■墓場鬼太郎01鬼太郎誕生s成田良美c地岡公俊d波多野浩平地岡公俊g窪秀巳

シリーズディレクター地岡公俊
・シリーズ構成:成田良美
◆素晴らしい!!
貸本マンガ版の鬼太郎の再現度の高さが伊達じゃない。
印刷技術が未熟で色数の少ない貸本マンガの色彩、質の悪い紙質までひっくるめて、(前衛的な演出を主張しすぎることなく)怪奇エンタテインメントとして立派に成立する演出をしてしまった。


◇原作の弱点である淡々とした語り口によるメリハリの薄さ(そこがいいのだけどね。)も、この回は「失踪した水木さん」のお母さんの復讐という情念を強調して起伏をつけて綺麗にまとまとめた。


◆しかし、高度成長期にさしかかる前、貧困を濃厚に残した時代に、場末の歓楽街ですれっからしとして斜に構えて世界を見ているといった趣きの<鬼太郎>が、何より素晴らしい。
あたしゃ、コレがみたかったんだよ。


◇それにしても、元祖アニメ版鬼太郎を演じた野沢雅子の熟し切ったヒーロー声でこれほど闇の余韻を表現できるとは・・・・・180度価値を転換してみせたキャスティングの妙も絶賛するしかないな。


◆ところで、貸本マンガ版の鬼太郎は、いつも社会的に疎外感を感じている。次第に支配しつつある拝金主義的な世俗の波に、彼もやがて飲まれていく。
いつもお金が無く、生計の心配をし、「あの世保険」なんてインチキな商売を始めたりする鬼太郎を君は想像できるか?


◇多くのヒトはそれこそを「ねずみ男」の属性と考えるだろう。
もちろん!驚嘆すべき事にねずみ男だけは、この貸本時代においてほぼ現在と変わらないキャラクターが形成されている。


少年マガジンでの連載とともに、経済社会における社会的疎外者としての鬼太郎の属性は分離され、ねずみ男に集中させられることになるのだけど、思うに、この貸本時代の鬼太郎に与えられ、ねずみ男という現在に続くキャラクターに投影された、この<すれた世俗性>こそが、この時代の水木先生の最大の美質なんじゃないかなあ。


◇なので!そこに焦点を当てたシリーズ展開を期待してしまうんだけど、さてかなえられるでしょーか。楽しみ。


◆蛇足。現在、日曜朝にやっているシリーズは毎回失望しか感じないのだけど、この「墓場鬼太郎」に東映動画の底力をみたよ。
これでエンディングが、「カランコロンの歌」だったらカンペキだったのになあ。