■「紅」11われ思考うs&c松尾衡d市村徹夫gふくだのりゆき中村深雪松本健太郎

北日本の雪深いところに、広大な敷地と独自の歴史を持つ大金持ちの一族がいて、大勢の用心棒を雇っている。彼らは、伝統として戸籍に登録されない女系家族を幽閉同然に囲っていて、血族で婚姻を結んでいる。そこに囚われの身の少女がいる。
・・・・とゆー、どうひっくり返してみてもファンタジーな状況があって、その子供を女二人と少年ひとりだけで救出に向かう。
次々に襲いかかる用心棒達、ナルシスにひとりごちるおぼっちゃま、むちゃくちゃ強い女殺し屋、自己犠牲の女中頭・・・・・


◆このリアリティのカケラもなく、登場人物の理性的な判断が働いているとも思えない状況を、お姫様救出劇的なカタルシスを禁じ手とした上で、なんと驚くことに、何気ない会話の積み重ね、キャラクターを匂わせるセリフの細やかな作り込み、声と作画を合わせての仕草や状況演出でかなり見応えのあるものにしてしまいました。


◇特に、高速道路のサービスエリアで安い食事を取ったり、車酔いで戻しそうと言う真九郎に「殺すわよ」と僅かな親愛とともに吐き捨てる紅香さんの話が象徴的かな。
こうした、本筋と直接響きあわない細かなエピソードの積み上げが醸し出す空気が、外骨格のようにこの作品を支えているのだなあと思いました。


◇この方法論が、ここまでシリーズ通して徹底されるとすごいや。話が少々冴えない回でも、会話や仕草演出の魅力が圧倒的だもの。いままででハズレ話数なし。


◆ところで、この回は、真九郎の、「無邪気で純真」というよりは「精神鈍磨」というべき判断力のなさ、思考力のなさ、精神的な鈍さが目立っているような気がしちゃったな。
格闘術的な弱さとあわせて、まるでヤク中か何かみたいな虚ろさが不気味で実に魅力的。心なしが瞳孔が開いているカンジがして仕方がないす。


◆さて、次回は、カタルシスを味あわせる最終回になるのか、これまでの方法論を貫き通すのか、さてどーするのかとっても楽しみ。