■僕等がいた10・・・s小川みつきc大地丙太郎そーとめこういちろうd川崎満g林明美川島勝音地正行

2話遅れ
前回ラストの引きの続き。
床に散らばったヤマモトさんの荷物の中から、七美ちゃんが、詩集に挟まれていた「亡くなった彼女の姉とヤノと竹内たちの写真」を「思わず」、ポケットに忍ばせてしまった事による波紋・・・・・


◇七美ちゃんが結果的に隠した写真は、ヤマモトさんにとってはとても大切なもので、ゴミ箱まで探している様子をみて、七美ちゃんは一層動揺するのでした。
七美ちゃんがその写真を忍ばせたノートを、誤ってヤノに貸したことから、写真の存在は、ヤノの知るところとなり、隣に座っているヤマモトさんも、ヤノの手にしている写真に気がつく。
「それ、・・・・・わたしの」
小声で言葉少なに述べるヤマモトさんの目の前で、ヤノは冷酷にも、写真を引き裂き、机にたたきつけるのでした。
「はあ?」「なんのいやがらせ?」


俯いて、破かれた写真に手を触れ、おそるおそる両手で包み込むヤマモトさんの描写が素晴らしすぎる。
ヤノは、ヤマモトさんに対して深く濃いわだかまりを抱えているがゆえに、過剰反応し、ここまで行き過ぎた行動をとっているのでしょう、きっと。
いつもと変わらない無表情なヤマモトさんが、今にも泣き出しそうで泣き出さない絶妙なカンジが良かった。


◇ところで、この回は、(ヤノと七美の仲直りのエピソードが印象に残ったという感想が、ヒトの常道という気もするけど)、個人的には、Aパート後半のヤマモトさんの涙にシビレタ。
放課後、無表情で、むしろ虚ろな視線のヤマモトさんが、ヤノとの極めて薄い関係性を反芻しながら、ヤノによって引きちぎられた写真を見つめて、大粒の涙を流す。
ヤノとの関係性といっても、中学の頃の教科書を見せてあげた想い出、ヤノの後に虹が見え、ヤノの笑顔にハッとした想い出、ふたりで死んだ姉のマフラーを燃やして手を繋いだ想い出。そして、最近の姉を巡るトゲトゲしたやりとりと、それでも席が隣になれば、無視せずに教科書をみせてくれるヤノの面影。


そんな、薄い関係性とうらはらの、(ここで語られていない)何か重大な関係を仄めかす涙だと解釈したいのだけど、どうでしょうか。
ヤマモトさんの涙の実体、その情動の源は、(おそらく)まだ語られていないけど、これほど感情を顕わにしたヤマモトさんは初めてなので、非常にぐっとくるものがありました。


Bパートラスト、家で破られた写真をテープで留めるヤマモトさんの瞳に何かが宿る。黄昏のなか、ヤノの家を訪ねるヤマモトさんはヤノに告げるのでした。
「あの日、どうしてお姉ちゃんが、カガワの車に乗っていたのか・・・・・・知りたくない?」



◆◆以下メモ◆◆
・さて、ヤノは、「「ヤマモトさんの姉とヤノが一緒に写った写真」をヤマモトさんが所持していた事実」に対して、ヤマモトさんに辛くあたる。
すると、今度は、「「ヤマモトさんの姉とヤノが一緒に写った写真」を七美ちゃんが所持していた事実」及び「本来、ヤマモトさんの写真なのに、七美が持っていた事実」という2点において、七美ちゃんは責を負うことになるはず。


個人的には、後者の責任をクローズアップして、「嫉妬からヤマモトさんを困らせている意地悪な女」として、ヤノから何らかの断罪があるのだろうなと思ってみていたら、ここは完全にスルーされてました。
ヤノにとっては、前者の事実「「ヤマモトさんの姉とヤノが一緒に写った写真」を七美ちゃんが所持していた事実」のみが、関心の対象だったみたいですね。
「こそこそカギ回るのって・・・・最低だよね。」


・ヤマモトさんが、彼女の姉とヤノの写真を持っていた理由を、強引に自分の都合の良い解釈へねじ曲げる七美ちゃん。
「あ、そうか、あの写真、ヤノの写真じゃなく、ヤマモトさんのおねえさんの写真なんだ。そっかー、そうだったんだー。だったら、ヤマモトさんが持っていても・・・・」


・Aパートの静かな喧嘩の後、無視するヤノに、敢然と立ち向かっていく七美ちゃんが雄々しくて良かった。
・竹内くんの内輪な誕生会に、ヤノに来るなと言われても突撃する七美ちゃん。
・竹内くんにプレゼントした「うにペンダント」を巡る、七美のセンスを疑う一同と、喜ぶ竹内くん、嫉妬するヤノとゆーあたりは、ギャグテイスト全開で非常に楽しかった。


・ヤノは、精神的にとっても、幼いカンジがするな。↓自己中俺さまの寂しがりや?・・自分の世界に入った歯の浮いたセリフの連発で、なんだかなーと、思いました。
「世界は俺の為にまわっているんじゃねーよ。でも、お前は俺の為にいるんじゃないのか。」
「俺は、俺のものにならないものなんか・・・・・いらない。」
「お前・・信じて裏切られた事・・ある?・・・・・ある?・・・お前には一生・・・わかんねえ」
「俺の前で、俺以外の男にやさしくしないで。」
「好きだよ・・・・だからどこにも行かないで・・・」