■ウルトラQ05ペギラが来た!s山田正弘d野長瀬三摩地特技d川上景司

「吹雪に包まれた南極大陸。・・・そこには、未だ分からないいろいろな謎があります。南極基地に起こった恐ろしい事件に、皆様をご案内いたしましょう」
アバン冒頭から、OPにかけての、流氷をかき分けて航行している船のゆったりゆれるミニチュアに非常にツボをつかれた(ラストの船が去っていくところも。)。光学合成で、船の舳先に、巨大感を過剰に強調した、崩れる氷山のミニチュアを映したところも印象に残るかも。


◇さて、Wikiによると日本初の越冬南極基地である昭和基地が建造されたのが、1956年出発の隊によるもので、1957年2月らしい。
有名なタロとジロの置き去りは、1957年出発の第二次観測隊でこのときは悪天候で越冬を断念したそうです。
南極観測隊は、1961年出発1962年帰還の第6次までで中断し、1965年出発の第七次観測隊で復活して現代にいたる。


その辺りを踏まえて、1966年1月放送のこの作品を考えると、時期的に非常にタイムリーだったことが伺えます。
再開した初回の第七次観測隊が、まさに出発して南極に到着したころに放送された。


劇中でてくる「3年前に」行方不明になった野村隊員、犬のサブローは、3年間中断していた南極観測を踏まえてのことみたい。
サブローが、当時もきっと有名であったろう、タロとジロを踏まえているのは、書くまでもないか。


◇しかし、当時の極地は、ヒトビトの目から完全に隠された、とても魅力的な秘境だったのだろうなあというのが、この作品を見て思うことでした。
初見での、私のこの回の感想は、「うーん、南極の越冬基地なんて地味だな〜」というカンジでしたもの。


大衆が未だ見ぬ極地の情景〜流氷を破砕して進む観測船だとか、一面白色の銀世界、雪原を行く雪上車、氷に深く埋もれた野村隊員だとか(1960年に遭難して行方不明になった隊員がいらっしゃったみたいです)〜は、当時のヒトビトがまさに見たくて切望した情景だったんじゃないのかな。


◇しかし、この回は脚本的に非常に弱いのが残念。ペギラの存在の意味や、その能力の「反重力発生」を上手く物語にとけ込ませることが出来ませんでした。
結局、ペギラを「嫌いなモノ(ペギミH・・・)」で追い払っただけというのも、カタルシスやドラマ性に欠ける気が。(亡き野村隊員の婚約者の活躍というドラマはありますけど・・・・)


また、本筋の「ペギラの異物感」とあまり関係ない何でもないシーンで、スリラーっぽく恐怖を盛り上げようという努力がこの回では目立っていたかも。(瀕死で基地にたどり着くイトウ隊員がすっと建物の中に入ってくるシークエンスとか、イトウ隊員と久原さんが二人だけの時にイトウ隊員が錯乱して暴れ出したりとか)
これもあまり成功していない気がしてしまった。ごめんなさい。


◇ところで、この回の思いがけない見どころは、久原洋子さんを演じた女優の田村奈己さんの美しさかな。非常に整った顔立ちで、この方が一番印象に残りましたよ。


ラストの石坂浩二のナレーションも、イマイチ盛り上がりに欠ける。
「どんな動物にも、必ず嫌いなモノは一つはあるモノです。もしあなたも怪獣に襲われたら、なにはさておいても、まずそれを探すことです・・・」
・・・・うーん?


◆◆以下メモ◆◆
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・船の揺れに大袈裟に反応して、この回のゲストヒロイン久原さんを押し倒す万城目さんに爆笑。サービスしすぎですよう。


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・Aパート冒頭のヘリのミニチュアが着陸する様を俯瞰で見上げるショットの操演が決まっていた。


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・隊長と万城目さんの会話。
「君はこの前の越冬隊で行方不明になった野村隊員の失踪の原因を突き止めたいんだろ。」(隊長)
「どうしてそれを」(万城目)
「来る前に一ノ谷博士に聞いたよ。」(隊長)


・隊長に、野村隊員の残された手帳を手渡される万城目さん。
「事故の原因を早く突き止めて、対策を立てないといつ第二第三の犠牲者がでんとも限らないからね。」(隊長)
「『午前三時また聞いた・・・・ペギラ』・・・・ペギラ、何のことだろう」
「うん、だから調べて貰いたいんだ。」(隊長)


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・久原さんを万城目さんに紹介する隊長。
「紹介しよう久原洋子隊員だ。我が日本基地では初の女性越冬隊員だ。極地医学専攻のドクター。」(隊長)
「きのうはどうも。」(久原さん)
「やあ、・・・ふるさとの土は、まきましたか?」(万城目)
「・・・いいえ。」(久原さん)
「なんだ。もう、自己紹介ずみかあ。」(隊長)
「あたくしの患者第一号なんです。」(久原さん)
「ふうん」(隊長)
「あの・・・実は医薬品の運搬を急いで貰いたいんです。みんな防寒服を通して凍傷にかかって居るんです。」(久原さん)
「防寒服が効かない?」(隊長)
「ええ、どうもそうらしいんです。・・唯の寒波じゃないみたいなんです。」(久原さん)


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・雪上車が巻き上げられて乗っていたイトウ隊員が行方不明になるという事故が発生。
「信じられん・・・4トンもある雪上車が紙っぺらのように舞い上がった。」(隊長)
「風速300メートル以上の風が吹いた場合なら、無重力に近い状態が出現することも考えられますが・・・」(隊員)
「今日の最高風速は、52だ。」(ヒゲの隊員)
「イトウ隊員には気の毒だが、そのために他の隊員を死なせる訳にはいかん。・・気温が上がり次第捜索を始める。」(隊長)


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・唐突に自説を開陳し始める万城目さん。ヒゲの隊員がやけに突っかかっていきますが、むべなるかな。どう見てもヒゲの隊員のほうが正しい。だけど展開上仕方がないよ。
・このヒゲの隊員の<それがどうしたというのかね>は、未だこの後にも出てきます。若干ギャグになりそうなんだけど・・・・・・・・笑い損なった。
「3年前、野村隊員が行方不明になった時も、異常寒波に襲われています。」(万城目)
「それがどうしたというのかね」(ヒゲの隊員)
「これは仮説ですが、野村隊員は寒波と同時に別の何かを発見し、それを確かめる為に・・・」(万城目)
「氷原にでていって今日みたいに舞い上がったと言いたいのかね。」(ヒゲの隊員)
「ええ。」(万城目)
「物事はもっと科学的に言って貰いたい。・・・私は雪上車が舞い上がったのも錯覚だと思っている。」
「・・・錯覚?」(万城目)
「蜃気楼と同じ原理だよ。雪上車がクレパスの割れ目に落ちていくのが、・・・空気中の氷粉に映った。・・・それを見たんだよ。・・いや、野村くんの時も探し方が悪かった。あの辺りは、氷河のはずれで特にクレパスが多いんだ。」(ヒゲの隊員)
「しかし、野村隊員は、午前三時に犬と一緒に基地を出て、・・・何故そんな時間に危険を承知で出かけたのか。・・その理由が分かれば、今日のイトウ隊員の謎も解けるかも知れません。・・・その時彼は、生物学者としてどうしても見逃すことが出来ない何かを知ったのです。・・・だから出かけたと思うんです。」(万城目)
「それが何だというのかね。」(ヒゲの隊員)
「分かりません。・・彼に従って、仮にペギラと呼んでもいいでしょう。」(万城目)


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・中盤の基地の格納庫で夜中、思い立った万城目が雪上車で失踪ポイントへ向かおうとして、手元の磁石の狂いに戸惑い、怪しい人影〜結局は久原さんだったのですが〜を目撃する場面。
・格納庫で、雪上車が浮遊するシークエンスが、演出的に謎すぎる。ペギラは反重力を発生するという設定がこの後、明言されるのだけど。(このシーンの最初と最後に、こっちへ向かってくるようなペギラと去っていくペギラが挿入されているけれども・・・・)


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・Bパート。帰還したイトウ隊員のうわごとを聞いた久原さんは、誰に告げることもなく野村隊員の失踪ポイントへ向かう。
・このあたり、先行した久原さんを雪上車で追いかけるところ、雪上車が氷上を走る様子をミニチュアで表現したところもヨカッタ。キャタピラ感がいいカンジです。


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・隊長は、犬を発見。側に久原さんが気を失って倒れているのに、犬の方に真っ先に関心がある。脚本的な役割分担なんだろうけれども。
「やっぱり三郎だ。・・・3年前、野村隊員と一緒にいなくなった犬だよ・・・・よおく生きていたなあ。サブっ、サブッ、サブッ」


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・現れたペギラの氷の息で車ごと吹き飛ばされる一同。うーん。これはこの後の隊長との問答で、息で吹き飛ばされたと言うよりも、反重力的な何かで吹き飛ばされたという話なのだと分かるのだけど、この時点では、息に吹き飛ばされたんだなと思って、茫然としましたよ。


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・共に吹き飛ばされて無事を確認する万城目と久原さん・・・・
「なんで、こんな冒険をしたんですかっ」(万城目)
「結婚するはずでしたわ・・・・野村さんと・・・」(久原さん)
「野村隊員と・・・それで越冬隊に志願したんですか?」(万城目)
「自分で確かめたったんです・・・サブ、お前はずっとあの人のこと守っててくれたのね。」(久原さん)
「アレがペギラだったんだな・・・」(万城目)
「ねえ・・・どうしてサブだけ3年も生きていられたのかしら。」(久原さん)
「そう言えば、サブの鳴き声に、ペギラ・・怯んだようにみえたな。」(万城目)
「何故、ペギラはサブがキライなのかしら?・・・・これはなあに?コケじゃないかしら?」(久原さん)
「うん」(万城目)
「調べてみますわ。・・サブがどうやって生きていたか。」(久原さん)
「うん・・・・ああ、・・・・・あ、ペギラはこのコケが嫌いなのかも知れないぞ。・・その証拠に、この氷原には入ってこなかったじゃないか。」(万城目)


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・基地に戻ってきた隊長が、唐突に真相を語り出します。
ペギラは、中心点でマイナス130度の冷凍光線を吐き、・・その際反重力現象が起こる。」(隊長)
「反重力?」(黒縁メガネの隊員)
「一時的に重力が無くなり、モノが紙のように舞い上がる。」(隊長)
「・・・信じられん」(黒縁メガネの隊員)
「私も、体験者ですっ」(イトウ隊員)
「・・・もし、ペギラが責めてきたら・・・どうするんです?」(黒縁メガネの隊員)
「手の打ちようが無いんだ。・・我々の武器ではどうにもならん。」(隊長)


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・続いて、久原さんが、ペギラの弱点について。
「皆さん、待ってください。・・・この犬は、ペギラの側で3年も生きながらえてきたんです。」(久原さん)
「それがどうしたというのかね」(ヒゲの隊員)
「さあ、みんなに言ってください。」(万城目)
「ええ・・・食べ物の無くなったサブはコケを食べて生きていました。・・そのコケを基地で飼っているアザラシに食べさせたところ、とても苦しがって死んでしまいました。・・・ペギラはそのコケを食べたサブを嫌い、襲わなかったモノと思われます。これがその、コケから取った<ペギミH>です。」(久原さん)
「そんな飛躍した結論を信じろと言うのか。君は科学者より小説家になった方がよかったんじゃないか?」(ヒゲの隊員)


「他に手段はない。・・・そのクスリに運命をかけよう!」(隊長)
「気象観測用ロケットに詰めて打ちましょう」(万城目)
「うん」(隊長)


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ペギラが基地の建物を踏みつぶし、氷粉が破砕された建物に吸い込まれる表現。
・息の一拭きで、煙がはれたらボロボロになっている建物。


・ミサイルをぶち込まれて羽をばたばたさせて暴れるペギラ。風圧で建物が崩れるところ。
ペギラはいずこへともなく飛んでいってしまいました。