■BLOOD+50ナンクルナイサs藤咲淳一c&d松本淳d協力いとがしんたろーg石井明治小村方宏治

最終回。
◇結局、「サヤの一族」=「翼手」が人間に敵対する存在で、捕食者と被捕食者の関係にある・・・・という、生物的な構図は、「暖かい家族の絆」の前に、不問とされました。


我々が断ちがたくも「いきもの」であるという認識、「いきもの」である以上、生態系から自由であるわけもなく、生態系的に人間の上位に位置する「翼手」の、本来的な意味での人間という種への危険性を認識したうえで、それでもなお、その危険性を心の中に抱えて、苦い思いを抱きつつ、問題を先送りにする・・・・・という煩悶と決断の演出、脚本が一切見られなかったのが、個人的には非常に残念かも。


そういったことを語る物語ではないのかもしれないけど(そう思うヒトビトが普通なのかな)、終盤の「翼手」を生物種としてのクローズアップしたスクリプトや演出、翼手の次世代の女王二人の誕生という種としての存続のエピソードを見る時、私としては不可避にそういったエピソードを期待してしまうのでした。


◇また、ひねくれた見方をすると、<家族の絆>の引力と、それと裏腹の魔力を描いた物語だということもできるのかも。
サヤを「翼手の女王」ではなく、「人間」の世界につなぎ止めたのは、<家族の絆>。この物語の出発点であり、終着点でもありました。


個人的には<家族の絆>なんて、おためごかしをごまかした幻想だし、この世に存在するのか?と思っているとゆー、たいへんこころが汚れた私でありますので、この結末には、リアリティを感じられず、鳥肌が立つカンジ。ですので、どうしても皮肉な目線がデフォルトです。


そのひねくれた観点から見てみると、極端な理想的な言い方すると「世界中が敵に回っても、最後まで味方してくれる」という<家族の絆>は、ヒトを暖かく包み込み、人間の判断能力を狂わせるんじゃないかな。
その構成員の「世界を敵に回している理由」は不問にされ、曖昧な心地よい関係の中にヒトは、取り込まれてしまうのでしょう。
いかに重大な問題であっても、その緩やかで包み込むような関係性の中では、問うこと/問われること自体が、忘れ去られてしまう。


だから、サヤが100年近くも生きて否定し続けた来た「自己の存在」「自分の種族」について、大して葛藤することなもく、あっさり<家族の絆>に取り込まれてしまったのは、<家族の絆>の負の側面、魔力にはまってしまったのだ・・・・・と解釈してみましたがどうでしょうか。



◇ところで、この回は、ドラマ的には、ハジがメインかな。自分の心を秘め続け、一切主張せずに耐え忍んできた男が、最後にその思いを爆発させる。
高倉健の昔から、非常に燃えるシチュエーション。ハジの朴訥なセリフがいいカンジでした。
最後の己を犠牲にしてサヤを助けるくだりは、いままでのこの物語だったら絶対逃げ出せるタイミングなのに・・・・というのが引っかかって、イマイチにカンジてしまいました。ごめんなさい。


ラストの、宮城家の墓のなかで眠りについているサヤに、青いリボンのついたピンクのバラを供えたのは、実は生き残っていたというハジという解釈でいいのかしら。
この青いリボンは、ハジが髪を束ねていたリボンですよね。


◇最後に、<家族の絆>が終着点の割には、死んだリクについて、(人物と関係なく壁に貼ってある写真を映すシーンはあるけど)サヤとカイの会話のなかで、一切言及がなくてちょっと淋しかった。
Bパートの、サヤとカイの新婚さん並のラブラブなカンジの中では、過去の家族は想い出として昇華され、二人で新しい家族を作っているのだということかしら。
だとすると、サヤが次に覚醒するまでの30年間、カイは結婚し、血のつながった家族を得ることもなく、一人で生きていかねばならないというある意味残酷な結末だったりするのかな・・・とも若干思った。



◆さて、最終回も文句ばかりでごめんなさい。
最初、つまんないと思っていたハガレンが、中盤あたりから急激に面白くなった夢よもう一度!と思って、最後までついてきたけど、イマイチ炸裂しなかったかもー。
一言で言うと、キャラクターや人間関係やドラマに「粘りが無く」「メリハリがなく」「薄い」カンジが絶えずした。
あと、「吸血鬼もの」「長い時間を生きる存在」「死者の蘇り」とゆー魅惑の設定があるというのに、それを生かしたドラマがあんまり見られなかったのが残念。


第1話冒頭の「ベトナムで血刀ふりまわして村人を惨殺してまわる少女」に象徴される挑戦的なビジュアルとか、アメリカを仮想敵に見立てたやはり挑戦的な序盤の展開など、非常に面白くなりそうな要素がありながら、もうひと味で・・・・と絶えず思っていました。




◆◆以下メモ◆◆
===============================
・一応構図的には、アメリカ=ラスボスでしょうか。ただし、ラスボスは倒されず、都合の悪い「翼手」の出現をもみ消す為にコンサートホール周辺を空爆・・・・・・・
・しかし、コンサートホール周辺を空爆する必要はあったのか。デーヴァのコンサートは、衛星放送だったのだから、局地的な現象ではなく世界各地で翼手は出現しているはずだし、そう語られているし。すると、コンサートホールを消す意味がないような。むしろ、空爆を目撃されて政治問題化する方がリスクがでかい気が・・・・


・この回、Bパートで、第1話の「翼手の学校への襲撃事件」をもみ消す為に、米軍が切り倒したと第3話で暗示されている校庭の通路脇の大木に、新芽がたくさんでて、(友人とサヤとの他愛ないやりとりと共に)生命と日常の継続を描写しているところがあるけど、これは、米国=仮想敵への皮肉だったりするのかしら。


・そもそも私がアメリカだったら、関係者は生かしておかない。事態を把握している人間を野放しにしているリスクのなんとでかいことか。たとえば、「赤い楯」にテロリストの汚名を着せて、デビット、ジョエル以下全員を殺害とか。まあ、そういう展開は、ビジュアルとは裏腹に、基本的に人間倫理を大切にするこの物語的にはありえないか。


・でもさー、ジョエルは、Bパート後半で語られているように、サンクフレッシュの翼手化のクスリの解毒剤をつくって世界にばらまこうとしてんでしょう。だとすれば、アメリカだって、国家的大スキャンダルの証言者になる、翼手の関係者をほうっておかないような気が・・・・・・・それともジョエルは、(これまでのへっぽこ観察者はたまたまで)実は大したヤツで、アメリカと政治的に取引をしているとか。
・・・・・まあ、非常に微細で野暮なこと言っているのでしょうけど。


===============================
・ディーヴァの残した双子の赤子を殺そうとして、カイに止められるサヤ。
「わたしたちは・・・生きていちゃいけない・・・」
「ふざけんな!誰がそんなこと決めたんだよ。お前らを認めねえっていうヤツがいるんなら、俺がぶん殴ってやる。・・・そして、お前が泣き虫で大飯ぐらいの普通の女なんだってことを、俺が分からせてやる!
(・・・)・・・俺が愛情注いで、面倒みてやる。・・・お前の居場所ぐらい俺が何とかしてやる。・・だから、お前ら、俺のそばにいろよ。」


・私はサヤの望むまま行動すると言って、カイにぶん殴られるハジ。
「お前は、誰なんだよ。お前は、お前だろ。・・言ってみろよ、自分の言葉で、お前が何を望んでいるかを。・・お前だってサヤを・・・・サヤを愛しているんだろう。」
「・・・・・・・・・・笑顔が・・欲しかったのです。・・・あなたと出会った頃の笑顔が・・もう一度・・あなたに戻るなら・・私は全てを引き替えにしてもいいと思い・・・・・あなたに尽くしてきたのです。
・・・シュバリエになって目覚めた時、あなたが最初に見せたのは涙でした。・・・そして、あなたは武器を取り、怒りにふるえながら戦うことを選んだのです。
・・・けれど。沖縄の地であなたを見つけた時、あなたは笑顔に包まれていました。
・・・私が望んでも、与えることが出来なかった笑顔が・・そこにはあったのです。・・それを与えたのはカイ、あなたと、その家族。
・・・あなたのシュバリエとしてあなたの望むままに生きてきました。けれど・・あなたに背きます。ただ一度。
・・・生きて。生きてください。・・・あしたの為に、今日を生きて。・・もう、あなたが戦うことは、ないのです。」


・言いたい事を言って、心が整理されたハジは、サヤを庇って消える直前、ガラにもないセリフを。
「ナンクルナイサ・・・・・・・・あなたを愛しています」


===============================
アメリ国務長官とサンクフレッシュの癒着が暴かれるアメリカ政界。調査に連れて行かれるアルジャーノンを見送りつつ、キーパーソンにインタビューしようとするのが、ネイサンらしき記者。
・ネイサンは、翼手の女王の系譜を見守り続ける存在として特殊な生存の方法で生き延びたのでしょうか。硬化して崩れた身体から甦る火の鳥みたいなもの?


===============================
・毎度のことで大変野暮な気がかりなのですが、サヤは、墓に収められて、自動的に繭が形成されるのかな?普通は寝る前に繭を形成するような気もするので、繭が無いまま、墓の石室に放置されたサヤがどうにかなってしまう気がして仕方がない(ていうか、どうやって繭を作るのか?)・・・・・・・・・俺はアホウだなあ。