■クロスゲーム05ナベ貸してくれる?s福田裕子c&d川口敬一郎g近藤雄次

◇この回はいいなあ。すごく好き。
◆じっくりとした手つきで描く日常の時間の運行。大晦日の日の、死せる幼なじみの家、父母が外出で不在の日に、彼女の末の妹が熱を出した一日をゆったりと描いていきます。


◇この回が優れた青春妄想ファンタジーなのは、死んだ若葉のすぐ下の妹青葉に、若葉が全肯定した主人公の、不甲斐ない現在の状態に批判の目を持たせ、しかし末の妹紅葉には、全面肯定させるというサンドイッチ構造にあるよーな気がした。


◇これによって、私達は、感情移入の対象の主人公の良い面を証言する紅葉に、「わかるヒトだけ分かっている」的なカタルシスを感じるし、彼に批判的な青葉が少しずつ彼を見直していくという変容の物語も目撃できるのですもの。


◆あと、青葉が向き合う「希望と優しさに満ちていた死んだ若葉」に関するエピソードが泣ける。死に黙然と向かい合い、それが現在を変えていく。言葉をあまり使わない演出がいいなあ。やっぱり、第一話の幸せな幼年時代をじっくり描いたのが効いてくる。


◆ところで、主人公を、義侠心溢れる私心の無い存在として一貫して描いているけれども、敢えて描写するのを避けている「私心」の部分の描写がすごく欲しい気がいよいよ強まってまいりました。