■DARKER THAN BLACK -黒の契約者-08五月雨にクチナシは香りを放ち…(後編)s大西信介c五十嵐卓哉d恒松圭g小森秀人

◆ヘイ達のシリアスな<主物語>と、探偵と未亡人のギャグを基調とした<副物語>。この2つは、微妙に袖振れ合うが、意識して峻別されていて、決して交わらない。
◇ギャグから始まり、やがて肉体と情念についての物語となった<副物語>。それが、<主物語>の最後で、「契約者」が「いつも手放さず、嗅いでいた靴下」の裏付けになっているという構図でした。(前編のアバンで、契約者が嗅いでいたのは靴下だった。・・・・未亡人の挿話がなければ、意味不明の状況にしかならないけれども、このように配置されると深い意味があるように思えてくるのが、物語の不思議。)


◆しかし、探偵と未亡人の<副物語>の骨格が、2時間ドラマみたいな流れとオチでガッカリ。
また、(個人的には)このギャグ的<副物語>の世界に、<主物語>的に落とし前をつけて欲しかったのだけど、それは放置されておりました。
(「ギャグの副物語の登場人物は、シリアスな主物語には関わりにならない方がいい」的な探偵の自嘲気味なラストでしたし。)


◇ただし、その中で、未亡人は、ギャグとシリアスの両方の世界にいる多義的な存在で、声優さんの演技(微妙な年増演技が素晴らしい!)もあって、とてもヨカッタ。
探偵と助手は、カンペキにギャグ的な副物語の住人で、どう揺すっても主物語に関わりが無く、個人的には困ってしまった。


◆ところで、探偵と助手について言えば、無色無臭(湿度の高いタバコとか水虫の話はあるにしても!・・・)の人工的な作り物のギャグ的な人物造形を後背に、臭い、体臭という肉感的な身体感覚の話を手前のオチにして、そのギャップを浮かび上がらせようという脚本の意図かなあと思いました。


◇かくして、前回、ギャグ的な副物語の世界に回収されてしまった「ヘイの大食らい」は、死の影の濃厚なこのシリーズの基調への回帰とともに、シリアスな、なにがしかの意味を持つように戻った・・・・・って解釈にしたかったのだけど、(ここだけ切り取ると)あんまりもどっていないような。


◆◆以下メモ◆◆
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・ネコのマオは、戻るべき体を失ったと言っています。


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・ヘイが話しかけるが、ぼーっとしているマオ。
「あ・・・悪い。今、ネットワークから受信していた。(・・・)ネコの脳の不足分をサーバが補っているんだ。時々やらないと、ネコの意識が勝ってこの前みたく、ゴミ屋敷にまぎれこんじまう。」


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・結局、前回と今回の契約者が、化粧品会社の社員から奪っていたアンプルの正体は明らかにされなかったような。
「産業スパイが持ち出し、こいつが奪い去ろうとした、どうせゲートがらみのなにかだろう・・・。」(ネコのマオ)


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「そうか、・・・そうだな。・・ただ嗅ぎたかったんだ。この靴下が元々の自分のものだとしたら、・・靴下に残ったにおいだけが、唯一残された自分の肉体の名残。・・・対価は、たぶんもう支払っている。体を失った時に。・・・俺もそうだ。」(ネコのマオ)