■シュヴァリエ05パレ・ロワイヤルsむとうやすゆきc&d伊藤秀樹g浜津武広

◆この回は、主人公ら4人によるロシア商人ボロンゾフの追跡劇、合間に挟まるデオンくんとアンナさんの復活祭デート、ルイ15世のオルレアン公への警告と捕縛尋問とその波紋という三つのパートで構成。


◆個人的には、オルレアン公の邸宅であり、パリ市内にありながら治外法権が認められている「パレ・ロワイヤル」へのルイ15世の突然の行幸と、復活祭を祝いつつ、いい気になっているオルレアン公への正面きっての「私に反逆すると戦争するよ?」というような脅しのところが興味深かった。
「近頃、とみにご多忙とか。・・・以後、余計なお骨折りは一切無用。・・・王と戦争する気がおありなら話は別だが」
「どうぞ。この絢爛たるパリにて、パレ・ロワイヤルに集いしモノどもと理想を歌い、素晴らしき余生をおくられんことを!」


(フランスの歴史については、ほとんど知らないけど)ルイ15世は「絶対的な王」ではなく、こんな権力闘争にまみれるほど、その基盤は危ういものだったのかな。(それとも構成・演出がいまいちなのか。)
この物語的には、(前回オルレアン公から発言があったように)オルレアン公は王への野心を隠していないですし。
そもそも、パレ・ロワイヤルという王権とは独立しうる権力地帯が成立していること自体が、王権の揺らぎを表現しているような気もする。(パレ・ロワイヤルは、どうもルイ14世の頃からあったみたいだけど。)


◆ところで、アンナとデオンが川沿いを馬車で走り、川に群れなす貧民達を見る様子があるが、恋や美食や音楽に、貴族達が浮かれ騒ぐ築地塀の裂け目から外を見ると、飢えに苦しみ苦界に沈む庶民達がたくさん居る。
彼等は、この時代は自分たちの境遇を諦めを持って受け止めてきたが、この回で見られた、ロシア商人ボロンゾフの馬車への投石の様に、事と次第によっては、身分も関係なくストレスは爆発する。


次のルイ16世の時代にはフランス革命(1789)が起きるが、その直前のこの時代、彼等都市に住まう貧民達がどのような理由で発生してきたのか気になるところ。
伝統的な農村で暮らしてきたヒトビトが、飢饉や政府による収奪や、それに伴う口減らしで都市に出てきたのでしょうかねえ。
この時代、パリという都市に、「都市流民」的な、職にも就けず、農村にも帰れない人々が徐々にふえてきているのでしょうか。


◆ところで、そうすると劇中年が急に気になってきた。私も、いい加減ぼーっとみているけど、おそらく劇中では年代は語れていない。(どこかで明示されていたらごめんなさい)
以下、劇中年推定のためにちょっと調べてみました。


Wikipediaによると、1721年生まれのポンパドール夫人が、その地位を得たのは、1745年。ここには、死ぬまで、ルイ15世の寵愛があったと書かれてます。1764年没。

1744年にはその美貌がルイ15世の目に止まった。彼女はポンパドゥール伯爵夫人の称号を与えられて夫と離婚し、1745年9月14日正式に公妾として認められた。

正式に公妾となったのが、1710年生まれのルイ15世(在位は、1715〜1774年)が、35歳のときですね。1745年以降1764年までが、この物語的現在の可能性が高い。


②「オルレアン家」は、ググって見ると、フランス王家の分家として、幾つか血筋が違う存在があったようですがいずれも断絶。(参考:Wikipediaの記事
ルイ14世の代に、その弟が再興したものが、フランス革命の王家への裏切りで有名(らしい・・・知らなかった。だめじゃん。)「平等公」につながる血筋だそうです。


ところで、この物語の公式サイトを見ると、この物語のオルレアン公は、「ルイ14世の弟」と定義してあるのですが、すると1640年生まれの1701年死亡・・・・・・あれ?
1701年だと、ルイ15世(1710生まれ)すら生まれていないから、創作故の人物圧縮かしら。
「ポンパドール夫人」の権勢を中心に考えると、3代目か4代目のオルレアン公がこの物語の登場人物に相当しそう。だけど地味なヒトらしくWEBでは、私、情報見つけられませんでした。


③なぜ、思いつかなかった。デオン・ド・ボーモンでぐぐったら結構一発でした・・・・・。思い入れの多いヒトが多いのね。
但し、この後の史実的展開もうっかり読んじゃう危険性があるので、読んでいいのか、見るべきでないのか。個人的には、見ない方がよかったな。
これらの情報によれば、デオンくんが宮廷にあがって機密局に参加したのは、1755年。


◇すると、現在は、こんなカンジか。

  • デオンくん(1728〜) 27歳
  • ルイ15世(1710〜) 45歳
  • マリー王妃 (1703〜)52歳
  • ポンパドール夫人(1721〜) 34歳
  • オルレアン公(3代目は、1752年に死亡しているので、4代目1725〜) 30歳・・・

◇また、ルイ15世の時代に、フランスが絡んだ戦争は以下3つだそうです。


このうち、現在は、七年戦争の直前の時代ってことでしょうか。
戦争直前の不穏な外交的状況と、戦争に入ってからの駆け引きが、どうやら話の背景にでてくるっぽい。
また、オーストリア継承戦争への軍事的投資に失敗して財政が逼迫し、それ故の徴税に苦しむ疲弊した世相が背景にあるらしいので、都市流民の発生は納得。。


Wikipediaのオーストリア継承戦争の記述によれば

神聖ローマ帝国の継承問題を発端に、ヨーロッパの主要国を巻き込んだ戦争。カナダやインドで英仏間の戦争にも発展した。

相当な外交的、軍事的、財政的努力を費やしてオーストリアの弱体化を図ったフランスの企ては見事に失敗し、英国との植民地戦争も中途半端に終わった。

そうですし。


◇メモとして、7年戦争は、イギリスとのこの遺恨を引き継いでいるらしい。

七年戦争は、ヨーロッパにおいては、イギリスの財政支援を受けたプロイセンと、オーストリア・ロシア・フランス・スウェーデン・スペイン(1762年参戦)及びドイツ諸侯との間で戦いが行われた。並行して、イギリスとフランスの間では北アメリカ、インド、各大洋上で陸海に渡る戦いが繰り広げられた。プロイセンオーストリアとの戦争を第三次シュレージエン戦争、北米での戦争をフレンチ・インディアン戦争、インドでの戦争を第二次カルナティック戦争とも呼ぶ。これらの戦争を総称して七年戦争と呼ぶこともある。

そして、この戦争の結果

北米、西インド諸島、インドにおけるヨーロッパ各国の植民地の帰属が再編され、フランスはインドからほぼ全面的に撤退し、北アメリカの植民地のほとんどを失った。代わって北米とインドでの植民地獲得競争におけるイギリスの優位が決定的になった。

フランス王権の著しい衰退を招くようです。財政的疲弊と、国際的地位の失墜で、フランス革命へなだれ込んでいくような道筋ってことですかね。



◆◆以下メモ◆◆
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・デオンとアンナがデートでも行く先は教会の告解室
「デオンたら、教会へ行くと告解室へ入ったっきり、なかなか出てこなくていつも待ちくたびれたわ。」
「罪はすべて告白しなければ。」
デオン、マジメすぎ。


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・オルレアン公とサン・ジェルマン伯爵の会話。
「パリを掌握せしオルレアン公閣下。そしてベルサイユの情報を司るお方。・・・盟友となる時が遠からずありましょう。それまでは・・・」
「それまでは、誰であるかを知らぬ方が、互いの為か。」


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・コレはラストの、ポンパドール夫人の手下との対話を鑑みるに、ポンパドール夫人のことかも。
「あのもの(ボロンゾフ)は無事逃げおおせたようです。マダム。」
「そう。ご苦労でしたクラスラン外務大臣。」
「この後は如何様に?」
「陛下の出方を見ましょう。機密局の動きは逐一報告なさい。」
「は。マダム。」
「その治世は無為と混乱を招くのみ。オルレアンとて、民衆に媚びても、その心を理解していなかった。このままではフランスは亡びます。(・・・・)その前に、この弛緩した体制を解体し、再構築することが私の願い。・・フランスの栄光を守るのが私のつとめ。」


・ポンパドール婦人、この回、急激に、ラスボスの貫禄が出てきました。
・ルイ15世は、このポンパドール夫人のコメントや、WEB上の記述なんかを読んでいると、政治には無関心で、戦争で財政を破綻させ、財政改革も悉く失敗。フランス革命への道筋をつけた暗愚の王のイメージがあるらしいのだけど、この回まで描写されてきた人物像は、むしろ政治的で、聡明なヒトのイメージが強い。
王に忠実に従う主人公達を描く上では、「聡明な王」の演出は不可欠なのかも。このあとのエピソードで、この人柄が反転するエピソードが盛り込まれるのだろーか。


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・一方、オルレアン公は、ルイ15世にキツく警告された後、機密局≒主人公たち4人に、とっつかまって、尋問されて、知っていること全てしゃべってしまった様子。なんだか、やっぱり物語的本質を知らない小物で、物語的にここまでで終了のカンジが・・・・
<尋問によりオルレアン公が革命家や密偵達を隠匿していた事実は明白になった。その罪は、公の権勢を封じる代わりに、フランスの為、不問とせざるを得ない。我々は概ね推測したとおりの供述を得たが、リア・ド・ボーモン殺害、及びロシア人ボロンゾフの国外逃亡に関して、公は関与を否定し続けた。>


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・デオンくんは、アンナとのデートを途中で放棄して、ロシア商人ボロンゾフの馬車を追跡。そして、路地裏でのボロンゾフとの刹那の対峙
「身内のモノか?・・・・意志を継いだと言うわけだな。・・・それにしても、よく似ている。」


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・ボロンゾフを追って、ルアーブルの港町に向かう馬上の四人。
「ボロンゾフが気になることを口にした。・・・・機密局には感謝している・・・と。」(デオン)
「革命勢力の側に寝返ったものがいる・・・・ということかもしれんな」(テラゴリー先生)
「あり得ない話じゃない。いや・・・むしろそうなんじゃないかと思っていた。・・・あの聡明で思慮深いリアが簡単に敵の手にかかるとは思えない。」(デュラン)


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・半時の差で間に合わなかった4人。ロシアに向けて出航したボロンゾフが船中で、初登場の美青年に語る。
「祖国の大地が遠ざかっていくぞ。別れをつげんでよいのか?」
「とうにすてた・・・・」