■涼宮ハルヒの憂鬱13涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴs志茂文彦c&d北之原孝将g米田光良

第10話の続き。
タイトル通り、涼宮さんのメランコリックな、(中学生とか高校生では良くあるような気がする)「ワタシは世界にとって、特別な存在じゃない」という悲観が、(無意識であるにせよ)究極の駄々こねである「世界の破壊」に向かう、荒れ果てた精神構造には愕然としますね。
しかし、矮小化すると「荒れる高校生」「非行に走り、暴走行為をしたり、先生なぐったり」というのと同じモーメントの気が。


ところで、普段はあんなに明るく、傲慢に勝ち気に振る舞っている少女の裏にひろがる荒涼とした世界。この絶望の深さが、涼宮さんの電波な日常行動に、回り道して直結しているのがどうも実は健全じゃない。(この物語が、倫理の話じゃないのは重々承知ですが、この物語の行き着くところとしては、そういう不幸な方向にどうしても行かせたい気がしちゃった。)


ココロの裏では、時々、絶望発、自暴自棄。しかし、表では、焦燥にかられて、絶望発、刻苦勉励の努力・・・になるはずが、SOS団をつくって、強気な不思議少女を演じ、だらだらした日常と思いつきの暇つぶしてすごしています。
そうすると、これは、焦燥感に炙られ続けて、徹底的に空回りしている愚かな女の子の話なんだって気がしてきたよ。
そして、本来ならこのだらだらした日常に起因したより深い絶望が襲ってこなければならない・・・・のだけど、この方向を突き詰めると、涼宮さん程度の電波じゃすまなくなる様な気がするので、普通はやらないか。
しかし、涼宮さんの電波な行動が、実はギリギリの自意識のバランスの上で綱渡りしているらしいと、ワタシ的には思えてきて、なんだか、非常に残酷な話にも見えるのでした。


さて、話のメインは、古林くんが「神人」の実際をキョンに見せる回。既に第4話の野球の話で、状況は仄めかされています。ですので、はっきり明示するこの回はキチンと手順を踏んでいるんだろうけど、ちょっと説明するというモーメントが強すぎて、他の回にくらべて段取り感が否めないカンジがしちゃった。
次回とセットで評価するのが正しいのかも知れませんが。


あと、地味ながら、閉鎖空間発生現場へ向かうタクシーの車窓、流れていく高速道路の風景がなんか、心地良かった。


◆◆以下メモ◆◆
・涼宮さんの行動原理について、ハルヒさんがキョンに語る。
「あんたさぁ、自分がこの地球で、どれほどちっぽけな存在なのか、自覚したことある?」
「ワタシはある。・・・忘れもしない・・小学生の・・・6年生の時、家族みんなで野球を見に行ったのよ。球場まで。」
「ワタシは野球なんて興味なかったけど、ついて驚いた。・・見渡す限り、ヒトだらけなのよ。野球場の向こうにいる、米粒みたいな人間がびっしりうごめいているの。日本の人間が残らずこの空間に集まっているんじゃないかと思った。」
「でね、オヤジに聞いてみたのよ。ここはいったいどれだけのひとがいるんだって。満員だから5万人ぐらいだろうってオヤジは答えた。」
「試合が終わって、駅まで行く道にもヒトが溢れていたわ。それを見てワタシは愕然としたの。こんなに一杯の人間がいるようにみえて、実はこんなの、日本全体で言えば、ほんの一部に過ぎないんだって。」
「家に帰って電卓で計算してみたの。日本の人口が一億数千万というのは社会の時間にならっていたから、それを5万でわってみると・・・・たった2000分の1。」
「わたしは、また愕然とした。わたしなんて、あの球場にいたひとごみの中のたったひとりでしかなくて、あれだけたくさんに思えた球場にひとたちも、実はひとつかみでしかないんだ・・・ってね」


「それまでワタシは自分がどこか特別な人間のように思っていた。」
「家族といるのも楽しかったし、なによりも自分が通う学校の自分のクラスは世界のどこよりもおもしろい人間があつまっていると思っていたのよ。」
「でも、そうじゃないんだってその時気づいた。」


「ワタシが世界で一番楽しいと思っているクラスの出来事も、こんなの日本のどの学校でもありふれたものでしかないんだ。日本全国の全ての人間からみたら普通の出来事でしかない・・・そう気づいた時、ワタシは急に、ワタシの回りの世界が、色褪せたみたいに感じた。」
「夜歯を磨いて寝るのも、朝起きて朝ご飯を食べるのも、どこにでもある、みんながみんなやっている普通の日常なんだと思うと、とたんに何もかもつまらなくなった。」


「そして、世の中にこれだけのヒトがいたら、その中には、ちっとも普通じゃなく面白い人生を送っているヒトもいるんだ・・・そうに違いない・・っておもったの。」
「それがあたしじゃないのはなぜ?・・・小学校を卒業するまでワタシはずっとそんなことを考えてた。考えてたら思いついたわ。面白いことは待っててもやってこないんだ・・ってね。」
「中学にはいったらワタシは自分を変えてやろうと思った。待っているだけの女じゃないことを世界に訴えようとおもったの。実際ワタシなりにそうしたつもり。でも、結局は何も無し。
「そうやってワタシはいつの間にか高校生になっていた。少しは何かが変わるとおもっていた。」


キョンを閉鎖空間にいざなう古林くん。
「次元断層の隙間。我々の世界とは隔絶された・・閉鎖空間です。ちょうどこの横断歩道の真ん中がこの閉鎖空間の壁でしてね。半径はおおよそ5キロメートル。通常、物理的な手段では出入りできません」


「閉鎖空間はまったくのランダムに発生します。(・・・)ただ一つ明らかなのは、涼宮さんの精神が不安定になると、この空間が生まれるってことです。」
「涼宮さんのイライラが限界に達すると、あの巨人が出て来るんです。ああやって回りをぶちこわすことで、ストレスを発散させているんでしょう。」