■キャシャーン Sins 08希望の賛歌s大和屋暁c山内重保d&g伊藤達文総g馬越嘉彦

◆歌を歌うことを生きる目的と語る歌姫ジャニスと対置することで、キャシャーンが自分自身の「殺戮と破壊の宿命」を強く意識し、ひっそりと(彼女の創造性溢れる生との対比で)その惨めさを抱えて去っていくという、ダウナー感満点の好編。


◇特に、ジャニスの生の横溢する歌唱が終わった後、ぽつんと文脈から切り離されたように、説明無く荒涼たる砂漠へ去っていくキャシャーンのシークエンスの寂寥感溢れる終わり方が素晴らしい。
ここに限らずキャシャーンの心情はほとんど語られないのに、引き込まれてしまうなあ。この鬱屈がたまらないや。


◆ジャニスは、皆に待ち望まれて歌うことで彼女自身の生の目的を確認し、身体から溢れ出す実感をもってそれを体験しているんじゃないかな。それは同時に多くのロボ達にひとときの感動と安らぎをあたえるという創造的な行為でもある。


◇一方、キャシャーンは、彼女の歌を聞きながら、ジャニスの歌唱を滅ぼすべく襲ってくるロボ達との「争い」に身を投じる。その戦いの中で、自分がただ戦うために戦っているのではないかという疑念をより強いものにしたような気がします。


◇殺戮と破壊こそが自分の生の目的なのではないか?そう思ってしまったキャシャーンは、ラスト、旅をともにしたジャニスから、ひっそりと身を引くように砂漠の彼方に去っていくしかない。
彼女の輝くように創造的な生の目的に比べれば、自分の生の目的が破壊しかもたらさないかもしれないと考えるキャシャーンは惨めにうちひしがれるしかないんだ。


◆◆以下メモ◆◆
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・暴力ロボに襲われて、歌い出したジャニス。暴力ロボはキャシャーンが始末。
「何故・・・何故あなたは歌った?」(キャシャーン
「あなたは・・何故殺すのです。」(ジャニス)
「殺さなければ・・・」(キャシャーン
「生を得るために、あなたは殺すのですか。私は・・歌うために生まれてきた。だから、歌うんです。あなたは殺すために生まれてきたのですか?」(ジャニス)


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・無敵の自分自身の力について
「こんな力に意味はあるのだろうか・・・?」(キャシャーン
「この世に、意味のないものなんて・・・ない。意味を見いだすのは本人次第。その意味を見つけることさえできれば、人は迷わずに済む。・・私は生きるために歌っている。あなたもいつか、戦う意味がきっと見つかるわ。」(ジャニス)


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「歌姫ジャニス・・・破壊と絶望を振りまく男と、滅びの恐怖をひとときでも忘れさせてくれる女。・・・まるで鉾と楯ね。」(リューズ)