■キャシャーン Sins 21失望の楽園s吉田玲子c宮下新平d木村延景g清丸悟齋藤格たかにゃー土河紀夏桜井正明北尾勝総g馬越嘉彦

キャシャーン Sins
◆ルナは確かに滅びを止める。しかし、そこには「何かいびつなもの」があるとキャシャーン達は言う。忠臣ドゥーンの孤独で誇り高い死に様とルナの冷淡さ、死など見たくもないと述べ静かに忌み嫌うルナ、ルナによって滅びから救われた者達の壊れた人形のようなどこかおかしな様子。


キャシャーンはルナに失望し別れを告げ、リューズとリンゴはそのいびつさを直感し、それに取り込まれるよりも緩慢で確実な死を選ぶと決心するのだが・・・・・という展開。


◆前半のルナによる「癒し」「滅びからの解放」が、どのような「いびつな結末」をもたらすのかをずばり直接描くことのないシナリオは、きっと直接描かずに、ルナの斜に構えた人格やキャシャーン達の直感による感情的な反発や、点描する滅びから救われたロボ達のずれた様子から、その「いびつな結末」を想像させようという意図だとは思ったのだけど、(チープなモチーフ(滅びから救われたロボット達の街とか)を使ったシナリオもあって)どーもうまく機能していない様に思えて欲求不満を感じてしまいました。しかし、後半の怒濤の展開が素晴らしい!


◆滅びを受け入れるのが痩せ我慢でしかないということを認識し絶望し葛藤するリューズの悲痛な思いを受け止め、どんないびつな生でも(第一その「いびつさ」は直感による印象じゃないか)死から逃れられるのならばそれは救いだというオージの(リンゴ可愛さに募っていく)我執による叫びを聞く時、キャシャーンは己の不死性を呪い、滅び行く者達の側にいようと願う。そして、キャシャーンは・・・・


◇ラストのボロボロになっていくキャシャーンの静止画による画面演出が、ただごとじゃなく印象的です。


キャシャーン!・・・お前には死の苦しみも、恐怖もないじゃないか。・・・キャシャーン!お前だけが不死身だ!」(オージ)


「滅ぶ苦しみ・・・死の恐怖・・・」(キャシャーン


◆◆以下メモ◆◆
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「ルナ、君が癒しを与えるものなんてウソだ。君は・・・誰も救っていない。」(キャシャーン


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「ドゥーンは拒んだ、私の血を。・・・そして滅びた。死は・・・・存在してはならないものなのに。(・・・)・・死は恐怖、死は闇。・・死ぬことから、・・滅ぶことから逃れることさえできたら、みなずっと幸福に、・・・輝くように生を享受することができる。」(ルナ)
「・・・ちがう。・・違う。・・・だったらオレは、どうしてこんなに苦しいんだ。」(キャシャーン


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「感じるでしょ・・・?表面に錆が浮いて・・・ざらついているの。・・唇も。・・・あたしもあなたのように滑らかな表面が欲しい。・・・だけど、・・あの街で癒しを受けたら、何か自分が変わってしまいそうなの。・・・だったら、このままの方がいい。」(リューズ)


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・オージが語るこの世界の成り立ち。
「かって世界は永遠の命にあふれていた。ヒトも生き続ける術を知り、死というものから遠のいていた。・・・それを疎ましく思うブライキングボスは人間を排除し始めた、その巨大な力で。」
「・・・しかし、人々はルナの元で細々だが生き延びていた。・・細々とだが確実に、ロボットの中からルナを慕うものが現れはじめた。・・それを邪魔と思い、ブライキングボスは、ルナ抹殺を命じた。」
「・・・だが、ルナが与えるのは死だったのだ。・・永遠の命が溢れたいびつな世界に、生きものとしての寿命を与えていたんだ。(・・・)死があってこそ、本当に生きることが出来ると。」


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「過去のルナと今のルナがしている事が違うって言うの?・・・・どうして?」(リューズ)