■シュヴァリエ17メドメナムの地sむとうやすゆきc&d川崎逸郎d助柿本広大g小谷杏子レイアウトg窪田庸高矢向宏志原画g山田裕子

ダッシュウッド卿とマクシミリアンくんの魔術対決が見どころ。面白かった。
地に足のつかない史劇風の物語運びよりも、こういうオカルト風味に流れた方が面白い。


◇ところで、ダッシュウッド卿に挑むマクシミリアンくんが、反逆の理屈付けとして、この物語のテーマ、或いは背骨である「「王権」への懐疑と新秩序」について述べているけれど、シリーズ構成として、目的不明でまばらに点描されてきた教団の下っ端だけでなく、「革命教団」の組織としての存在感と主張を全面に押し出した上で、このテーマを展開してくる分かり易いアプローチもあったはず。
それをしなかったのは、史劇的な物語の組み立てからそのテーマを滲ませたかった(ロシア編とか)という、製作者側の挑戦だったのだろうけれども。


◇さて、振り返ってみれば、デュランは前々回の王の命令書で「王への懐疑」を抱き、テラゴリー先生は、オーストリア継承戦争での息子の死により元々腹に何かを持っている模様。またOPの描写を見ているとルイ15世以外に忠誠の対象がいるような気もする。
まあ、ロビンくんはマスコットなので例外として、現在、無条件にルイ15世への忠誠を大前提としているのは、たぶんデオンくんひとり。


デュランの葛藤、テラゴリー先生の心づもりも興味の焦点ですが、今後の見どころのひとつとして、デオンくんの立場的転向、或いは転向せずの物語をどう描くかってところがあるかも。
デオンくんは、今までのところ姉コンプレックスだけが取り柄(?)で、彼に憑依する姉に、ただただ助けられて生き延びてきた、思考があまり無い無能なヒトに見えてしまっているので(ごめんなさい!)、姉の思想(まだ明示されていませんが)に依存するような気もする。


これが、怨霊姉リアの思いと、デオンくんのキャラクターが真っ向から衝突し、一人の物理的キャラクターの中で、引き裂かれるような展開だと燃えるんだけどなー


◇ところで、ダッシュウッド卿は、「世界征服を望む、いかにもな悪役」にさせられちゃったけど、せっかくのオカルトな首魁なのにもったいない。
代わりに、いろいろ考えてくれそうなマクシミリアンくんは、天井の石造りの梁に打ち付けられ、鼻から霧状に血が溢れ、そして、しばししてから、血の涙を流す・・・・・・・ううう、死んじゃったんですか!


◆◆以下メモ◆◆
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・デュラン釈放の時間に尋ねてきたメアリー王妃は、デオンに、悪魔の囁き。(たぶん二人の人格の融合は、個人の自立という価値観的にはネガティブなので、物語のベクトル的には逆方向。デオンくんにとっては、これから否定して乗り越えていかなければいけない考え方だと思ったのだけどどうでしょうか。)
「恐れているのね。・・自分が消えてしまうのではないか。・・そして、自分が消えれば、リアとの絆まで消えてしまうのではないか。・・・・・心配しないでデオン。あなたは消えないし、何も失われない。神の導きによってあなたとリアの絆が永遠のものになる。・・・それはきっと二人にとって無上の喜びになるはず。・・・いつしか、その恐れも消えるわ。」


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・デュラン、デオン等による状況の整理。
「おそらく、マクシミリアンとリアは、このイギリスで詩人の存在を知った。そして当初は革命教団と友好な関係を築こうとしていた。・・・これまでにデオンが見たリアの記憶と、メアリ王妃からの情報をあわせると、そんな節がある。」(デュラン)
「そののち、姉さんは、教団の危険性に気づき、マクシミリアンは教団に傾倒した。」(デオン)
「止めようとしたリアさまの命と、王家の詩を奪い、その男は祖国を去った。」(ロビン)
「そして、今。その男と革命教団の首魁は対立関係にある。」(デュラン)
「その推測の根拠は?」(テラゴリー先生)
「アイツは二度、オレを殺さなかった。それが根拠だ。」(デュラン)
「もし、そうだとすると、王家の詩はまだマクシミリアンの手にあるかも知れない。」(デオン)


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・マクシミリアンの、ダッシュウッド卿との対決。
「その座を速やかにお譲りなさい。ダッシュウッド卿閣下。」


「私はあなたに失望した。」
「新しき理想、王権を超越する価値観を示してくれたあなたによって、・・・私は王への忠誠から解き放たれた。」
「だが、他ならぬあなたが目指す先にあったのは、・・・所詮は王権による支配。つまるところ、歴史の踏襲でしかない。」


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ダッシュウッド卿の反論とマクシミリアンくんの対話。
「支配するものとされるもの。王と奴隷が居なければ、この世は成り立たぬ。・・全ての王権を統合し、揺るぎない世界政府を築くことこそが、・・・革命教団のことわり。」(ダッシュウッド卿)
「王権などもはや過去の遺物。やがて何の力も持ち得なくなる。・・私がそうさせる。・・王家の詩はやがて、今とは別のモノとなる。あなたのそれとは異なる、正しき理想をなす為に。」(マクシミリアン)


「あなたはルイ15世と何も変わらない。取るに足らない存在だ。」