■電波女と青春男_09地域限定宇宙人事件sc&d板村智幸g潮月一也高野晃久谷川亮介

原作:入間人間
シリーズデレクター:宮本幸裕
シリーズ構成:脚本:綾奈ゆにこ
総監督:新房昭之


◆恐るべし。・・・原作を読んでいないので、原作がすごいのか、シナリオがすごいのか、監督がすごいのか(人物仕草をつけるコンテか、作画監督か、原画か)、それぞれの相乗効果がすごいのか、わからないのだけれども、1話からこの回までに限定すれば、ある種の極北に達していると思った。


◆シリーズ当初は、真性の統合失調な女の子を描写しているように見え、なんという製作陣の冒険心とびっくりしたものだけれども、3話ぐらいからフツーなコミュニケーション可能のセカイに回帰して個人的には実はすごくガッカリした。


◇3話ぐらいから、当初の統合失調風なコミュニケート不可能なヒロイン美少女は、コミュニケーション可能な風変わりな引きこもりとしてのみ描写されるようになるのだ。


◆しかし、だ。この段階以降では、そのように育ててしまった母親(40歳)が、あっけらかんとした無邪気な幼女の様に描写される様に戦慄することになる。・・・・・第一、これを見て誰が喜ぶのか不明だし、何よりも、極端な精神的な弱さ持つ子供を育てて、誰も責めず、責められず、怨念も、ねっとりとした情念もなく、カラリと乾いている現代ネット的で様式的なセリフが交錯する様に、何かの不気味な不在を感じる。


◇この母親に象徴されるようにキャラクター達は、絶対的に置かれた物語的な関係性をほぼ形骸化して「ただ存在」している。キャラ達の関係は、作者、視聴者にとって都合の良い妄想的なものなのだ。


◆だけど、この「ただ存在している」描写がすごい。


◇この物語は基本的には「主人公高校生男子がまわりの風変わりな美少女達(40歳のおばさん含む)に好かれてアプローチしまくられる」という構造だ。言ってしまえば、妄想爆発のハーレムアニメーションだよ。普通に作ると、こんなのダメ萌えアニメにしかならないじゃん!


◇・・・なのに、毎回毎回、柱となる大きめな物語もないところを、精妙にかつ人工的に構築された不自然な「可愛らしい」対話の積み重ね、それと密接に関連する存在感のある「可愛らしい」仕草作画、描き込まれた「可愛らしい」止め絵作画で、しのいでいく。


◇特に「人工的に構築された不自然な「可愛らしい」対話の積み重ね」が素晴らしいのですよう。小説的な文体で構成する対話が効いている気もするが、近年稀に見る不思議なテイスト萌えアニメ


・・・まあ、結局は萌えアニメなんだけれども。


◆新房監督は、画面演出にしか興味がなく、物語には興味がない・・・というか節操がないけれども、しかしキチンとビジネスベースに乗せた上で面白いモノを作る、その手腕はすごいなあ。。。