■ウルトラQ02五郎とゴローs金城哲夫d円谷一特技d有川貞昌

甲状腺ホルモンのバランスが崩れ、異常な発育を示すことが我々人間にもあります。・・そうです。ここは全てのバランスが崩れた、恐るべき世界なのです。・・・これから30分。あなたの目はあなたの体を離れて、この、不思議な時間のなかへはいっていくのです・・・・」


戦時中の日本軍が兵隊の体力回復のために開発したと語られる「アオバクルミ」。それを山奥の研究所から盗み出し巨大化したサル、ゴロー。
サルをかわいがるあまり、エテ吉とよばれる知力の足りない五郎青年とのサルとの交流が主題。
また、日本軍が不利な戦況を好転させようとしたと忍ばれるアオバクルミ、南洋で行われる日本兵捜索など、1966年もまた、戦争の影がぬぐい去りがたくあったことが忍ばれます。


さて、ゴローといえば、森林の上に突っ立っているスチールしか見たことがなかったけれど、この回、Bパート後半の街を徘徊するゴローがこの回の見所。
高くても四階ぐらいしかない地方小都市の、電線が張り巡らせてある目抜き通りを歩くビジュアルが素晴らしい。縮尺が大きく、ミニチュア特撮の醍醐味が味わえます。
重量感たっぷりの瓦屋根の家の屋根を殴って壊したり、蹴って2階屋を半壊させたかと思うと、背中から家に倒れ込む。
電信柱を引きちぎり、電線に絡まりながら控えめに暴れる様は、心が安まります。素晴らしい。
また、ゴローの動きがとってもキュート。サルの動きをすごく研究して演出したのがわかります。


ところで、何の説明もなく、巨大なサルが、ロープウェイのロープにぶら下がっている光景から始まる冒頭は、インパクトがあり、深く印象にのこる。
また、この回、巨大なゴローの手に五郎少年が乗るシーンなどを、光学合成ではなく、(おそらく)実物大の手の張りぼてを重機にかぶせて撮影したシーンも印象にのこるけど、張りぼてのデテールがひどく甘く、動きもぎこちなく、あまり成功しているとは言い難いカンジかな。ここは、残念。


ラストは、関デスクが用意した睡眠薬入りのミルクで、背の高い正面の柱が特徴的な石造りのビルによりかかって眠ってしまうゴロー。
ビルに寄りかかったゴローの顔を画面の中心に据え、カメラの視点を段々あげてゆき、街の奥行きが見えるところで「終」と出すこの場面は名カットだと思った。


◆◆以下メモ◆◆
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・この回、エテ吉のことをキチガイと評している発言が多いみたいで、ファミリー劇場的には音が消されてました。また、南洋の原住民のことを、おそらく土人といっているみたいで、これも同じ。

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・山奥の研究所の博士ふたり。
画面の中では「野猿観察研究所」の看板がでているけど、アオバクルミを所持している、このふたりは一体なにしているのでしょう。
「半月ぶりか・・・やっぱり山はいいな。」
「これからまたふた月も山ごもりかと思うとうんざりだね、おれは。」
「どうだね、この空気のうまさ。スモッグ食って生きているヤツの気がしれんな。」
「そうかなー、オレはもう、ネオンの海が恋しくなってきた。」
「うーん、嘘つけ。恋しいのはそのネオンの海に住む人魚のほうだろう。うん?」
「はっはっはっ、図星でした。」


・ネオンの海が大好きな都会派の黒縁メガネで角刈りのおっさんがすごく味がある。
・この人の、薬品室がむちゃくちゃになっていて、管理を任せていた頭の足りない五郎の襟首をつかんで、問いつめる様子が、ビジュアルに従って狭い心を旨く表現した容赦なさでなかなかいいな。
・サルの仕業とわかってからも、腹立ちを五郎の上に吐き捨てる。
「お前、19になって、留守番も一人前にできんのかっ!」


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・薬品室を整理しているふたり。黒縁メガネさんは松崎というらしい。
「おい松崎!アオバクルミが空っぽだよ!」
「なにい、アオバクルミが?(・・・)・・・まさかサルがコレを?」
「うーん、その可能性は十分あるぞ。見ろ、この箱の開け方を!」
「300個は、はいっていたろう・・・・おい、もしそうだとすると、コレは大変なことだ。」


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桜井浩子の江戸川記者が南洋に行ったと語られていて、何しに言ったのかとおもっていたら、↓これを聞き逃していました。江戸川記者の手紙の一文。
<元日本兵の捜索は、連日ジャングルの奥深く続けられておりますが、未だに何の手がかりもありません。一部では既に絶望しする向きもあるようです。・・・>
1972年にはグアム島で横井軍曹、1973年にはフィリピンのルパング島で小野田少尉が発見されたりしているので、まだ戦争の記憶の濃い1966年としては、敗残の日本兵の存在がリアリティを持ってかたられていたんじゃないかなあ。


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・博士の黒縁メガネじゃない方の人が五郎について語る。
「元天城山に住む炭焼きのせがれですが、両親に早く死なれ、子供の時からサルと一緒に大きくなったような男なんですよ。それで・・あのゴローとは大変仲が良くて。」


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・万城目淳と戸川一平の所属は、新聞社ではなく、星川航空なんだ。


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・江戸川記者と一緒に南洋へいった記者が土産話をしつつ写真をデスクに見せていると
「おい、この写真は?」
「・・おお、それはユリちゃんがとったイーリャン島の大ザルですよ。」
「なにぃ」
「××(おそらく、土人)たちが、島の守り神にしている大ザルですよ。こうしてサルも××のために、ジャングルの奥地や、高い木の上にあるマンゴーなどを運んでくるんです。」
(場面変わって江戸川記者が万城目達を相手にかたっている)
「船が座礁したときなんかも力を貸してくれるんだって××たちが話していたわ」


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・万城目の質問に、アオバクルミについて語り出す黒縁メガネじゃない方の博士。
「大きくなった原因は一体なんでしょう?」(万城目)
「ああ、アオバクルミ。」
「なんすかそれ?」(一平)
「特殊なクルミでしてね。・・・戦時中軍部は衰弱しきった兵隊達の体力増強を計る為に使用したものですが、・・食べ過ぎると・・甲状腺に異常を来す・・危険が、あるんです。」
「イーリャン島のサルも、日本兵が持っていたそのクルミを食べ過ぎたのかしら?」(江戸川記者)