■蟲師11やまねむるs伊丹あきc五十嵐卓哉d五十嵐卓哉そーとめこういちろう峰達也g西位輝実色彩設計岡野国治
「山の主」交代の物語。ユニークな話とビジュアルで面白かった。
この物語の中心設定である、生命の源、「光脈筋」が現れている山は、むせ返るような生命と生気に溢れていて、それに触れるモノは身体をこわす。だから、ただでさえ生命の精華が溢れる秋には、村のモノは禁足されるのだった・・。そんな山に住まう老蟲師。かれはかって、イノシシに宿った山の主を殺して主になったのだった・・・・
人間が山の主をやるにはつらすぎる。先代の山の主を殺した理由を誰にも明かさず、自分が「クチナワ」に喰われることで、山の主の継承を計るという、自己犠牲の物語なのだけど、悲壮さというよりも、淡々としたセリフと雲が消えるような自然現象としての演出で嫌みがなくていいかも。
◇以下メモ。
・山の主を殺して、その肉を喰らうと、新たな山の主になるそうです。
・老蟲師ムジカが、里のみんなに懇願されて「主」になったと言う話が嘘っぽいとおもっていたら、山の主の交代に、期せずして立ち会ってしまったギンコに流れ込んだ夢として、ちゃんとフォローされていました。
・ムジカを好きな女が、ムジカに里に残って欲しいと思い悩んだあまりに、当時の山の主、大きなイノシシを殺して、血まみれでその肉を、食べさせるという・・・・狂気の淵に沈んだ女の人がいい感じ。
・山の主がイノシシだったという絵があったからでもないが、もののけ姫に似たモチーフかも。あちらは山の主、神が殺され、そして神なき世界・文明がやってきた・・・という上段に振りかぶった話だったけど、こちらはもっと生活に近い感じかな。
・冒頭、山に穴があいているビジュアルが面白かった。それをそばを食べながら、ぽかんと眺めているギンコさん。
・光脈筋の現れる山「あまいような、にがいような、むせかえり、皮膚にまとわりつくにおい」爛熟した山の描写がいいかも。
・山に神経のようにはりめぐらされている蟲「ムグラ」。ギンコはこれを利用して山のどこにいるかわからない老蟲師を探し出す。高速で、かさかさと探っていくような絵。
・老蟲師ムジカが雲のように消えるとき、山に張り巡らされていた「ムグラ」も淡く消えていく。
・「クチナワ」が段々と近づいてくる様子を、鐘の音で表現しているのはとてもいい。特に、物語の全貌がわからないAパートからの鐘の音が効果的。
・ラストシークエンスで、山にとぐろを巻く「クチナワ」