■ミチコとハッチン17血斗!心さわぐオペラs宇治田隆史c米たにヨシトモd恒松圭g中井準小森秀人g補佐村瀬修功安彦英二猪狩崇

◇1話遅れ。
ミチコとハッチン
◆素晴らしい。物語世界の風俗ディテールと、そこで展開されるドラマと、それぞれが濃密な一編。
剣呑な騙してなんぼの緊張した世界から、なんと健全でほほえましい結末へ着地するのでしょうか。


◆さて、この回は、活力と貧困に引き裂かれた異国の中国人街を、貧困のはっとするような描写(子供をわざと踏ませる女を描いたり)や、異国趣味全開の(中国の)女形公演の夜景やポスター、金魚の溢れる異様な室内風景、下界から照らし出される夜の屋上の道教の神様などの、ツボを心得たリアリティある小道具で彩ります。


◇私などは、この現実感が立ち上る世界に魔法のように心奪われてしまいましたよ。そして、この実在感のある舞台に、ひょいと、冷静沈着で思慮深くて、義侠心に溢れる女形役者のキャラクターを配置するわけです。
声高にその性質を説明するのではなく、行動としぐさで表現されるその人物造形に、私は惚れてしまいました。


◆しかし、後先を考えないミチコの粗暴さと、冷静沈着で義侠心溢れる女形役者の、対照的な危機への対処の仕方と、それぞれが対照的であるがゆえに危難から脱出するというシナリオがすごくいいな。


◇二人には、強いポリシィがあって、如何にふたりが違って見えても、二人は損得勘定を考えず、こころに従って行動するという点で重なっている。だから、二人にそれぞれ付き従う子供達は彼と彼女を信頼するのだ。


◆ところで、この女形役者とその息子の信頼感に満ちた理想的な親子関係がまったくもって微笑ましい!
わたしは、ひねくれもので、物語の中のすべての親子は険悪な関係で描写されるべきものであると常々考えているのだけど、この女形役者の男前さ、そして息子のキャラ造形の裏表のあるチャーミングさもあって、この回は素直にいいなあと思ってしまいました・・・・ありえんな。


◇ラストは、この理想的な親子関係が、不肖の親的立場であるミチコと、ハッチンに照射されるわけだけど、この締め方も良かった。


◆◆以下メモ◆◆
・中国マフィアのボスの人間味が滲み出るダイアローグなどもよかった。特に、女形役者がアヒルを手みやげにマフィアに礼を尽くす様子、中国マフィアの美味しそうな屋上での食事の風景。


・なんと、写真館で写真を撮ってもらう際に戯れるミチコとハッチンさえも、いいなーと思ってしまった私は大丈夫か。心が弱ってないか。


・心の底から尊敬している偉大な父の前では猫をかぶっている、芸ゆえに女装した男の子のコミカルなぶっちゃけ方と、その強気と弱気。