■電脳コイル03優子と勇子s磯光雄c&d横山影利g伊東伸高

一話遅れ。
◇現実に混交している電脳空間だという舞台仕立てや、奇怪で愛らしい電脳生物や電脳ペット、電脳お札や電脳スプレーを繰る電脳装備の小学生達といった、工夫を凝らして魅力的な「電脳づくし」に惑わされているけれども、これは、今や絶滅したに違いない「(俗な情報に汚染されていないという意味での)品行方正で純粋な悪ガキども」の、「尽きることのない路地や境内などの広場での遊び」を、復権しようという試みではあるまいか。


◇かって、地域には子供の遊戯集団がいて、年齢など関係なく徒党を組んで、(たぶん地域によって子供の遊びって名称がちがうと思うのだけど)缶蹴りやドロケイやタカオニといった集団での遊びや、いたずらをしてまわったものです。
彼らには、私有地という概念はなく、道など無いのに他人の家の塀を歩き、裏庭を伝い、秘密の近道を発見したり、廃屋に入り込んで不思議に静寂な庭を見つけたり(池に落ちたり)、倉庫に秘密基地を作って食料を溜めたり(多くが入りすぎて床が抜けたり)、埋まって浅くなった防空壕に入り込んでみたり・・・・ああ、なんかワタシの思い出じゃないの。


ワタシの実家は都内なのだけど、こんな集団が成立していた最後の時期だったんじゃないかなあ。もう、十年のオーダーで、道路で集団で遊んでいる子供すら見かけなくなりましたもの。(都市じゃ、遊べる広場も廃墟も存在を許されなくなりましたけれどもね。そもそも住人のメンツがすっかりかわってオトナの地域社会すら存在しないも同然だしねえ・・・)


◇話はそれたけど、捕まらないように夢中で逃げ回ったり、他人の敷地を勝手に歩いたり、地面に蝋石でいたずら書きを描いたり、メンコやビー玉をしたり、そうやって日が暮れるまで戸外で遊び尽くす・・・・という楽しさに近いものを、(少なくとも三話までの)この作品からは感じる気がする。


きっと、コンピュータ的創造物として描かれるものどもは、子供だけに見える空想の友達だったり、鬼ごっこやドロケイをする時の空想的属性だったり、「縁切った」みたいな空想の能力だったり、自分のメンコに思い入れして仮託する空想の超越的思い込みだったりするんじゃないかなあ。
サッチーが神社や鳥居に入れないってのは、「鬼ごっこのルール」ってことでどうでしょう。鬼が来ても、捕獲から免除される安全な聖域。


◇それに、子供達がヘンにすれっからしじゃ無くてイイや。TVやインターネット等の不要な情報に晒されていない子供達。
電脳空間ものでありながら、俗な情報から遮断されている子供達を描くという意味でも、ああ、これはノスタルジックな物語なのかなぁ。


夕方6時近くのこのアニメーションが、「正しい視聴者」の心に届きますようにと、願わずにはいられない気がした、ワタクシ「正しくない視聴者」なのでした。


◆◆以下メモ◆◆
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・冒頭のヤサコのナレーション
「業界の噂によると、メガネには隠し機能があるそうです。」
「ネットと接続して、いろんな情報を表示する電脳メガネが全世界に普及して11年。」
「でも、この街の電脳空間は普通ではなかったのです。」
「未だ残っていると言われる古い空間。・・様々な電脳アイテムを持っている電脳探偵。謎の電脳生物イリーガル。そして、それらを削除するウィルス駆除ソフト、サッチー」


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・前回も素晴らしかったが、デンスケの恐慌を来しての小走りに萌えた。
・デンスケを捕獲したり、カプセルを疲労困憊で運んだり、メガばあや、サッチーに追われて逃げまどう、モジョの集団行動が、やっぱり萌えた。
・言及忘れていたけど、第一話から登場している「オヤジ」もキュートすぎる。


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・メガばあの仕込みでようやくデンスケから分離した「イリーガル」を見て勇子が述べる。
「まずい・・・通常空間ではイリーガルはすぐに崩壊してしまう」


・黒いモヤモヤの「イリーガル」に鍵の形をした何かを差し込むと、硬化しはじめるが・・・・
「固まれ・・・そのまま固まれ!・・・あぁ、ダメだ。損傷が大きすぎる・・・(・・・)間に合わない・・・あとちょっとなのに。(・・・)・・・・キラバグが・・・・」
空間を切り裂いて爆発。


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・勇子は、何者かとイリーガル消滅について電話で話している。
「ええ・・・やはり通常空間で取り出すのは無理だったわ。起動せずに崩壊してしまった。空間を切り裂いただけでね。・・・それに、これは最初から死んでいたわ。・・・それより邪魔をしたものがいる。」


・メガばあのメタタグを見て、勇子がひとりごちる。
「古流の暗号札か・・・とっくに絶滅したと思っていたが。面白くなってきたわ。」


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・フミエが勇子について述べる。
「アイツ、暗号屋だわ。(・・・)言うなれば電脳空間の魔法使い。(・・・)怪しげな暗号で直接空間をいじって犯罪すれすれの商売をする連中だそうよ。暗号屋はメタバグを集めるためにヤバイ方法を使って空間を掘り返すらしいわ。・・・本当にいるとは思わなかったけれどね。・・・あの暗号屋、何かとんでもない秘密を握っているに違いないわ。・・・私達でさえ知らない、この街の秘密をね。」