■ミチコとハッチン21狂い咲きラストワルツs宇治田隆史c望月三郎d望月三郎恒松圭g中井準小森秀人坂本千代子

ミチコとハッチン
◆この回のポイントは、頑なで健気で、凶暴なサトシ相手に強情にも一歩も引かないハッチンですよね(声優さんの生硬な演技を逆手にとってキャラの魅力が最大限に生かされている感じ)。特に、拳銃を向けるサトシ相手に、石を持て立ち向かう姿の強情でいじましいこと!


◇彼女の抵抗や抗議など子供のたわ言と歯牙にもかけず、軽々と体を持ち上げ、物の様にぶん投げ侮るサトシは、だけど、彼女が正論をかざしてサトシと対峙することで、自分が裸の王様だったことにあらためて思い至ってしまう。
エアポケットのように不相応な内省の時が訪れ、ハッチンのいじらしさに心の何かが動かされる時、サトシは自分の自分たる所以の凶暴性と猜疑心を見失い、あり得ない行動に出てしまう。それは、末期へと続く道だった・・・・・


◆場末の路地を舞台に、黄昏の中の警察による追跡劇と徐々に追いつめられていくミチコ。一方、街のチンピラに追いつめられていくサトシ。しだいに二方面から閉塞していく状況が息詰まるカンジで演出されていて、路地の風景の生活感の豊かさも相まって、とてもとても見応えがありました。素晴らしい。
だから、ミチコがハッチンを奪い返す展開に状況打開のカタルシスを期待したら、しかし、それもまた閉塞する状況の一部でしかなかった・・・・悪徳警官に追いつめられて、ああ、どうなるの次回!


◆ところで、凶暴な敵役として設定されながら、ふと気がついてみればサトシはミチコとはほとんど感情の関係性がなく、サトシは実際ミチコを人格としてほとんど意識していない。(ミチコはハッチンをさらわれたのでそれなりだけど。)
いわば、サトシは、ヒロシというプリズムを通してミチコを遠くに感じている感じでしょうか。なんだか、不思議で新鮮なキャラクター配置でした。


◇だから、この回サトシは結局ミチコと決着をつける展開にはならない。お互いに相手の向こうに見える「ヒロシ」しかみていないのならば、戦う理由がないものね。サトシは自分の猜疑心との戦いの中で孤独に死んでいくのでした。


◆そうすると、それだけに最終回、これまで直接描かず、いろいろな人々の心に痕跡を残してきた「ヒロシ」の描き方、「大いなる空白」の決着の付け方に期待が盛り上がるというもの!いったいどーするんだっ