■墓場鬼太郎07人狼と幽霊列車s成田良美d芝田浩樹g大西陽一

◆この回はなんと言っても、原作では飄々として描かれていた鬼太郎の水神への恐怖(それゆえ全然恐れを感じていないかのようにみえちゃう)を、パニックに襲われる切迫感をもって演出したところが非常に素晴らしかった。
「あ"ーっ、雨がふったら、おしまいだあぁ〜」(鬼太郎)


◇しかし、そんな鬼太郎の精神的逼迫も、三回にわたって愛らしさを披露してきた「ニセ鬼太郎」の死も、そして、前回あれほど猛威を振るった水神すら、ねずみ男と狼人間が、「ガマ令嬢」を巡って繰り広げる奇怪でユーモラスな三角関係に飲まれていく。


◇この破壊力は強烈です。特にガマ令嬢の存在感が凄まじすぎる。
「あっ、また、素晴らしきチャックの音!ぼかぁ、あの音をきくと人生に希望が湧いてくるんだ」(ねずみ男


◇ガマ令嬢に愛を贈る二人に対して、シニカルかつ無責任(託されたラブレターをテキトーに捨てたり)な鬼太郎の言動にも、超癒された!
「ねずみにガマに、狼か・・・。世も末だな。・・いひっひっひっひっ」(鬼太郎)
「どうして気味の悪いガマ令嬢がもてるんだろう・・・?」(鬼太郎)


◆この回も、まったくもって、「とりとめがない」としか言いようがない、原作にかなり忠実なユーモラスで飄々とした「浅い夢のような話の連鎖」が素晴らしく味がある。
アニメーション的には、原話の話の「かたまり」を下手に加工せず、画面と話を畳みかけるようにテンポよくつなげて一気に見せるのがワザなんだろーな。


◆ただ、この回の後半は、「ゲゲゲの鬼太郎」の名作「幽霊電車」(最近読んだ少年マガジン復刻版と幼少の記憶に強烈に残っているのとイメージがちがっていて、漫画版もいくつかバージョンがある気がするのは気のせい?)の原型でもあるのだけど、不気味さがキモになる話で、このユーモラスさは致命的かなあ。
原作に忠実な「お葬式の雰囲気が濃厚」な演出で、実に良くできていただけにものすごく残念。
ただ、原作もこの通りだから仕方がないんですよね。


◆◆以下メモ◆◆
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・原作は、「顔の中の敵」。
・これで、原作「下宿屋」での、夜叉の復活と吸血鬼との対決から始まって「あう時はいつも死人」「吸血鬼と猫娘」「地獄の散歩道」「水神様が町へやってきた」とつづいた、いくつものストーリーラインが混沌として語られた大長編が終了。
・アニメ版は、第2話から、この回、第7話までがこれに相当していて、各話ごとに上手く整理して語られていたんじゃないでしょーか。


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・幽霊列車から飛び降りて逃げ出した人狼(ひとおおかみ)の末路への、あざけるような鬼太郎のコメントが実にヨカッタ。
「うちどころが悪かったんだ。(吐き捨てるように声を大きくして)大学の教養ってのもあんまり役に立たないんだなあ」(鬼太郎)


ねずみ男の優位にたった鬼太郎のお調子者ぶりが愛おしい。
「おい、召使い!肩揉めっ」(鬼太郎)