■シュヴァリエ22NQMsむとうやすゆきc山本秀世d初見浩一g窪田庸高

◇うおー、豪快かつ自由自在なストーリーテリングですよ。
ロシア編からおかしいな?とは思ってきたのだけれども、もはや、この物語に、史実を求めてはいけない・・ってことを、ようやく完璧に得心しました。
これは、史劇の要素を若干取り入れた完全な異世界ファンタジーです。(今頃気がつくのもボンクラでしょーか?)
物語のスタート時点で、史上の登場人物の手駒をそろえて、(時代に縛られない)落着点を決めたうえで、人格の初期設定を決め、さあ、史実は若干入れるけど、後は登場人物のモーメントに任せるぜ!というカンジかも。


だから、この物語では、たとえば、1756年から始まる7年戦争は起きない世界なのかも知れない。第20話「殉ずるものと」で、ルイ15世がイギリスと結んだ、アメリカ植民地の割譲条約で、イギリスとの間の植民地ぶんどり合戦は回避された世界なのかもしれない。・・・・・あー、だからか、劇中で結ばれた条約の内容がほとんど語られなかったのは。史実と少しずつずれていく様子を、視聴者にあまり悟って欲しくなかったのかも知れないですね。
また、例えば、フランス革命は、1789年には起こらず、この物語の結末に起きる事件なのかもしれないし、そもそもこの作中年代は、(ワタシが想定していた)1755年じゃないのかもしれないですし。


◇・・・というこの物語の作りは、なまじ<史劇のフリ>をしているだけに賛否両論かも。冲方さんを始めとした創作者は、史実や、史実の登場人物が、史実と違う経路や末路や行動をとることに、意外性を求めているような気もするが、あはは、この辺りの史実に詳しくないワタクシなどは、全然意外じゃないし(無知は力?)、逆に、うんうん、ポンパドール夫人やマリー王妃は、同年に死んだのか!などと信じてしまうじゃないですか!


<史劇のフリ>或いは、<史実から逸脱した歴史物語>は、大いに結構。そもそも、残された歴史文献から、当時の人物の正しい造形や心理的力動を復元するなんて不可能だもの。
ヒトが書くモノの、自分が書くモノの、一面的な事物の解釈を想起すればわかるでしょう。たいていバイアスがかかっていて、描写されたものの正しい姿を復元することは無理というものです。
ましてや、僅かしかない残された歴史文献を元に復元構築された、史上の人物の人柄は果たして当てになるモノか・・・・だから、定説とは違う人物造形は、まったく正しい創作態度だと思うのです。


だけど、ワタシの思うところでは、やはり最低限の<歴史年表の枷>あってこその、<史劇のフリ>だとおもうんだけどなー。考え方が古いのかなー


◇さて、主要登場人物の大量退場で、もはや<ラスボス=「ルイ15世」 若しくは「マクシミリアン」>の二択ですか。ここから先は、どっちがより上手なのかってのが興味の焦点かな。
なんか、(余りに定番だけど)マクシミリアンが、忠実なフリをしていて最後にルイ15世を裏切る気がするな。あと、シリーズ通して影が薄いデオンくんが主人公らしいところを如何にアピールするかもポイントかしら。女装はどこいった!


◆◆以下メモ◆◆
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・結局、テラゴリー先生は、息子の事情を明かすことなく、ルイ15世に一矢報いることもなく、あっさり死んでしまいました。ううう、あっさりしすぎです。じいさんには、もっと活躍して欲しかった。


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・ポンパドール夫人は、マクシミリアンの詩の力で、首の骨を折られて死亡。宮廷にあがる野望のために、その手にかけて殺されたと語られたドクロ嬢さんはその腕に抱かれて成仏した様子。
・Bパート冒頭あたりで、ポンパドール夫人の葬列を見ながら、側近のブロリーがルイ15世に「万事ぬかりなく手配いたしました」と言っているので、マクシミリアンくんは、ルイ15世の手下として動いているのでしょーか。


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・ロビンが、今まで持てなかった<王家の詩>を持てる様になったのは・・・・・死亡フラグじゃないかしら。


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サンジェルマン伯爵は、マリー王妃の<詩>の力による魔術合戦で敗北。マクシミリアンの意を受けた、ロレンツィアにトドメを刺されてしまいました。
・ここでも、王妃に助太刀するのは、マクシミリアンで、やはりセリフを見ているとルイ15世に近いような印象を受けるので、マクシミリアンくんは、当初から変わることなくルイ15世の僕として動いているの??


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・<王家の詩>の秘密を知ってしまったと思えるマリー王妃を、ルイ15世は自らの手で毒杯をあおらせて亡き者に・・・。その忠実さと愛に躊躇ったりする描写はあるが、ワタクシ的には「けっ」てカンジでした。ごめんなさい。


・マリー王妃とルイ15世の対話で、どうもリアの下手人が、絞り込まれてきたようです。
・デオンの脳裏にフラッシュバックしたワインの描写は、↓この対話に係っている気がする。
「読んだのか?」(ルイ15世)
「はい・・・陛下の孤独を少しでも知り、分かち合えればと。・・・陛下は、変わらず陛下です。」(マリー王妃)
「・・・・・・・・・乾杯しよう。」(ルイ15世)
「その前に、一つだけお聞かせください。・・これと同じモノを、陛下は忠実なる臣下に、飲ませたことがおありですか?」(マリー王妃)
「・・・・・・ある。」(ルイ15世)


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・王家の詩を書き写した文書を読むデオン。
「<ルイ15世。汝愛多き王として民に求められ、沈黙と怠惰とによって平和を保つであろう。・・・ルイ15世陛下・・・その側近マクシミリアン・・・・>
・・・わからない、この記述のどこに、私達が死ななければならない理由があるというんだ?」(デオン&リア)


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・再び、マリー王妃とルイ15世の最後の対話。
・↓どーやら、<王家の詩>を紐解くことで、権威の源泉<王権の血脈>が、怪しいってことが明らかになるってことみたいですね。ルイ15世の項目だけを読んでいたのではダメみたいだ。
「どうか、彼等の命を奪うことだけはお許しください。デオンとロビンは、祖国の為に精一杯尽くした者達です。・・・・・・彼等は何も知りません。たとえ、その血筋がいかなるものであれ、陛下はフランスそのもの。全ては元のまま、真実は永遠に陛下だけのもの。」


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・うっかり、夫婦二人の食事の惨劇の場を目撃してしまったアンナに、剣を向ける無表情なルイ15世・・・・・で次回。やっぱり、今までの幸せ描写は、死亡フラグ