■桜蘭高校ホスト部26これが俺たちの桜蘭祭s榎戸洋司c&d五十嵐卓哉g高橋久美子g補佐斎藤英子矢崎優子長谷部敦志稲留和美小森高博

最終回。
やー、やってくれます。
榎戸さん、原作継続中で、関係性の変化を描けないというキツイ縛りがある中で、疾走感のる前向きな爽快感で、きっちり最終回らしく盛り上げてくれたんじゃないかな。


しかし、正直、タマキ先輩の葛藤の、予定調和な展開と収束の末、ホスト部の世界観の再確認で終わるこの最終回は、こうなるしかないよね、としか言いようがない。「そして、何も変わらなかった。」ってカンジ。
しかも、脚本的には、途中で葛藤の天秤の比較対象の重みをずらすという、ズルをしてますし。
(<「長いこと行方不明だったお母様に会う」&「去ってホスト部のみんなに迷惑をかけない」⇔「ホスト部の仲間といままでどおり仲良くやっていく」>だったのが、「長いこと行方不明だったお母様に会う」という葛藤要素がどっかに行ってしまって、
<「去ってホスト部のみんなに迷惑をかけない」⇔「ホスト部の仲間といままでどおり仲良くやっていく」>というカンジに、葛藤が単純化している。
タマキ先輩のばあやに、タマキ先輩のお母様だったら誰にも別れを告げずに仲間との関係を絶つことを喜ばないだろうという旨、エクスキューズは述べさせているのだけども。)


だけどさ、黄昏の海沿いの見晴らしのいい自動車道を、二頭立ての馬車で、スカートを翻して、タマキ先輩を追いかける、雄々しき藤岡ハルヒを見たら、そんなことはどうでも良くなってしまったよ。


このエピソードの最大のキモは、(馬車で追いかけるというのは、実は大爆笑したのだけど、それは置いておいて)馬車の事故により、いったんは、タマキ先輩との関係を永遠に諦めかけたハルヒさんが、思い直して再び走り出すエピソードのバネの力でしょうか。


タマキ先輩の前回の態度で、元気のないハルヒをなぐさめるオカマの父の鋭い指摘と、包容力のあるアドバイスの回想。おとうさんの優しげな声がいい。
「あんた、お母さんのお葬式の後も、朝ご飯食べられるようになるまで時間かかったでしょう。」
「世の中には、がんばってもどうにもならないことが、確かにいっぱいある。・・いいこと、ハルヒ。だからこそ、頑張らなきゃいけない時は、躊躇ったりしちゃだめなのよ。」
そして、取り返しのつかなかった喪失である母親の、火葬場に昇る煙に思いを致す時、ハルヒは、決然と、長髪の鬘をふりはらい、ドレスを脱ぎ捨て、馬車を走らせる。


この回想は、この回冒頭に置かれた、ハルヒが朝ご飯を食べなかったことについての、ハルヒの父との対話を一部繰り返して、かつ詳細化した場面なのだけども、この繰り返しが非常に効果をあげて、説得力あるバネを演出できていると思いました。


あと、夕日のなかのハルヒさんの決意と疾走に、タイミング良く被さる、EDテーマが非常にマッチしていて、効果を倍増してます。
とにかく、このシークエンスは、カタルシスがあって、非常によかった。



しかし、最後の父親対話パートは余計だったかも。キョウヤ父がタマキ父に、キョウヤの思いがけない有能な裏切りについて語り、以前のキョウヤだったら考えられなかった行為の原因をタマキの影響にもとめ、タマキを誉め、そして最後に、互いに藤岡ハルヒを、息子の嫁にと所望するところの、どうしようもない蛇足感、脱力感は、せっかくのハルヒさんの奮闘を台無しに・・・・・・・・
人に語らせて「凄さ」を演出するのは難しい。ここは完璧にその罠にはまり、自分で空想のリングをつくって自分でそのリングの王者になる的な、脚本の空想的自慰感が拭えない気がしちゃった。


また、上位の存在に語らせて、ハクをつけるみたいなラストは、大まか「無意味と無秩序の王道」を突っ走ってきたこの物語の落着点に相応しくない気がするし。そういった意味で、物語終盤の「お金持ちのお家の事情」的なセンの父親とかの話のクローズアップは、物語全体に「重し」を置いているようで、全部が全部、座りがわるかったかもー。




◆◆以下メモ◆◆
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ホスト部のような価値のないことで無駄な時間を過ごすなというキョウヤ父に、反論するハルヒさん
「このホスト部は・・キョウヤ先輩は、・・・みんなを楽しませる為に、一生懸命やっています。みんなを楽しませることによって、自分たちも豊かなキモチになります。みんなを楽しませることはそんなに価値のないことなのですか。・・・・自分は、キョウヤ先輩は立派だと思います。」
・・・・・ううう、説得力がないような・・・・・・・


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・タマキ先輩のおばあさまがやっぱり恐い。タマキ父へ、タマキへの仕打ちについて語る。
「お前の人生の不始末を、お前の息子に償わせているだけです。」
・一方、タマキ父は、タマキの子供の頃からの写真を一杯、執務机においていて、タマキ先輩が大好きみたい。


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エクレール嬢とハルヒの対話。
「あなたタマキの恋人?」
「ちがいます。」
「そ、良かった。あなたは関係ない人なんだ。」
「恋人ではありませんが、関係ない人じゃありません。」
決然というハルヒさんが男らしい!


エクレールさんが絡む描写は、演出と作画が、リキがはいっているなあ。背負っているクラシックもあって、気だるいカンジが絶えずして、いいカンジだった。
若干キャラクターの定型的な造形感があるけど、もうビジュアルだけでも非常に存在感がある。(タマキへの、泣くほどのこだわりを描写しきれていないけれども)タマキに振られて、車のシートで黄昏に染まって泣いているところなんて絵になっているでしょう。


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・キョウヤの家の私設警備隊が、空港にむかったタマキを追う一同を妨害するところは爆笑した。(子会社をトネール家に買収されそうになっているキョウヤの父親が命じられて、という背景説明はあるけど)ムリヤリ、盛り上げようとしているよう。
・ハニー先輩とモリ先輩が、役割どおり大活躍。