幻の舞台を用意しておきながら、夢に浮上するハルヒさんの無意識が、現実から予想できる範囲内に収まっていることが、残念かな。
(これはもう、ワタシの自分勝手な願望なんですが)ここまで凝ってくれたなら、やっぱり普段のハルヒさんからは遠く想像できない、無意識の露頭を見てみたいと思うのでした。


夢から覚めて
「夢のような学生生活か・・・確かにこれじゃ寝ても覚めてもあまりかわらないな。」
丹精な作画は、この回も素晴らしいです。


◆◆以下メモ◆◆
・「あのー、ツボが取れなくなっちゃったんですけど。手貸してもらえません?」
ツボが腰にはまって取れなくなり、かつ動き回るってのは、どんな骨格的状況なんだろうと、しばし悩んだが、まあ夢ですし。ツボはツボでこのシリーズ冒頭で壊したツボだとBパートでも印象づけてます。


・暗闇に光る「女」という電飾の先を歩くと、暗く長い通路を通って、明るい紺碧色の空のもと。
・部長イモムシが言う「たくさん泣いたな。このプールの水は、全部あんたが今まで流してきたココロの涙だよ。つらいことや、寂しいことを、実は一杯我慢してきたんだな。」
・紺碧の空のもと、部長のキノコを食べて、グラマーになったサシミ・・・いやキリミちゃんを捨て置き、赤ちゃんになったその兄を追う。ハルヒさんは、部長、そして涙と定義された水、あからさまな女性性に顔を背けたんですかね。


・顔を背けて、たどり着いた所は、レンゲ公爵夫人が赤子をあやす部屋の中。双子猫や使用人さんとの軽妙な掛け合いもあり、母性が表出しているこの落ち着きは悪くないらしい。
「おかあさんがみつかってよかったね。ホントによかった。おかあさんと一緒にいるのがやっぱり一番だもんね。」
しかし、いつしか赤子は木製のおもちゃに。軽妙なやりとりをした人々は消えて、自分の居場所が無くなったのを感じる。


・双子猫が柱の影から交互に出て、思わせぶりなセリフを次々に投げかけてくるところは好きかも。
「女王陛下に謁見せずに帰るなんて」「ここでは許されない。」
「女王陛下は」「この世界を」「支配しているとは」「いえるな」
女王陛下は、ハルヒさんの母親なので、ハルヒさんの世界を支配しているってことですね。


・環先輩、ハニー先輩、モリ先輩が、永遠の3時のお茶会を豪華な食堂でやっている。
環「髪が長いね。・・僕はその髪が好きだけど、残念ながらほんとはもっと短くからなければならない」
ハルヒ「ヒトの髪型のことはほっといてくれますか」
ハニー先輩「今日はスカートなんだね。」
ハルヒ「こうみても一応女なんで。まあ、どうでもいいんですけど。」
ハルヒさんが、女性性に淡泊な理由がいままでのシリーズを通してもよくわかんないかも。「勉強勉強また勉強」で生きてきたのが、原因なのかな。
個人的には、ハハが、男をとっかえひっかえ・・・見たいなカンジが定番だけど、しっくりくるかも。


・環先輩「なぞなぞ。君の父上と僕が似ているのはなーぜだ?」
ハルヒ「にているんですか?」
ということで、環先輩が普段から自ら言っているとおり、ハルヒさんは、環先輩に父の影をみている模様。


・公爵夫人の裁判のシークエンス。
「自分は、・・・自分は被告の弁護士です。」と思わず叫ぶハルヒさん。
直前のお茶会での環先輩との会話「自分にはかなえたい夢があるんです。桜蘭に入ったのはそのために勉強したいからです。」から鑑みて、なんか弁護士になりたいんでしょうか。


・「そちの罪は、仕事の為とはいえ、子供に留守番をさせ、寂しい思いをさせたことだ。」
「いいえ、女王様、それは違います。親が本当に忙しい時、子供はそのことをちゃんとわかっています。決してヒトを恨んだりしません。」
まあ、そういうことですね。ハハは、ハルヒさんが小さな頃、始終、家を留守にしていていたけど。


・「この者は、学生生活を間違った認識でとらえております。勉強勉強また勉強。日々の暮らしをすこしもたのしもうとしておりません。」
「あなたは楽しみすぎ何です環先輩。」


・夢の構造ばらしのフィナーレ。
王こと父「いい友達が・・一杯できて、よかったね。」
女王こと母「大きくなったわね。ごめんね苦労かけちゃって。その分、今は夢のような学生生活を楽しんでね。」


・という、以上から、ワタシが勝手に想像した物語。
・男を取っ替えひっかえし、留守がちだったハハ。しかし、ハルヒは、それを仕事のためだと無理に思いこんでいる。だけど、男に翻弄されたハハ、社会的に無力なオカマの父を見るにつけ、社会で生きるすべをキチンとみにつけなくっちゃと思い、弁護士を目指しているってのはどうでしょう。
・非常にありがちだけど、四角四面のハルヒさんが、現実のお伽の国に紛れ込んで現実を忘れつつ、無意識のドロドロした現実を押さえつけているってのは、非常に好みな状況なんだけどな。しかし、そういうノリの話じゃ無いような気もする。