■デルフィニア戦記1巻〜4巻s茅田砂胡(かやたすなこ)


なんというか、キャラクターで真っ向勝負の西洋中世風異世界ファンタジー
四巻まで読んだ感じでは、文章も、語られている物語も、(魔道という設定はないものの)かなりグイン・サーガの初期を連想するキャラクター中心の道行き冒険活劇&国家内紛モノになってます。
グインの如く、自らの出自を知らず、いつのまにか存在していた異世界で、その超人的な俊足と怪力と無双の剣の腕で、国を追われた王様を王座に再びつけるために獅子奮迅の働きをする、なんと、美少女が主人公。


文章も浅くなく、硬すぎもなく、こなれていて、リーダビリティが非常に高い。
四巻までで一区切りなんですが、風邪でダウンしている一日で一気読みしてしまった。(グインは、パロ奪還まで、16巻を費やしたけど、この話は4巻で国を取り戻していて、読んでいてちょうど良い心地いいスピード感)


ワタシは、かなり融通がきかない人間で、一度手に付けた本は、どんなにつまらなくても、最後まで読み通す性質があるのですが、最近悪夢のように悩まされている、目も当てられないその場の思いつきで横溢し、キャラも文章もなっちゃいない、池○○一の「シャ○グ○・○」の物語の3/5が過ぎても一向にドライブがかからないのにくらべて、最初からドライブ感全開で、ああ、風邪で、だるーい一日をかなり快適に過ごすことができました。


主人公リィと、国を追われた王様ウォルの微笑ましい道中ぶりがまずこの作品のポイント。
そして、コナン(当然、未来少年ですよ。この頃はコナンといったら名探偵を連想する人々が多くて憤慨する日々。コナン・ザ・グレートはさらに皆無)の三角塔からの飛び降りとか、ハイハーバーの高原を疾走する様とか、ギガントの翼の上を危ういバランスで駆け抜けたり、怪力を発揮して鉄のやりを折ったり、そう言うさまを思い浮かべて、怪力美少女リィの活躍をたのしもう!(まあ、リィは、コナンと違って、グイン並みに智謀にたけているのですが)


しかし、ワタクシ的な難点は、読んで何も残らないほど、エンタテイメントに徹していることかな。
味方に悪い人間はなく、運命のいたずらで敵対しても、ご安心ください、みんななるようになるのです。
悪い人間は徹底的に悪い人間です。
あー、私の小説を読む楽しみ、人々が憎しみ合い、嫉み合い、誤解を重ねて阿鼻叫喚・・・・・みたいな展開には決してなりません。
まあ、この物言いは極端にしても、特に、国王の出生の秘密が物語の原動力になる3巻あたりから、登場人物たちが慣れ合いしすぎているなー、というのが正直な感想。気持ちわるいよ。
最後はおとぎ話並みのハッピィエンド(「俺はこの娘を王女として王宮へ迎えるぞ!」)でかなり脱力した。


助けようとしていた味方が、やむにやまれぬ事情で敵に寝返ったんなら、誤解とすれ違いから徹底的に殺し合って人間の業と、紙一重の運命を描写してください!というのが、私の好みの方向性かな。まあ、あくまでワタシの趣味ですが。


あと、国を追われて最後に帰還を果たす若き国王様が、性格的には朴念仁なグインって感じだけど、役に立たず、情けないことおびただしい。(「グインの(自分も知らず異世界からこの世に生まれ落ちた)立場、超人的な力、知力」は、リィに付与し、「グインの性格と語り口」を、国王ウォルに分割して与えたって印象かな。)
なにかあると、美少女リィの知恵と超人的な能力に頼りっきりで、この物語の合戦で勝利を収めるのは、ほぼすべて、リィの奇策によるものなんです。
性格的には、盛んに王の器だってリィにも、その他の人々にも持ち上げられ続けているんですが・・・・・・なんだか、裸の王様の気がして、読んでて悲しくなってきました。。。。。。


聞くところによると、この物語、最後はSFに落ちるそうで、さて、そのうち続きを読もうっと。
後半、さんざ、文句書いているけど、ワタシの趣味の問題にすぎず、非常におもしろかったのは確かです。