■「紅」09貴方と私とs林壮太郎c松尾衡d菅原静貴g村松尚雄

◆九鳳院家の「珍妙な因習」の理由と来歴が分からなくて居心地が悪いけど、優しい声音とその裏の強迫的な意図とゆー、背反する実兄の感情の表象に身動きできなくなる状況に置かれた幼児の、怯えてしおれて従順に従う様子が、こまごまと良く演出出来ていたのではないでしょうか。


◇こういう親って良くいる様に思う。これまで子供が、大層生き生きと尊大に描かれてきたこともあって、ここでの子供の無力さは、絶妙のリアリティを獲得しているように思いました。


◆ところで、己を頼ってくる寄る辺のない幼児を守れない、真九郎の中途半端さな雄々しさとヘタレ具合が、話としては実にストイックで素晴らしい。


◇真九郎は、自分自身に自信が持てず社会に対して腰が引けていて、ふわふわと生きている。
それを克服しようという強い意志はあるのだけど、しかし、世界の中の自分の存在の正当性についてまったく確信が持てない為に心理的足場が安定せず、シビアな状況での判断の遠近感が狂っているんじゃないかしら。


◇それゆえ、この回では、九鳳院家の「得体の知れ無さ」を警戒する一方、自分の親しんだ卑近な倫理観(お世話になったヒトにはキチンとお別れを告げよう!)を第一の優先事項と考えて、まったくピントのずれた行動をしてしまうのです。


◆それを優しく黙って見守って、自発を促す紅香さんが、実にお母さんな感じですね。
「真九郎が自分でやるっていったのよ。珍しく自分の意見をあたしに言ったの。」
「真九郎にやらせるの。自分の力でやらせたいの。」


◆◆以下メモ◆◆
・紅香さんから真九郎に明かされる九鳳院家の秘密!
「あの子は、九鳳院の者同士が交わって生まれた子よ。九鳳院は同族同士でしか子供をつくらないわ。」
「九鳳院家で生まれた女は成人すると奥の院で生活させられるようになる。・・・外部からは目の届かない場所。それが奥の院よ。」
「あと六年したら紫も成人として扱われるわ。」
「昔はね、今よりもずっと早く成人になったの。六年後に紫も長男か次男の子供を産む女になるわ。」
「子供を産んだ後は妻になることも許されず、世間から隔離されて死ぬまで奥の院に入ったままよ。同族で子供を産んだことを隠すために、男は外の女と結婚して嫁いだ女に本当の母と偽らせて子供を育てる・・・」