■UN-GO_06あまりにも簡単な暗号〜坂口安吾「アンゴウ」より〜s會川昇c五十嵐卓哉d中村里美g出雲誉明小森高博

・監督:水島精二
・ストーリー・脚本:會川昇


◆このシリーズは、正直、古くさい探偵小説の結構であり、「無理矢理な推理遊びのための人工的な現実の突き合わせ」という印象が強く、ひいきにしている會川シナリオでもちょと乗り切れない気分がしていた。


◇しかし、この回の最終盤の展開を見ると、「名探偵もの」「物語の構造」をメタ化する視点が強烈にフロントに出てきています。これはシリーズ後半への期待大!


◆そもそも、海勝麟六という、「事実」を歪めて「現実(物語)」を作る男と、「事実」を明かして「現実(物語)」を壊す男の対決というこれまでの、この物語の構図は、劇中の「現実(物語)」を巡る闘争だともいえる。ここでは、「現実(物語)」は揺らぐが「事実」だけは確かなものだ。


◇しかし、事態はいっそ逆で「事実」そのものが揺らいでいるものだとしたら?「現実(物語)」が「事実」を規定するものとしたら?


◇これが海勝の行動原理なのだろうと思うのだけれども、その思想こそが劇中の物語をしばる世界律だったりすると俄然、話が大きくなる。名探偵の存在についての疑問は、結構使い古されたネタの様な気がするのだけども、どう料理するのでしょうか!


◆◆以下メモ◆◆
「私は小説を書く。ペンでではない、この現実でだ。・・・名探偵の推理により、全ての謎は明かされ、矢島は自分の妻を殺すはずだった・・・。」(自称小説家の囚人)
「なんのためにそんなことを・・・?」(結城新十郎)
「それが名探偵というものの、役割だからだ。・・・どんな冷酷な結果になろうとも、全ての被害者が殺された後に推理を終えるのが名探偵だ。・・・どんな悲劇的な理由があろうとも、全て白日の下に晒すのが名探偵だ。・・・君は私に選ばれたのだ、この世界最後の名探偵として!」(自称小説家の囚人)