■電脳コイル25金沢市はざま交差点s磯光雄松澤洋介c&d野村和也g根津匡覧

◆この回は、(諸星風の)ミチコを含めた、いわば「黄泉の国」のビジュアルが素晴らしい。「黄泉の国」へ「死人」を連れ帰りに行ったヤサコは、この世界が作られた核心に迫っていく・・・


◇猫目とオバチャンが真相をボロボロ語る中盤から、コイルドメインの崩壊、そして「ヤサコの黄昏の神社の思い出」を追体験して新たな謎が湧出する終盤まで、カットを細かく繋いで、この「黄泉の国」の成り立ちの姿が徐々に顕わになっていく「雰囲気」の演出は、音楽相まってかなりのもの。


◇カードが次々に切られていく「感じ」は、見ていてカタルシスがありました。・・・が、すみません、私バカなので、いちいちすぐには腑に落ちず、結局いつものようにメモの山になっております。
いやしかし、状況・・・いや設定複雑すぎるよう。


◆ところで、ラストのヤサコの「黄昏の思い出」の追体験のくだりは、崩壊したコイルドメイン=「黄泉の世界」の中に仕掛けられた、ヤサコのおじいさん、故小笠原博士の贖罪装置が発動したんだと思ったのだけどどうでしょう。(若しくはヤサコのかけている小笠原博士の遺品のメガネかな。)


◇(たぶん)ひっそりと、かって存在していた死者からの、輪郭も危うくなったかそけき意思表示という燃える状況(かもしれない)で、次回最終回にとっても期待。
話の構造上、この世界を仕掛けた(と予想される)人間≒小笠原博士の懺悔と、この世界にすがって生きてきたイサコと、そこに干渉したヤサコの因縁が語られるんだろうな。


◆あと、主人公ヤサコ的には、金沢の旧友マユミのエピソードをちょっと上手くはめ込め切れていない感じがして残念な気がしちゃった。
(友人がいじめられるのを心の痛みを覚えながらも見捨てた)優柔不断で付和雷同で偽善なヤサコが、かっての見捨てた友にそのことを指摘されて、それでもなお自分の意志を曲げない・・・・・という成長を描きたかったのだと思うのだけど。


◆蛇足。
イマーゴと呼ぶ「人間の意識を受信し分離させる超技術」が存在する「この世界」について説明してくれるだろーかとシツコク希望を述べてみる。
でも、多分疑う事を許されない絶対原理という扱いなんだろーなと最近は悟ってきました。


個人的には、第20話で、現実基層にいる猫目さんが「このままでは<世界>が崩壊する」と言っているのにものすごく反応していたのだけど、この回を見ていたら、20話で言っている<世界>は、「ミチコとイサコの存在するコイルドメイン」の様な気がしてきましたよ。


◆◆以下メモ◆◆
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・冒頭ナレーション
「コイルスの資料によると、ヌル・キャリアは始め、心のカケラを集める探査装置だったそうです。」


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・金沢の旧友マユミが語るヤサコ像。
「あなたはいつだってそう。表向きはいい顔して裏では友だちを呼び捨てしたりしている。・・・ちゃんと知っているんだから。・・・ずっと、ずっとあなたのそういうところが嫌いだったの。優しい振りして、でも困ったときは助けてくれなかった。」
「だから、私は自分で何とかしたわ。・・あなたもそうして。」


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・ヤサコを金沢につけてきた猫目。
「金沢にもコイルシステムがあったのか。いま、もし小此木が天沢を連れ帰ったら、空間を維持できなくなる。・・早く始末をしなくては。」
・・・・ここ!単純に「イサコとミチコの存在するコイルドメイン」のことをいっているのでしょう。


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・正常なヌル・キャリアーがヤサコを迎える。
「デバイスIDが確認されました。小此木先生、試験領域にアクセスされますか?」


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・ヌルの本来の意義について、ハラケンに説明するオバチャン。
「意識を失ったイサコの主治医は小此木医師だった。彼はコイルスの電脳技術を引き継ぎ、解明しようとしていた。まさか、ここまでとは思っていなかったようだけど。」
「恐らくヌルの正体は、コイルスが作ったヌルキャリアーという乗り物よ。・・本来は、あっちから情報を引き上げる探査体だったらしい。」
「でも、改造を加える内、電脳コイル現象を利用して、あっちへと意識を送り込む電脳の乗り物として使われるようになったのよ。」
「今までの事故は放棄されたヌルと通路が暴走した結果なのよ。・・でも、本来の機能通りに使えば、恐らく・・・・あの野生化したヌルと同じく通路に入れるはずよ。」


「コイルスは私有地に試験用の交差点を設置していた。・・・古い地名から名前を付けてね。・・それがハザマ交差点。コイルスの金沢支社のあった場所に今もあるはずよ。そして、恐らく通路も。」


「本社が動き始めたんだわ(・・・)・・・・本社はイマーゴと電脳コイルの存在が世間に知られるのを恐れている。」
「あっちの中心部をヤサコごと消す気だわ。」


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・オバチャン配下のサッチーとタケルの妨害でヤサコ追撃に失敗し、タケルを問いつめる猫目。実兄に初めて反抗するタケルに、猫目は自身の背景を縷々説明しだす。
「ヤサコを・・・殺す気だったんだね。」(タケル)
「父さんと母さんの為だ。父さんはイマーゴを開発して世界で初めて人間の集合無意識を電脳空間化したんだ。・・それなのに、メガマスはその発明を奪って、ゴミのように捨てた。僕ら家族全員を。・・それに病気の母さんを救うには父さんの名誉を取り戻すしかないんだ。・・・お前だって分かっているだろう?」(猫目)


「復讐してやる。メガマスをずたずたにしてやる。そのために、ミチコが必要なんだ。(・・・)あのあばずれを利用して世界中のイマーゴのガキどもを意識不明にしてやるんだ。」
「あの空間を維持しなければならない。そのために勇子をミチコにくれてやったんだ。・・・全部メガマスのセイにしてやる。・・・これで奴らも終わりだ。」


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・異界について、ミチコがイサコに説明。
「この世界はもうすぐ滅ぶはずだったの。あちこちが壊れ始めて、私も兄妹たちもみんな死んでいく運命だった・・・でも、あの人が助けてくれた。(・・・)ソウスケよ。この世界を守る為に何が必要かを教えてくれた。」(ミチコ)


「でも、あなたは何も気にしなくていいのよ。この空間が一体何の為にあるのか。・・ナゼできたのか。私にも分からない。でもあなたがここでお兄さんと一緒に、幸せに暮らすことで、この世界は守られる・・・永遠に。」


・イサコの耳に、ヤサコの声が聞こえる。
「耳を傾けてはダメ。勇子。あれはあなた達の幸せをこわす声。」
「勇子、どこにいくの。この空間が壊れたらあなたのお兄さんも死んでしまうのよ。」
「勇子、あなたはこの世界を守らなくてはならない。」
「あの女は、お兄さんと幸せに暮らせるこの世界をこわそうとしているのよ。」


「ご覧なさい勇子。何故あなたがあの子を嫌いなのか。何故あの子を拒絶しなければならないのか。・・・名前を貰ったのはあなただけじゃなかった。あなたにイサコと名付けたように、あの子にもヤサコと名付けた。・・・それだけじゃない。あなたの大事なお兄ちゃんをあの子は、奪ったのよ。・・・あなたはお兄ちゃんを取られたくないという気持ち、あなたがあの子を憎む気持ち、その気持ちから私は生まれたの。」


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・ミチコに言われるまま、「自分の世界」をこわすものとしてヤサコを排除したイサコだったが・・・
「思い出した。・・あの時私はお兄ちゃんと・・消えそうになっていた。そうだわ。全てはあのまま消えるはずだった。」
「思い出した・・私はお兄ちゃんとさよならするはずだった。それなのに。」


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・幼少の頃の黄昏の神社へ繋がる記憶。それを後ろから見ているヤサコ。
・記憶同様、道祖神の祠から背の高いヌルが現れ、並んで歩き始める。
「この背の高さは・・・もしかして。」


・ヌルが、輪郭のぼやけた声で語る。
「私は4423を探してる。そうだ、私はコイルスの医療機で4423を・・・」


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・イサコの叔父がメガバアに見せる「全ての資料」
・天沢信彦の患者番号は4422であり、死亡時期は交通事故の直後であると記されていた。
・そして
「4423とは・・・イサコ自身だったのじゃ」