■コードギアス 反逆のルルーシュ13シャーリーと銃口s吉野弘幸c深海曜d秋田谷典昭g新保卓郎高瀬健一g千羽由利子中田栄治

◇上手い展開。面白かった。
原理主義者の理想の実現の際に、その原理主義的原則が適用される範囲はどこまでなのか?というテーマ。そのラインを巡って主人公ルルーシュは逡巡する。


◇この物語世界で語られるルルーシュの「原理」の中心は、「母を殺した皇帝一族と、それを公然と見逃した父帝への復讐」。
しかし、それだけでは物語内においても、ヒトビトがついてこないので、表向きは、「占領された遠未来の日本(=エリア11)のブリタニア帝国からの解放」そして、究極的には「世界帝国であるブリタニア帝国の破壊」とヒトビトに思わせています。


これらの目的を遂げる為には、ルルーシュは腹違いの兄を目の前で銃殺したりもするし、ブリタニアの軍人もまとめて土砂の下に葬ることも辞さない。また、自分の作戦で駒のように使ったゲリラの死に涙を流したりはしないし、この回のように、(政治的な連携は一切無いが)味方の勢力を自分の組織の為の積極的な犠牲にすることも避けることはない。
自分の原理を徹底するためには、いかなる人間の死も厭わないというスタンスでやって来たのでした。


◇ところで、ルルーシュの場合は、「占領された遠未来の日本(=エリア11)のブリタニア帝国からの解放」という政治的、思想的な主義主張があるわけではないですね。
その原理の中心の性質は、ずばり「私怨」
この純粋な「私怨」を晴らす為に、大勢のヒトの家族を不幸に突き落としているのだから、ひどいですね。政治的、思想的な主義信条があれば、まだ死んだヒトビトも浮かばれる気がする。
また、ルルーシュ自身の死んだヒトビトへの「脳内供養」も、「私怨」だけではそのうち破綻しそう。
(その点、黒の騎士団のカレンさんは、自分の主義主張に引き寄せて、シャーリーの父親を「脳内供養」しています。(日本解放の大義のためで仕方がない・・・みたいな。))


◇こういうルルーシュの人物像は、即座に、「主義主張を徹底して理想世界を建設するのだ」的な人物が悪役として扱われて、「正義の主人公」に倒され、その悪役の人間らしさを表現するために、その「私怨」的な要素が提示されるような物語の定型テンプレートを思い浮かべてしまいます。
また、それを一ひねりして、その「悪役の主義主張」が現実世界の理想を反映していて、結末として、「倒された悪役」の方が、「善玉とされた(ヒューマニズム溢れる)主人公」達よりも正しかったのではないか・・・・という変則的な余韻を残す結末の物語も近年は多く作られているかしら。


このシリーズのポイントは、(悪漢物語など、「悪役の格好良さを徹底するベクトルの物語世界」と違って)、「普通の常識的な倫理基準を元にした物語世界」でありながら、そうした悪役的な人物像を主人公に持ってきている点かな。
主人公ルルーシュの出発点が、徹底して「私怨」なのも、悪役感をもり立てます。


◇さて、そうした私怨を晴らす為には手段を選ばないはずのルルーシュの前に、「幼なじみの女の子の家族の死」というモノを置いてみたのが前回と今回のポイント。


この物語は、いままでの展開を見るところ、前述の様に「(悪漢物語など、悪役の格好良さを徹底するベクトルの物語と違って)普通の常識的な倫理基準を元にした物語」の様に見えるのですが、この事態に対するルルーシュの対応が、今後の物語の方向性を決める重要な分岐点かも。


◇彼の行動の原理(手段を選ばない「私怨」の実行)が、彼自身が「身内」と認める人物に例外を作るのか、作らないのか。
この回では、幼なじみシャーリーさんの父親の(ルルーシュの行動に起因する)死は、その原理の例外だったことが語られていてルルーシュは苦悩しています。
そして、一旦は、「修羅の道」と自分に言い聞かせ、自分の「原理」の徹底に努めようとする心のウチが語られるのでした。


◇ですが、物語はここで終わらない。
Bパートラスト、父親を「ゼロ」に殺された、幼なじみの女の子シャーリーを、「ゼロ」として振る舞い、敗れて傷つき倒れ伏すルルーシュに邂逅させるのでした。
次回への強力な引きで、素晴らしい。


シャーリーは、父の敵がルルーシュだったと知り、父親の復讐に心を燃やすのか、それとも、幼なじみの情愛に引き裂かれるのか。
一方、ルルーシュは、自分の正体を知られて、あまつさえ銃口を向けるシャーリーにどのような原理で接するのか。(ギアスの力で「記憶をなくさせる」というのは反則ですよ!)


この物語の「物語的な重さ」が試される展開かも。個人的には、ヘビーな展開が好みなんだけど、どうするのでしょーか。
次回が非常に楽しみ。


◆◆以下メモ◆◆
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・OPとEDが変更。OPの歌い手さん、blood+の第4期OPの時も思ったけど、私には「理解不能」です・・・・時代に取り残されているのでしょーか。


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・C.C.さんは、ピザの食べ過ぎで、景品をもらった様子。(ルルーシュの逡巡をなじるシーンで抱えている縫いぐるみ)


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ルルーシュの感謝の言葉の数々にぐらついて、彼に若干の愛着を抱いていることを反芻しながら、学園を出て行くC.C.さんが呟く。
「私は・・・もう同じ失敗を繰り返すわけにはいかないのに。」
・そんなC.C.さんを追跡するサングラスの男


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・日本解放戦線の逃亡船に爆弾を仕掛けたのは、ルルーシュ自身でした。(逡巡するカレンと対話する倉庫で、ウェットスーツを脱ぎ、水をぬぐってます。)


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・日本解放戦線が、船での逃亡とともに持ち出そうとした「流体サクラダイト」は、爆発しやすいらしい。


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・黒の騎士団に入っているテレビ局のディートハルトさんは、面白い映像をとることだけならば、どんなことも犠牲にするフェチなヒトなんですかね。非常にいいカンジに狂ったキャラクターであることがこの回明らかになりました。
・日本解放戦線の逃亡船を爆破し、混乱に乗じてコーネリアの陣に攻め入るゼロを見て叫ぶ。
「やはりゼロは素晴らしいき素材。・・カオスの権化だ。もっと・・・もっと見せてくれ私に!あなたの主観に満ちた世界を・・・くはははは」