■ウルトラQ03宇宙からの贈りものs金城哲夫d円谷一特技d川上景司

「のどかで平和な歌声を破って・・・それは地球へ到達した。そして・・・それは我々に何をもたらすであろうか。これから30分。あなたの目はあなたの体を離れて、この不思議な時間の中へ入っていくのです・・・」


石坂浩二のナレーションが改めて素晴らしい。
さて、話は、半年前に日本から火星表面を撮影するために送り出した「ロケット」は、火星表面に激突して破砕されたはずだった。しかし、東京から三原山へ向かう海上に、その構成カプセルが降下してきた・・・・
そのカプセルからは、地球上に存在しない物質、異様な写真、そしてうずらの卵大の金の玉が二つ発見された・・・・


◇特撮的な見所は、ナメゴンの殻が割れるところかな。(2回あるけど、後者の民家の庭での殻割れが味わい深い。)
また、ナメゴンのぬめぬめ感がいいカンジです。だけど、なんだか「ナメクジ」モチーフというよりは、オットセイみたいなカンジになってます。オオクラ島では、「蠕動する怪獣」を演出しようとする努力も、若干みられたけれど、イマイチうまくいってないです。
海に落ちて塩水に溶けるナメゴンは、セットの海に、ドライアイスをまいたのかしら。


◇場面的には、オオクラ島での、海岸での追いかけっこで、ナメゴンを光学合成で画面の奥に、手前に万城目さんを配して、ぐーっと伸び上がるようにナメゴンが近づいて巨大化してくるところが印象に残る。
また、ラストシーンの、邸宅の庭で孵化したナメゴンの違和感と、邸宅の室内の窓から不気味に光る目玉が揺れるのが見える様は、畢竟、名シーンだと思いました。日常との異化作用が強烈。


◇シナリオ的には、無理に無理をかさねた展開で、(思い入れのある人には怒られるかも知れないけど)かなり気持ちよく爆笑できます。
この回は、博士コントとも言うべきシーンの「間」と、ギャングの定型イメージのキッチュさが味わいどころ。


だけど、本当は、当時行われていた国威発揚のための、宇宙開発競争への違和感を提示している真面目なメッセージをうけとめなくちゃいけない。(私はまだ金城さんの特徴を把握しているわけではないのですが、いろんな本を読む限りでは)おそらく、きっと金城さんらしい脚本なんだろうなと思いました。


下の、一平の言葉は、宇宙開発に無邪気に一喜一憂する当時の一般庶民の認識をなげいているんじゃないのかな。
「ナメクジのオバケでおっどかそうったって、そうはいかんぞ!火星やろう!」


◇締めは、石坂さん
「無限にある海水が、このドラマを締めくくってくれるに違いない。・・だが、地球上での政治的実権を握る為の、宇宙開発の競争が行われる限り、第二の宇宙からの贈り物が届くにちがいない。・・それはたぶん、海水を飲んでますます巨大になり、強靱になる恐るべき怪物に違いない。」


◆◆以下メモ◆◆
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・アバンで航空機の中、江戸川記者と万城目パイロットの会話。
「傑作は撮れたかい?」
「それはアマチュアに言うセリフ!あたしはコレでも、れっきとしたプロよ。」
「傑作は当たり前ってわけかい?」
「もちろんよ」
「お見それをいたしました」


「しかし、三原山の噴火風景なんかとって記事にするなんて、新聞社もよっぽどネタ切れらしいなあ」
「下に見える地球という、あのお星様が平和だからでしょ。」


・二人は落下傘で海上へ降下する物体を発見する。


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・謎の物体落下の報を聞き、駆けつける新聞記者達。
「半年前、火星の表面撮影を目的に宇宙ロケットを打ち上げたことがあったが・・・」(黒縁メガネの責任者)
「ああ、完全なる失敗に終わった例の!」(記者1)
「そうそう、確か送信機の故障とかだね。そのロケットがどうかしたんですか?」(記者2)
「・・その、カプセルが戻ってきたんですよ。」(黒縁メガネの責任者)
一同<ええっ・・・・><信じられないなぁ・・><そんなことはね・・><ばかな・・>
「なんですって」(万城目)


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・今回メインをはって登場する、白い口ひげの柔らかい感じのいかにも「博士」というカンジの博士と、万城目他の会話。
「あのときのロケットは軌道にのって確実に火星に到達している。・・すると、誰かが送り返してきたという事になりはしないかね。」(白髭博士)
「送り返した?」(万城目)
「だって君、それ以外に、考えようがないじゃないか。」(白髭博士)
「わかった!その誰かというのは火星の生物。」(江戸川記者)
「そう。しかもそれは、我々地球人類と同等か、あるいはそれ以上の頭脳を持った生物だね。」(白髭博士)
「・・・火星人」(万城目)


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・「群盲象を撫でる」状態の「万国博士会議」みたいな博士たちの投げやりなセリフ群に笑った。背景に星々を背負った謎の会議室にて展開される博士コント!吟味する対象が隣の博士に託される時の、渡す方と渡される方の演技者のびみょーな演技が極めて味わい深いです。


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①吟味対象「謎の布」(これはパラシュートの布なのかな?)
「火星から送り返されたモノであるという、証拠のひとつがコレです!」(責任者)
「なるほど・・・我々が知っている化学繊維以外のものだ・・・」(白髭博士)
「いや!それより一歩進んでおる。・・これが繊維だろうか?」(その他の博士)
「ほとんど、透明にちかいようですなあ」(その他の博士)
「うーん・・・」(その他の博士)


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②吟味対象「写真」
「お待たせ致しました。フィルムの現像結果が出ました。」(事務官)
「おう・・・うん・・・これは・・・まるでアブストラクトだ。何が何だかさっぱりわからん。」(白髭博士)
「うんっ!・・・まったくだ!」(その他の博士)
「キミい!キャメラの故障は?」(その他の博士)
「はっ、ありません」(事務官)
「フィルムのイタズラか。これじゃ、どうにもならんな。」(その他の博士)


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③吟味対象「金の玉ふたつ」
「実は、カプセルの内部を調べましたるところ、奇妙なものが紛れ込んでいたんです。君、持ってきたまえ。」(責任者)
「と、いうと?」(白髭博士)
「ウズラの卵ににた金色の丸い玉が二つ発見されたんです。」(責任者)
「金色の玉が二つ・・・」(白髭博士)
「我々のロケット打ち上げを祝福して、火星人が贈り物をしてくれたんじゃないかね?」(その他の博士)
『はっはっはっはっ』(一同)


「これです。」(責任者)
「なあるほど・・・コレは可愛らしい。」(白髭博士)
#いきなり玉を机で叩いて感触を確かめる博士・・・・・つーか、叩くのもどうかしているが、生手で触ってはいかんのでは・・・・


「内部構造は?」(白髭博士)
「不明です。日数をかけてじっくり調査してみないことには」(責任者)
「あちらさんもしゃれているじゃないか。そんな可愛らしいプレゼントをよこすなんて。」(その他博士)
「いや、友情の印というわけか」(その他博士)
『はっはっはっはっ』(一同)
#これ、絶対、金の玉ふたつで連想するものを一同想起して笑っているよ。いままでしかめ面していた面々の嬉しそうなこと!


「楽観は禁物です。いたずらに民心が混乱するのを避ける為に、正体がわかるまで、このことは極秘にお願いします。」(責任者)
「ん!用心するに越したことはない。・・小さいが、未知のものだ」(白髭博士)
「キミ、厳重に保管を頼む」(責任者)
#おっ、まともなことを初めて言ったな!と思っていたら、託された「キミ」は、現金と一緒に金庫にしまってしまうという、うっかりな不条理さ!そこに金庫強盗が押し入るキッチュさ!素晴らしい。


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・金庫強盗、タクシーで星川航空に乗り付けて居るんですが・・・・・


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・サングラスに山高帽、典型的なギャングの服装の男が押し入る。
「一平、忘れ物か?」(万城目)
「いやぁ、飛んでほしいんだ。」(ギャング)
「なんだね、キミは?」(万城目)
「客に向かって・・・えらく乱暴な口をきくじゃねえか。」(ギャング)
#帽子を、ぐいと持ち上げる典型的な「きめポーズ」がステキ。


「客・・・?あいにくだが、夜は飛べないんだ、ウチの飛行機は」(万城目)
「オオクラ島まで、急用ができてねえ。是非・・たのみてえんだ。」(ギャング)
#札束を机に放り投げるギャング。


「だめだめ。幾ら金を積んでもだめだ。法律があるんだよ。」(万城目)
「法律?てめえの命と法律を天秤にかけるほど、ウブな男じゃあるめえなあ?」(ギャング)
「わかったよ」といって隙をついて格闘に持ち込む万城目さん。


・一瞬映るギャングの素顔が、つぶらな瞳とふっくらとしたカワイイ顔で印象に残る。


・金玉一個は、星川航空の事務所に落ち、残る一個はギャングとともにオオクラ島へ。


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・万城目さんへはマカオへ逃げるみたいなことを言っておいて、ギャングたちはなぜか洞窟へ。かってに薄気味悪がって転び、金の玉は、温泉が湧出して煮立っているらしき、泡立つ泥水の中へ落ちる。
・卵は成長して巨大化。ナメゴン発生。


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・怪物出現の報を受けた新聞社にて、デスクに取材を命じられて、緊張いっぱいなカンジで拒絶する記者のビジュアルを含めた、ヘタレ感がすばらしい。
「かっ、かっ・・・怪物?」(小顔のヘタレ記者)
「うん、島の駐在から本庁に入った連絡によると、それを見たって言う男が、ショックで言語障害を起こした。」(デスク)
「えへぇ・・・か、怪物って、なんでしょうか・・・?」(小顔のヘタレ記者)
「ばか!正体不明だから怪物ってんだ。行って自分でみてくるんだね。」(デスク)
「あのぉ・・僕、遠慮したいんですが・・・」(小顔のヘタレ記者)
「なにぃ?・・・貴様それでも新聞記者かっ・・勇気はないのか」(デスク)
「勇気の問題じゃないんです。・・・趣味の問題なんです・・・ぼかぁ、芸能記者ですから」(小顔のヘタレ記者)

・そこに割ってはいる江戸川記者
「デスク!あたしに行かせてください。」(江戸川記者)
「なんだ、またきみかぁ」(デスク)
「趣味の問題です、んふっ」(江戸川記者)


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・取材に向かう江戸川記者と、星川航空の万城目さんと一平。ゆりちゃんとかいって、目をつむらせて、例の事務所に残った金の玉をペンダントとして江戸川記者の首にかける一平くんは(シナリオに奉仕するためとはいえ)どうかしているよ。


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・オオクラ島での一件が終わり、なぜかあの怪獣は例の「金の玉」から発生したことが、テレビのニュースでも語られるほどの公知の事実となっています。
「博士、火星人は、どうして、カプセルの中に怪獣の卵を入れたんでしょう。」(万城目)
「うん、わしもさっきからそのことを考えていた。・・おそらく地球人類に対する挑戦か、あるいは威嚇だね」(白髭博士)
「威嚇?」(一平)
「おどかしってこと!」(江戸川記者)
「・・おどかし。何故そんなことをする必要がある?」(一平)
「あたしに聞いたって・・・」(江戸川記者)
「宇宙開発の目的で我々は人工衛星や宇宙ロケットを他の惑星に、打ち込んでいるが、それらの星では大変にめいわくがっているのかもしれんなあ。」(白髭博士)
「しかし、そんなことは言っても、人類の科学の進歩のためには・・・」(万城目)
「必要なことだというんだろう?」(白髭博士)
「ええ、そうです。」(万城目)
「だが、我々よりはるかに進歩した文明を持つ星が無数にあると仮定てみよう。・・それらの星の間では、人間社会に法律や秩序があるように、大宇宙のルールが既に確立されているかもしれんぞ。」(白髭博士)
「すると地球、我々人類だけがそれを知らずに、かってに振る舞っているって言うわけですか。」(万城目)
「・・・あくまでも仮説だがね。」(白髭博士)
「我々も大宇宙の仲間入りをしようぜ。そうしたら・・・」(一平)
「多分ダメね。資格無しっていわれるわ。」(江戸川記者)
「え・・・どうして?」(一平)
「戦争したり、人種差別をしたり、ひどいところではまだ人身売買だって行われているのよ。もっともっと、地球そのものが平等で平和にならなければ。」(江戸川記者)