■さらい屋五葉02抱かれたいs望月智充c宮地昌幸d曽我準g小森秀人

◆「ヘタレ男もの」とでもいったらいいか、コレはイイ!!犯罪集団の頭目であるシニカルで寡黙な弥一さんもいいが、物語の視点人物であるヘタレ浪人の主人公のさえない様子が心に染みます。


◇かって所属する集団があり何者かであった自分の、しかし今の何者でもない浪人の境遇を、静かに碇のように自分のこころの奥底へ垂らし、都会の暗闇の中で、生きる意欲が薄いながらも、黙って孤独に耐えている様子に萌える。オノ・ナツメの死んだ魚のような独特の瞳のデザインも効果的。



◆この回の話は、そのヘタレ浪人が、得体の知れない犯罪一味に関わっていく様が静かに描かれるます。積極的に他人と関わろうとしない、縁の薄くなっている近代都市の中で、孤独な浪人は積極的に関わってくる人たちにふと気を許す。


◇その居場所が倫理的に許されるものであるかとか、相手は自分の足下を見て利用しようとしているんじゃないかとか、そんな吟味を十分にせずとも、ただその場所があるだけで、こころが安定する。・・・・だけどそういう人たちは、宗教とかねずみ講とかみたいに大抵ろくなものじゃないよね。


◆近世の、明かりのないちょっとした繁華街(というには人が少ない様を描写しているのがいい)とか、路地裏の暗闇とか、木造の狭い食事屋の角っこの闇だとか、アニメーションならではの夜の闇の表現がとても素晴らしい。また、郊外の農村への道とか、口入れ屋に紹介された土木現場などの背景世界の密度もいいカンジ。



◆◆以下メモ◆◆
・弥一、冒頭、薬屋で。
「いつもの薬・・・こちらに。」(薬屋の主人)
「・・・金だ。」(弥一)
「・・・結構な心付けで。悪い患者は多く知っているが、お前さんほど用心している人はいないよ。繁盛なことだね。」(薬屋の主人)
「他言はもちろん、一切の詮索も無し。・・・・頼むぜ。」(弥一)