■ミチコとハッチン12煉獄108℃テレパシーs宇治田隆史c&d神楽坂時市g安彦英二

ミチコとハッチン
◆秀作回。ものすごく面白かった。真っ青な昼間の青空や流れ星が落ちる夜の晴れ晴れとした大気のもと、からりと乾いた熱気の感じられる日常に侵入してくる魔術的な幻覚。
もう、ミチコの腹から巨大な魚がでてくるところなど大爆笑ですよ。はらいてー


◆この回は、インチキ宗教パフォーマンス医師のキャラが素晴らしすぎる。そのインチキぶりを力強くコミカルかつ俗っぽくやすっぽく、そして「異物感」満点に時には幻想的に表現し、やがてそれが熱病に浮かされたミチコの、サイケデリックで魔術的な、ドラックをきめているかのような幻視に溶け込んでいく様など、絶妙な構成。


◆この構成による異様な雰囲気を、おしゃべりで孤独で人の話を聞かないオバハンだとか、現金なバイト斡旋の兄ちゃん(歯の欠けた無言の笑顔が絶妙)、おこりっぽいトラック運転手、テレビでやすっぽいメロドラマを演じるヒロシに似た俳優など、異質な手触りの人物によって補強しているような気がしました。


◇そして、病気のミチコの為にバイト(畑泥棒の山賊監視!)をするハッチンの懸命の(しかし間抜けで微笑ましい)行動と、全てがうまくいかない末にぶちきれたハッチンの狂乱!
「まずは、土下座だ!デウスっ!話はそれからだっ!デウス、出てこいっ!」(ハッチン)


◆これら異質な手触りの人物と狂騒的なエピソードで現実を攪拌し、日常に忍び込む魔術的な瞬間を魔法のように演出しています。


◇それもこれも、ベースとなる現実の街の様子(道の石ころから壁のシミまで、トラックに轢かれかかる子供からインチキ医師助手の少年まで)や、ミチコの病気のさま、そこで交わされるふたりの感情の交錯など、ディテール豊かにリアリティをもって描けているからだと思います。そのギャップ、異質感がギャグになり、物語的なカタルシスとなっているのでしょう。たぶん。


◆◆以下メモ◆◆
・インチキ医師のインチキ施術を、熱に浮かされたか、それとも普段から騙されやすいこともあって、ミチコがあっさり信じてしまうのが微笑ましい。
「この宇宙を支配する法則をお前達は知っているか?原因と結果の因果律だ。わたしは、それを破ることが出来る、唯一絶対の・・・・神だ。」(インチキ医師デウス


・ミチコが病気で寝ているのに酒やタバコをやって、それをハッチンにみつかるあたり。ハッチンが癇癪を起こし、ミチコがしおれるシークエンスがツボすぎます。よかった。


・テレビの安っぽいメロドラマにインスピレーションされたミチコのヒロシの浮気幻視。青と赤の鈴木清順っぽい抽象的な背景の色面操作が印象に残った。
「・・・うにゃ、いっちゃうわ、ヒロシ!女博士でやっちゃうわ!」(幻想の中のオバハン)