■ミチコとハッチン18あかんたれの弾道サンバs宇治田隆史c&d出合小都美g久保川絵梨子坂本千代子

ミチコとハッチン
◆サンバに沸く街と、関西弁でけったいに演出される「気取ったツラした、いけ好かない」人気俳優の妙なキャラを背景に置き、ミチコの一途なヒロシへの想いによる高揚から、ヒロシを否定されたことによる抑鬱への転落、そしてそれを再び奮い立たせようとするハッチンの奮闘を描くという回。


◇話としてはすごく単純だし、都合のいい展開なのだけど、やっぱり、街々の描写やキャラの造形、音楽にすごく気を配っていて味わい深く、そしてとても後味の良い話。


◆この回は、全編通して、「頭空っぽでもいい。だけど、一途に、そして直感で動け!」という話で一貫していて(ハッチンもミチコに汚染?されてます・・・)、だけど、これに説得力を持たせているのだからすごいや。


◇まず、ミチコですよ。象徴的なのが、ヒロシを捜して、手がかりも無いし、捜す努力もせず、サンパライーゾの街角でただ待っているところ。
「あてとかあるの?」(ハッチン)
「ねえよ、そんなもん。・・・いいかハッチン、よく聞け。・・アイツには才能があるんだ。上手くやっているはずだ。・・だからぜってえ会える。・・アイツがここに来たのはカネのためだ。・・だろ?・・お前とあたしがいるんだからな!手っ取り早くババっとやっているはずだ。」(ミチコ)


◇この頭の軽さ加減(一途とも言う?)に、ハッチンならずとも「・・・・いつものことだ。・・いつものことなんだ。」と頭を抱えずには居られないのだけど、手がかりが向こうからやってくる。この、超ご都合展開に説得力を持たせるために、この作品の製作者は、思いがけず手がかりを手に入れて嬉しそうにハッチンに笑いかけるミチコに鼻血を垂らさせるのですよ。


◇一途だけど知恵なき者の、幸運を掴んだ瞬間の頭に血が上った幸福な高揚をすごく上手く魅力的に演出していると思いました。(この笑顔は後半のハッチンの暴走にも直結します。)


◇そして、行き当たりばったりだけど一途で、そして強運であるというミチコという存在の、「主人公である」以外に理由のないこの展開を、この鼻血ひとつで免罪符にしちゃっていて、このさじ加減が素晴らしい。


◆また、後半のハッチンのコミカルでいて、実は真情のこもった暴走も、明らかにミチコの言動や行動の照り返しじゃないかしら。根拠も余りないのに断言して「・・そういう奴です」という、ヒロシを評したこのセリフが象徴的。
「・・多分、ヒロシは私達のことなんて考えていません。・・・そういう奴です。」


◇ミチコへの一途な好意(「あたし、ミチコの笑顔が好きだ・・・・絶対に取り戻してみせる。ミチコの笑顔を!」)を成就させるために、当たり屋をやったり、手がかりだと見なしている俳優宅へ押し入ったりする無茶苦茶な行動はもちろん、そもそもその関西弁をしゃべる俳優を手がかりとみなすのだってミチコ流の直感以外のなにものでもないよね。


◆・・・ああ、ハッチンどうしちゃったんだ!それでいいのか!・・・と若干思うものの、ミチコへ向ける純粋な好意ゆえの奮闘と、その奮闘を知らずにその奮闘の結果獲得された幸せを静かに噛みしめて微笑むミチコをみて、私は幸福に物語を見終えるのでした。


◆ラスト、サンバににぎわう夜の街の照り返しを受けた関西弁の俳優の部屋で、俳優とハッチンが二人でサンバに会わせて踊るところの余韻もまたいーんだ。


◆◆以下メモ◆◆
・お金を持ち逃げしたヒロシが、持ち逃げ相手に律儀に(少額の様だけど)お金を返そうとしているエピソードの挿入もさりげなくてよかった。


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「あいつ・・・・何しにここにきたんだ。・・・ホントにあいつ、逃げているだけなのかもな。」(ミチコ)
『・・・・そうだと思った。ヒロシはそんな奴なんだ。』(ハッチンの心中)


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「あたし・・フェリシアーノを追ってました。(・・・)ヘンな顔の俳優です。・・彼ヒロシのこと知ってるんです。・・だから、会って、ミチコに話してもらいたいんです、ヒロシのこと。・・多分、ヒロシは私達のことなんて考えていません。・・そういう奴です。でも、フェリシアーノに言ってもらいたいんです。・・ウソでいいから、ミチコのこと話していたって。・・・そしたら、ミチコ、元に戻ると思うから・・・」(ハッチン)


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「そうだ。ヒロシは巨大なトマトも作ったし、モンストロにもいた。・・スカウトだってされたはずだ。」(ハッチン)