■カイバ01名はワープs&c&d湯浅政明g伊藤伸高

・監督&シリーズ構成:湯浅政明
◇シビレタ。超好み。
◆たぶん手塚治虫に源泉を発する、「可愛らしくデザインされた漫画的なキャラ」に加えられる「グロテスクなディテールとメタモルフォーゼ」をビジュアルイメージの前面に押し出した作品。
しかも、電脳化された閉塞世界を舞台にしたディストピアもの。


◇個人的には、まず、主人公カイバの胸に風穴があいているビジュアルと、アニメ黎明期の作品のような、シンプルでレトロなキャラデザ、舞台デザインにやられました。
また、淡々と強烈に異常な情景を描き、一方でスピーディーかつ絵的にダイナミックに主人公の物語を推進していく、緩急のツボを心得た演出的、物語的な吸引力も相当なもの。面白かった。


◆雰囲気のイメージは、手塚作品でいえば、アトムの胸の扉が開いてメカが見えるとか、手足がバラバラになっちゃうとか、錆びて朽ち果てるアトム、或いは火の鳥での可愛らしい漫画的キャラに弓矢が突き刺さる、クビがちょん切れるようなノリ。
最近のヤツで思いつくところでは、西島大介さんとか、富沢ひとしさんが描くマンガ作品の、つるんとしてあっけらかんとした残酷さに近い感触かしら。


◇(それらの作品と違って)本作は、(今までのところ)血なまぐさくはないし、(異常な情景ではあるが)ユニークで可愛らしい話が展開されるのだけど、なんというかある種の「禁断の不健康さ」がにじみ出ている点で共通していると思うんです。
富沢さんの作品は、類似としてあげるには病的すぎるけど、根は同じような気がする。


◇この不気味さ、不健康さが、アニメーション本来の醍醐味であるメタモルフォーゼと相乗効果を発揮して、得も言われぬ魅力を発散しています。


◆とはいえ、行き過ぎると何事も良くなくて、例えば、主人公の「胸の風穴」を、「ロボットのような擬体の子供」が、「おもちゃの鳥」を通して遊ぶ様にはぞっとした。ううう、ここは、生理的にダメ。やめてぇ〜


◇逆に適度な距離感で良かったのが、奇妙な漫画的なビジュアルのキャラ達が、チップ化された他人の脳を、捕獲機械(?)から取り戻して、それを再生機で稼働させるところのユーモラスで、のんきなやりとり。
ここは、その異常な状況を黙って見つめている主人公が効果的でした。


◆この作品、今のところ、今期一押し。次回が楽しみ。


◆◆以下メモ◆◆
・主人公を助けるみんなの顔役「ポポ」が、解説する。
「この星は2つに分かれている。我々はここに住み、金持ちは雲の上にいる。・・隔てる雲は分厚く、簡単には通れない。」
「王は死んだ人間の記憶を蓄積する方法を発見し、広めた・・・。金持ちはカラダを手に入れ生き続け、我々はカラダや記憶を奪われるようになった・・・。」