■のだめカンタービレ01LESSON1s金春智子cカサヰケンイチd秋田谷典昭総g&g都築裕佳子g補佐井本由紀岸友洋

◇二宮知子さんの原作マンガの、練りに練ったコマ割による、神が降りてきたのではないかと思うほどのギャグの炸裂具合を、むちゃくちゃわたくしは評価しております。(むむむ、誉めすぎ?)
(おそらく)相当のこだわりをもって、構成していると思われるコマや画面の構成は、最高のタイミングでのギャグ描写の挿入はもちろんのこと、物語全体としてのリズミカルなノリの良さを生んでおります。特に、日本編を一挙に読んだ時の、心地よさ、爆笑具合は、至上の時間でした。
ドラマやアニメーションでしか、ご存じない方は、是非、マンガ原作をお読みになることをおすすめします。


◇・・・・と原作礼賛がくれば、大方の予想がつくと思いますが、アニメーション版のガッカリについて記述することになるのかな。
つまらなくはないけれども、(ギャグ作品としては)原作ほどのインパクトがないと思いました。
ちなみに、私的には、「のだめ」は、「クラシック音楽をテーマとした物語」というよりも、純粋な「ギャグ作品」として評価しています。
ですので、かなーり、特殊に偏向した印象記述であることを、まずお詫びしておきます。アニメ版、好きな人、ごめんなさい。


◇さて、これはですね、ひとえに、(映像作品の宿命として)演出に<時間>が導入されてしまっている為だとおもいます。
二宮さんの原作マンガは、ギャグのポイントとなるシーンが浮き立つように、あらゆる場面で冗長になりがちな<時間>を省略し、自由自在にシークエンスをデザインし、伸ばして縮めて、メリハリつけて物語を我々に提供してくれています。
対して、アニメーション版は、この<時間>の為に、間延びした印象が残る。


◇たとえば、演奏のシークエンスひとつとっても、のだめがピアノを弾くシーンとなれば、キチンとピアノを弾いていることを映像作品では示さなくてはならない。
(極端に言えば)音のないマンガでは、ひとコマで済むところを、十数秒にわたって演出する必要が出て来るわけです。


すると、その時間の間、(一つの物語を語っていく以上)演出としては、人物の表情なり、セリフなりを挿入して、ドラマを構成していかなくてはならない。(演奏だけを純粋に流すという方法論もあるのだろうけど、超難易度が高いのではないだろーか。)
これが、辛い。


◇演奏なんて、人物、そんなに動かないじゃないですか。下手すると目をつむって、アタマを左右に振るのを十何秒も演出していかなければならないんですよ。
合間に、心情の独白をいれるとしても、見応えある場面として構成し、視聴者に退屈の時間を与えないなんて芸当はなかなかできるものじゃないと思います。
そして、第一回は、案の定、間延びした印象を与える画面が、頻出していたなーと思ってしまいました。


◇また、さらに、そんな時間感覚的に苦しい中に、二宮さんのマンガに特徴的な、<一枚絵にギャグを濃縮する>技法が、そのまま挿入されてくると、もう、なんというか、(私の個人的な印象では)痛々しいカンジすらしてしまった。


マンガ原作においては、<一枚絵にギャグを濃縮する>場面は、本来であれば、ギャグのハイライトだと思うのだけど、アニメーションの間延びした時間の合間に挿入されるそれは、非常に印象が薄くなっちゃっています。
この場面こそが、マンガ版のギャグの味わいの相当部分を占めるので、アニメーションでは、必然的に、ギャグ作品としてのインパクトや印象がうすくなってしまうのかなあ。うう、難しいよ。


■ところで、私は実写ドラマ版は見ていないのですが、この<時間問題>は、演出しだいで、実写ドラマなら実は問題にならないかもしれない。


◇アニメーションは、一画面、一動作、一シークエンス、全てを徹底的に設計してデザインすることから成り立っている映像作品だと思います。(どんな何気ないシーンでも、すべからく絵に起こさなくてはならない。)
対して、実写作品は、(作る人間の志が低ければ)だらーっとカメラを回しているだけでも、映像として成り立ってしまう。


◇実は、私の個人的な認識(思いこみ?)としては、(実写映画は別格として(もちろん例外はたくさんありますが・・・))日々消化されていく「テレビの実写ドラマ」は、(同じく日々消化されていくにせよ)「テレビアニメーション」よりも、映像作品として質が低いのではないかという思いがずーっとあります。
これは、「画面がデザインされているかいないか」、ひいては、「理知的であるかどうか」という点において、テレビアニメーションが上なんじゃないかなー、はるかに知的リソースが注力されているんじゃないかなー、という(私の個人的な)感想によるものですけれども。


◇さて、この、<一場面、一場面を徹底的にデザインする>という、アニメーションの性質が、この「のだめ」においては(第一回を見た限りでは)裏目に出ている感触がします。


だってさー、動きがない場面を(アニメ的に落差の大きい動きで)動かす訳にもいかず、劇場アニメばりの細かい人物芝居をつけるだけの制作リソースも期待するのは難しいし、じゃあ、こまめにカットを変えて場面を繋いでいけるかというと「室内」という限られた舞台なんですよ。演出は往生しますよ、きっと。


対して、実写であれば、俳優さんのビジュアルで持たせることができると思う。
表情も豊かにつけられるだろうし、女優さんならいうことないかも。加えて、こだわりの撮影デザインがあれば、十分に場面がもつよなあと思いました。


◇さて、うーん、この作品は、アニメーションには、非常に分が悪い感じがするなー。まともにドラマやろうとしているから尚更かも。もっと(実写では決して出来ないような)ギャグよりにチューニングしたほうがいいとおもうんだけどなー。