■DARKER THAN BLACK -黒の契約者-16裏切りの記憶は、琥珀色の微笑み…(後編)s野村祐一c岡村天斎d千葉大輔g小平佳幸長谷部敦志

◆「他者との関係性」と、そこから生じる「感情」を求めて彷徨う者たち・・・・・・このシリーズのモチーフは、こんなカンジじゃないかしら。


◇本来「感情」や「情動」が殆ど無く、合理的な判断に従って、自分ひとりに閉じて生きていると設定されている<契約者>や<ドール>が、「他者との関係性」を持つことにより、いつしか「感情」の萌芽を感じる。
やがて、他者との関係の深まりにより、「感情」や「情動」は成長するが、あるものは「情動」の激しい波濤に呑み込まれ破滅する。しかし、あるものは(ヘイのように)熱い情動の脈動を感じつつ、ひっそりとそれを胸に納めて生きていく・・・。


◇すると、これは、<感情や情動に不自由な存在>をモチーフにすることで、「他者との関係性」から微細に成長してくるもの、つまり情動、あるいは感情を持つとはどういうことか、ワタシが解釈するところ要するに「人間性が生じてくる瞬間」を描いていこうとする大変挑戦的なシリーズなんだなと思うのです。非常にテーマ性が深くて高くて、私的には、こういうのは大好き。


◆しかし、このシリーズには大変高いハードルがあって、<感情や情動に不自由な存在>を如何にリアリティを持って描くか、という点で、非常な困難に直面しているような気がする。


◇実際、感情を持たない存在を描くのって難しい。単なる無口キャラじゃなく、「何をしても、誰が死んでも、特別な感興も、感慨も涌かない、心が動かないキャラクター」に近い存在を描くことには、いまのところ成功していないと思っちゃった。


◇感情ゼロ地点を上手く描けていないので、残念なことに、不意の感情の励起に戸惑う<契約者>や、(この回のマキのように)激情に突き動かされて破滅していく<契約者>に、わたしたちは共感や感動を抱くことがちょっと難しい。(そういった意味では、今のところ、13話と14話の前後編、歌手の女、詩作する男、銀(イン)の生い立ちを描いたエピソードが一番成功している。)あー、志が高いだけに、じれったいなーっ、ううう。


◆さて、物語の展開的には、「感情に目覚めた契約者」が、(マキが言うように)「自分たちを人間と違う優れた存在だと思っている」というのがポイントじゃないかしら。


◇この回、アンバーを中心にした、イブニング・プリム・ローズという<契約者>で構成される組織が登場。
アンバーは、(話の展開から、破滅的な効力を持つと推定される)「流星のカケラ」を手に入れ、南米ゲート事件の再現を狙っていることが語られている。
彼らが、感情を後天的に獲得していくことで、感情を生来的に持っている存在達=人間をどう思って、何がしたいのかが気になるところです。


◇また、アンバーとの出会いは、「どうして契約者のくせに人間なんかに使われているの?」とマキに評されたノーベンバー11にどんな感情を呼び起こしたのか?とか、
あるいは、豊かな感情を胸に秘めていると思われる黒(ヘイ)が、アンバーに殺したいほどの憎悪を抱くのは何故か?とか、
逆に、アンバーのヘイへの愛情を込めた執着の理由や、
アンバーの出現に我を失って、ホァンを(手加減したとはいえ)手にかけたヘイへの組織の追求は?など、今後の展開のドラマ的仕込みはばっちりですよ。


◆◆以下メモ◆◆
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・捕らえたノーベンバー11と対話するアンバーの仲間と、マキ
「どうして契約者のくせに人間なんかに使われているの?・・・僕たちは選ばれた存在なんだよ。・・・契約を結べない彼らは、僕たちを恐れている。・・当然かもね。新たなる力を持つ存在が現れたんだから。・・・これからの世界を導いていくのに、より相応しい存在がね。」(オッドアイの子供、マキ)
「それもアンバー先生の受け売りかな」(ノーベンバー11)
「アンバーはそんなことは言わない。聞いたのは、この街に南米の時と同じ惨劇を・・起こさなきゃならないってことだけ。」(マキ)


「君になら理解できるはずだ。我らが生み出された意味。行動の意味。・・・我ら、イブニング・プリム・ローズは、君を歓迎する。・・・一緒に来ないか?」(アンバーの仲間)
「その仲良しクラブに参加すると、どんな特典がもらえるのかな?」(ノーベンバー11)
「未来。・・・・状況を考えれば、君が取りうる道はいくつもない。合理的に判断し給え。」(アンバーの仲間)


「(・・・)少し前だが、とある契約者に対して、そっくり同じセリフを言った事を言ったことを思い出してね。その時彼はどうしたと思う?なんと、こちらに牙を剥いて襲いかかってきた。・・彼の勝てる可能性などまったく無かったにもかかわらずだ。・・・そんな契約者がいるなんて理解できなかった。・・・一体彼は何を考え、何を指針として生きているのか・・・考えれば考えるほど、分からなくなった・・・・」(ノーベンバー11)



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・黒(ヘイ)をおびき寄せる為にとらえた銀(イン)に語るアンバー。
「彼もね、一度だけ本気で笑ってくれたことがある。・・とびっきり、抜けるような笑顔だった。・・・その時、思ったの。ああ、こりゃやられたな・・・って。あたしはきっと、この人のためなら何だってできるな・・・って。あの笑顔がもう一度見られるなら、なんだって。」(アンバー)


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・アンバーを手にかけようとするヘイ。しかし、アンバーは時間を止める能力がある様子。
「ヘイ・・・私ね、たくさん旅をしたよ。・・時間のあっちからこっちまで、ずっと。・・・会いたかった。・・・ずっと、ずっと、ずっと会いたかった・・・・。」


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・アンバーの仲間。
「お前は、払える対価に限界があるんだ。使い時を考えろ。」